19-勇者再び-
あらら、みんなポカーンとしてるな。
あ、フード邪魔。
「まさか生きていたとはな」
「頑張ったんですよ。みなさんお久しぶりです。
元気そうで嬉しいですよ」
「え?どうして」
びっくりしているがこいつらが売ったわけじゃないんだな。
ま、究明したところで理由聞くくらいしかすることないけど。
「どうしてあなたがここで出てきたのかしら?」
「あなた方がこの先に向かっていると聞いたので」
「止めに来たって言うの?」
「まさか?私たちであなたを止めるなんてできませんよ」
アグヴェイも居るが流石にきついだろ。
俺が全力で足を引っ張るぞ。
「ではなぜ?」
「立ち去って頂けないかと」
「無理な質問ね。私たちは魔族を滅ぼしに来てるんだから」
あらら、がっつりな敵意をお持ちのようで。
どうやら立ち去ってもらうのは無理難題か。
「では仕方ありません。まあ、そう簡単に行くとは思っていません」
シャキッ!とそれぞれが武器を構えた。
この世界の人達といい、なんでこんなに血気盛んなんだ?
「あなた方を魔王城に招待しましょう」
「へぇ、随分と簡単に通してくれるのね。
あなたも魔王を倒して戻る術を手に入れたいの?」
あ、魔王が帰る術を持ってるかもしれないって設定忘れてた。
「まさか?あなた方をお客人として招待したいってことですよ」
「・・・」
4人でなにやら話し始めた。どうせ罠かも知れないとか話してるんだろ?
疑り深いね全く。
「カズヤさん、あなたは洗脳されているんです」
「えー、そういう結論かよ。やってらんないわ」
「違うと言うんですか?」
人質を取られてるとか、脅されてるとかならわかるがそれはないわ。
洗脳ってなんだよwww。
「洗脳とか方法わからんし、そんなことされねぇよ。
こほん、失礼しました。もちろん、人質や、脅しなどもありません」
そして、また4人でごにょごにょと話を始めた。
今度は何の話し合いだよ、疑問には答えるぞ?
「わかりました。案内お願いしますよカズヤさん」
「わかりました。ではこちらの馬車に。
アグヴェイ、行くって」
「随分と長かったな。俺1人でも」
「だから、ダメだって。敵意がないことを、見せないと、なんだから」
「そ、そうだったな。すまない」
馬車を走らせ街に入ると何かがぶつかった。
「敵か!?」
「違うって。
大丈夫ですか?」
子供が買い物かごを持ってぶつかってしまったようだ。
いやー、人が多くなったもんだ。
「ご、ごめんなさい」
「怪我はない?
大丈夫そうだね、気をつけて」
「あ、あ」
子供は急いでどこかに行ってしまった。
さて、とっとと向かうか。
「随分と雰囲気が」
「勇者様、騙されてはいけません」
「そうよ。魔族なんて人を殺すことしか考えてないんだから」
悲しいな・・・
ま、見解は人それぞれだな。
「さて、つきました」
「こ、ここが魔王城?」
メイドさんが勇者たちを迎えた。よし練習の成果が出てるな。
「勇者様がた、武器の方を預からせていただきます」
「え?」「そ、そんなのダメよ!」
うん、それは考えたよ。でも身の安全を考えるとね。
「こちらも身の安全があります。王城で暴れられると困りますし」
「でもそれだと私たちの安全が」
「ご安心を。こちらをお付けください」
そこで準備したのはこのブレスレットだ。
ブレスレットには守護の魔法がかけられており、安全を確保できるというわけだ。
「・・・カズヤさん、これにはなんの魔法が?」
「守護の魔法だけです。これは破壊されない限りは安全でしょう。
ですのでこれだけは念のため肌身放さず」
ここまでやってようやく勇者は剣を預けてくれた。
まじで疲れる。さっさと渡してくれ。
「ちょっとショウヘイ!」
「僕はもう一度先輩を信じたい」
「・・・そんな」
俺がいつ裏切ったんだよ。
まぁ、いいや。これで勇者の1人は案内できるな。
「あ、もちろんここから離れる時まで厳重に保管しておきます」
「ありがとうございます」
「現状武器を渡してくれないと、案内できません。
お部屋が違うので先に案内しますがよろしいですか?」
「・・・わかりました、お願いします」
ショウヘイ君を執事さんの1人に任せて案内させた。
で、問題は女性陣だな。
「どうしますか?渡さない限りお通しできないので適当なところで夜を明かしてください」
「わかった、わかったわ!これでいいんでしょ」
「はぁ、こうするしかないんだろ」
「ご理解していただきありがとうございます」
で、最後の人だ。この人は俺を親の敵でも見るかのように睨んでいた。
おー、怖い怖い。
「・・・あなたたちに災いを」
「随分物騒ですね」
さて、これで全員分だな。
んじゃ、次は魔王様か。
ショウヘイの部屋を訪れた。
話したいこともあるし、ちょうどいいと思った。
コンコン
「ど、どうぞ」
「やあ、ショウヘイ君。不備はあるかい?」
「い、いえ。助かってますよ」
「ならよかった」
さて、話はここからだ。
どんなことから話そうかな。
「カズヤさん、どうして帝国から逃げ出したんですか?」
「あー、逃げ出したことになってるのか」
「・・・どうしてです?」
俺はあの日からのことを語った。信じるのかは彼次第だけどね。
「そ、そんな事が」
「本当か知りたいなら、このあと魔王さんにあえるからその時聞いてみな」
「わかりました」
そこから、2人して和気あいあいと話しているとノックされた。
「カズヤ時間」
「あ、ごめんねパルム」
「か、カズヤさん。その人は?」
ま、びっくりするよな。
さて説明の時間か。
「この子はパルム。魔王さんの娘で今の俺の主人だよ」
「そ、そうなんですか」
頭を撫でると嬉しそうにしがみついてきた。
可愛いが、歩きづらい。
「では行きましょう。ほらパルム行くよ」
「・・・」
どうやらパルムも呼び出されていたようだ。
話し合いに必要とかかな?
魔王の間に行くとみんな集まっていて、俺を見た女性陣の目が痛かった。
「集まったか。皆の者下がれ」
「はっ」
全員が下がり、俺は通訳係としてここにいる。
「では話し合いを始めよう。
まず長旅ご苦労だった」
「いえ、私たちの使命ですから」
使命ね。随分と忙しそうだ。
「あなたを倒さないと僕らは帰れないと聞きましたが」
「そもそも私は君たちを帰す方法、召喚する方法なんて知らないからね」
「嘘よ!どうしてそんな嘘をつくの!」
「嘘ではない。そもそも私たち魔物が召喚できるとしたら異世界人で溢れかえっていると思わないかい」
「そ、それは・・・」
つ、疲れる。
本当はかなりつまりながら話してるのをご了承ください。
「1ついいですか?カズヤ先輩が奴隷というのは本当なんですか?」
「ああ、君たち人間が・・・」
「どうしたんですか?」
「訳さないといけないかと疑問に」
「仕事してください」
俺の口から言うの恥ずかしいんだが。
仕事だし頑張るか。
「君たち人間が裏切り、私利私欲のために彼を売ったんだろう?」
「そ、そんなことは」
「なにがあったかは知らないが、彼はもう奴隷に落とされ我々が買い、一緒に生活している。
魔王さん、恥ずかしいんでこれくらいでいいですか」
ハニカミながらこっち向きやがって。ムカツクが反抗できね。
「・・・ありがとうございます。
あなたの力で魔物の行動は抑えれますか」
「「ショウヘイ!」」
「君たちの国王の1人が全世界のゴロツキをなくせるなら出来ると思うよ」
ショウヘイは急にどうしたんだ?
少なからず彼の中を変わってしまったのかもしれない。
「君たちの世界にもいるだろう、山賊やゴロツキに海賊」
「あの魔物がそうだって言うんですか!」
「そういうことになるね。
少なくとも、僕の国の魔族は生活をしているよ」
翻訳疲れた。そろそろ休みたい。
パルムが水をくれたので飲んで喉を癒した。
「騙されないでください!彼もあなたもその魔王に洗脳されているだけです!」
俺の知らない勇者パーティの女の1人が足から短剣を取り出し魔王に投げた。
何してんだよあの人!
俺の体は近かったこともあり魔王を庇ってざっくりと刺さった。
「「「カズヤ!」」」
「なにをしているの!」
「あなたたちこそ、なにをしているのです!
彼は私たちの敵!ぼさっとしてる暇はありません!」
「・・・さない」
あー、やばい。パルムに黒い魔力が集まってる。
こいつはいただけない。
「絶対に許さない!」
「え?」
動いてくれ俺の体!
今をどうにかできるのはきっと多分俺だけだ!そう信じてみたいね。
「落ち着いて、俺は死んじゃいない」
「え?カズヤ」
黒い魔力は俺の目に入っていった。
よし、止血は完璧だ。石になっていくんだからな。
「ほら、俺はへい・・・」
あー、ダメだ。
体動かねぇ。意識だって持って行かれた。
ま、色んなもん守れたし大丈夫だr。