20-久々の依頼-
「ああー、よく寝た。パルムここで寝たら風邪引くのにな」
「・・・ん」
あれからどれくらいたったんだろうな。
石にされたところくらいで記憶ないんだよな。
「気楽なもんだね、人間」
ん?窓の方からかって久しぶりに見たな。
「お久しぶり、猫の人」
「お久しぶり、人間。
元気してた?」
「まあね」
でもどうして今更この人が?
実はこの屋敷のお抱えとか。
「この屋敷のお抱えだったり」
「まさか。あなたを石化から助けるために頼まれたの」
「なるほどね。
お騒がせしました」
「ん、カズヤ」
騒がしくしたからかな、起こしてしまった。
って、あの人もういなくなってるし。
「おはよう、今日もいいでん!?」
「カズヤ!」
お嬢様、そこは私のみぞおちでございます。
グリグリしないで!痛い、痛いから!
「生きてた。ちゃんと生きてる・・・
すー、はー!」
「俺は生きてるよ。治してくれてありがとう。
深呼吸やめよう?」
「いいの、私のせいでこんなことに」
「気にしない。結局死んでないんだから。
だから深呼吸やめて!」
短剣は脇腹だったが結構痛いな。
石になってたからか痛みはあんまりだったんだよな。
「何日寝てた?」
「3日目」
「おおー、そんなに寝たことなかったからびっくり」
「重要なところは勇者が持ってた」
おー、助かるね。それにしてもびっくりだ。
あいついきなり斬りかかってくるんだもんな。
「勇者たちは?」
「1人牢屋で、3人は部屋にいる」
「うっし、あってくるか」
「動ける?」
「大丈夫だね」
そして俺の腹が鳴り響いた。食えてないだろうからね。
「ははは、先に食べてからにしようか」
「わかった」
腹が減ってはなんとやら。って猫の人もういなくなってるし。
お礼くらい言いたかったのにな・・・
パルムが甲斐甲斐しく世話を焼きながら朝食を済ませて、勇者のところに向かった。
「やあ、待たせたね」
「カズヤ先輩!」
心配かけたからな。
まぁ、元を正せばこの人たちが悪いんだがね。
「私たちは一体どう責任を取れば」
「なんかくれたそうだからそれでいいよ」
「でもですね」
「いいから。
それよりも俺としてはもう1人と話してくる」
「あ、あの」
俺は部屋を出ていき地下牢へと向かった。
で、こっちは話せる余地かあるのかね。
「魔物の洗脳を受けたあなたと話す余地などありません」
「あー、はいはい。そうなるのね。
なら彼らが出るまでの間、牢獄ライフを送るといい」
「もし、私がダメでも私の妹があなたを殺します。
眠れぬ夜を過ごすといいでしょう」
俺の周りの女の子はなんで色んなところで俺に優しくないんだ。
はぁ、やってらんない。
「坊ちゃま、勇者様方がおよびです」
「あーもう!次から次に。
それとその呼び方はやめてくれ」
このトラブルメーカー達が!
俺はゆっくり過ごしたいだけなのに!
「俺、こう見えても忙しい人間なんだが」
「それはすまないことをした。
でも、言うだろ?若い頃の苦労は買ってでもしろって」
「あんたは俺のオカンか」
ま、聞くだけ聞いてみるか。聞くだけはタダだろう?
「実は道具で帝国と連絡を取ることが出来るんだがどっからか情報が漏れてだね」
「情報の漏洩って恐ろしいってレベルじゃねーぞ」
「そう言わないでくれ。
それで、牢屋の彼女なんだが・・・
彼女の家が裁かれることになった」
へー、それは恐ろしいことだなー(鼻ほじ)
俺になんの関係があるんだろうなー。
「なら君たちを解放するから戻れば?」
「残念ながら彼女が拒否するだろう」
「随分と家族思いのことで」
家族がピンチのときに優先できるものがあるとわね。
「それで、君たちがどうにかできないかと思っての相談だ」
「俺たち魔族サイド。人間、魔族、嫌い。
見る、殺す、おk?」
「そこは君の腕次第だ」
「僕からもお願いします。
彼女の家には良くしてもらったんです」
・・・わかった、やればいいんでしょやれば。
あーもう!めんどくさいな!
「条件がある。
ここをこれ以上襲わないでくれ」
「わかった」
「あとは、貸し1な」
「君を助けたってことでチャラには」
「ダメです。
これが条件だ」
「仕方ない飲むか」
「サンクス。
ま、うまくいけばなんだけどね」
はぁ・・・ではやりたくない仕事でもしますかね。
やってらんないね、もう。
で、まずは魔王さんに相談だ。そういう時に頼らないとな。
何かいい案があるもんかね。
「残念ながらそういう、伝はないね」
「さいですか」
積んだ、終了、かいさーん。
私にもう案はないデース。
「そういう隠密系のものは必要がなかったからね」
「隠密系・・・ねぇ。
あの白猫耳の人と連絡取れる?」
「あのね、あの人たちは山賊だぞ?
協力なんて」
「とってみるさ。とりあえずお願いできるだけ早く」
で、数分後白猫が魔王の間に来ていた。
流石に早すぎね?
「もう1つ仕事?」
「依頼者は彼だ」
「ど、どんな恨みをはらされるか・・・」
「違う違う。本当に依頼だって」
俺は依頼したい内容を話した。
ぶっちゃけこの人が断ったら終了のお知らせだ。
「ふーん、なるほど。
それで報酬は?」
「それは魔王城が払わせて頂こう」
「足りない。
ねぇ、君がこの前作ったマタタビが欲しい」
マタタビ?あー、アロマ(マタタビ)のことか。
「それくらいなら」
「本当!?なら受け持ったよ」
聞いてみるとあれ以来普通のマタタビだとそこまでの酔が味わえないそうだ。
中毒なんではないかと疑うレベル。
「それなら急ぐよ。
君だけでいいのかい?重い人は乗せられないよ」
「お、俺だけですが」
「それじゃ、魔王様借りてくね」
ちょ、ここ最上階。最上階なんだってぇぇぇぇ!
猫さんに担がれてびっくりする速度で駆け下り、森に突入。
「い、痛い、痛い」
「しゃべると下噛むかも」
この人自分の道はちゃんと作ってるのに俺の道の考慮してない。
おかげで切り傷だらけだし、脇腹いてぇし。
「みんな、仕事だよ。
この依頼主連れて行く場所はゼスティ帝国。
今日中に終わらせよう!」
「「おう!」」
早い展開が早い。目まぐるしく回っていくよ・・・
「言ったよね?今日中に終わらせるってほら乗って」
狼になった人員の背中に放り投げられた。
「大した痛みはねぇ、しっかりと捕まんな。振り落とされないようにな!」
「は、はい!」
「今回はこの5人で向かう。行くよ!」
ちょ、ちょっと早い、目開けれない。厳しいっす。
てか、5人?1人足りてないなんて疑問は思ってる暇がなかった。
狼に揺られること1時間。帝国に付いた。
いやー、慣れると楽しい。ジェットコースターみたいな気分だ。
「ぜぇ・・・はぁ・・・」
「大丈夫ですか?」
「安心して。そんなやわに鍛えてないよ。
それよりもこれからどうする?」
「えーっと、街は今お家騒動で賑わってるから探すのは簡単だと思う。
だからお家見つけてできるだけ回収しよう」
俺は人間だし、この子は猫になれる。
まず見つかんないと思うけど。




