15-優しくない世界-
「続き、する?」
「・・・お願い」
「力、抑える」
とりあえず抑えてもらおう。じゃないと俺の命が持たない。
「・・・抑える?」
「そう。水、少しずつ、使う」
「・・・少し」
俺の限界はそよ風レベルだが暴風だったからな。
軽く凹むぞこら。
「・・・」
「なに、かな?」
「・・・手」
あー、このおどおど感、まるで小型犬みたいだ。即死持ちだけど。
「また、風、いきます」
「・・・ん」
またしても暴風!?
急いで目をつぶった。
「抑えて」
「ん」
「緊張、ダメ。もっと、ゆっくり」
なお、全然変わらずだった。
もしかして俺って教えるの無茶苦茶下手?
「風、使う、どんな、っ感じ」
「なくなってく」
「そう。それ、少なく」
「・・・少なく?」
ボー!
うん、全然できてない。何も変わってないよ。
「・・・少なくした」
「まだまだ、少なく」
「ぜぇ・・・はぁ・・・」
「休憩」
これは長丁場になりそうだ。
ま、時間制限が有るってわけじゃ・・・覚えてもらわないと俺が危ないんじゃん!
「今日、おしまい」
「・・・やる」
「おしまい。片付け、やる」
暴風のおかげで部屋が大荒れだし、さっさと片付けよう。
本は戻し服や、布団も戻さないと。
「・・・手伝う」
「ゆっくり、あなた、頑張った」
「でも」
「休む、大切。私、仕事」
1時間もかからず終わり、すごくまったりして気づいた。
俺すごく汗臭いな。これはいけない。
「湯浴み、したい。できる?」
「・・・そこの部屋」
「ありがとう」
備え付けの部屋に入るとトイレがあった。
あ、気にしたら急に尿意が。
タオルも・・・これでいいのか?
そこらへんにあるタオルを濡らし体を拭いた。
はぁ、シャンプーとかが欲しい、頭痒い。
「お借り、しました」
「・・・ん。お願いがある」
コンコン・・・
「ご夕食です」
「・・・」
夕飯が運ばれると姫さんはパクパクと野菜に手をつけ野菜を1つ食べてしまった。
「ふぅ・・・」
「今日、いっぱい、食べた」
「・・・あ、いっぱい食べた」
「いい。いっぱい、食べる、見てる、安心する」
うんうん、やっぱり食べてる人を見るのはなかなか気持ちがいい。
「ん」
「ありが、とう」
今日は俺も頑張ったからな飯がうまい。
「・・・謝りたかった」
「なぜ?」
「・・・残り物ばかり」
「私、気にしない。美味しい、満足」
芋生活に比べれば天と地の差だよ。
メニューの変更と炭水化物が欲しいけど。
コンコン
「失礼します」
「今日、野菜、1つ。食べた」
「ほ、本当ですかお嬢様!?」
「・・・ん」
姫さん動いたからな腹も減ったんだろう。
やっぱ、1日ぼーっとしてるだけじゃダメだな。
「で、では私はここで」
帰っていってしまった。
姫さんは頭をポリポリと掻いていた。
「櫛、あります?」
「・・・これ」
ベット横の戸棚から櫛を取り出した。
おー、俺が作ったやつより出来がいい。やっぱ初心者じゃダメだな。
「痒い、梳く?」
「・・・ん」
長い髪の毛を梳くとやはりというかフケが多く出た。
髪質も脂っこかった。
「・・・すっきり」
「よかった」
「・・・眠い」
「火、消す」
日に日に色んな事が起きていくな。
そろそろ暇が欲しいです。
次の日も起きる前に黒いラインが見えた。
またガン見されてる。冷や汗が半端ないんだが。
「起きたい」
「!?・・・待って」
目隠しを外してみていたようだ。
目さえ見なければとりあえず死にはしないけど。
「大丈夫」
「おはよう、ございます」
「・・・はよう」
「朝、なぜ、見る?」
昨日から見られてて、思わず起きてしまったら死ぬからね。
理由くらいは聞いておきたい。
「・・・見れるの寝顔くらい」
「なるほど」
「・・・それで何回か石にした」
「oh・・・」
どうやら目が合って事故ったみたいだ。
俺も気を付けないとな。
「朝食、食べる。魔法、練習」
「・・・頑張る」
そんな危なっかしい日々を数日過ごしたある日。
姫さんに変化があった。
「・・・いつも夜に黄色いのが見える」
「へ?」
「何してるの?」
・・・夜にしてるって言ったら【充電魔法】
それが見えるってことは。
「これ、何色、見える?」
「・・・緑?」
「なるほど」
来た!やっとのことで【視覚魔法】を覚えてくれた。
これでコントロールが楽になる。
「制御、楽。
黒い、抑える」
「・・・黒い?」
お?お?黒いのがなくなっていく。
これは制御できてるんじゃないのか?
「メイド、さん。夕飯、教える、制御」
「・・・まさか」
「きっと、できた」
いやー、これでやっと命の危機が減った。
まだ時々溢れてるけど即死まで行くのか?
「おめでとう!?」
「・・・」
胸に飛びこんで来た。待ってびっくりする。
重・・・くない軽すぎる、力加えたら折れるんじゃないか?
「・・・頭」
「え?頭?」
「撫でて」
「あ、はい」
うーん、脂っこい。
石鹸とか使うとバサつくしな。
「うーむ」
「・・・どうしたの?」
「なんでも、ないよ」
自分の髪の毛を触ってΣ(゜д゜)ってなった、と思う。
あら、気づいてしまった。
「・・・ごめんね」
「気にしない。文化、違い、仕方ない」
「でも、やだ」
お、おおー!なんだこのかわいい生き物。
「・・・夕飯まで時間ある」
「なにか、する?」
「他の魔法覚えたい」
夕食時まで色々な魔法を練習して過ごした。
・・・俺よりも覚えが早い。
「お嬢様、ご夕飯です」
「・・・報告」
「え?」
「制御できた、かも」
「ほ、本当ですか!?
早速旦那様にご連絡を」
メイドさんは夕飯を渡さずに戻ってしまった。
「「・・・夕飯」」
考えることは同じだった。
数分すると戻ってきて姫さんだけが連れて行かれた。
「腹、減った」
この世界2食っぽいから燃費が良すぎる俺には辛い。
なにか食うもんがあればな・・・
ガン!
「来い!」
「ったい、痛い、です」
首輪を引っ張られ肉に食い込みながら角やなんやらでゴツゴツした男の人の前に投げ出された。
丁寧に扱ってくれ、血が出てるじゃん、困るじゃん。
「やれ」
「はっ」
だから急展開やめろとあれほど。
説明をくれ、わかんないから。何が起きてるかわかんないから!
「さあ、やって見せろ」
「・・・」
あーはん、なんとなく理解したぞ。
あれか、ちゃんと制御できるかの実験か?
モルモットとかでやってくれ!人体実験とか非人道的だぞ!
「・・・どうしよう」
・・・不安なのは俺だけじゃないのか。
おk。腹はくくった俺も男だ。
「姫さん、任せる。大丈夫、自信、持って」
「・・・」
悩んで頷いて目隠しを取った。
目尻に涙を浮かべたまっすぐな瞳が俺を見抜いた。綺麗なサファイアのような瞳だ。
「お?おー」
『わー!』
「え?え?」
どうやら制御は成功したようだ。
あー、緊張した。全身から力ぬけるわ。
ゴロゴロゴロ・・・
緊張が解けたのか俺と姫さんの腹から大きな音がなった。
「・・・くふふ」
「あはは」
これは顔面真っ赤だな、ク○ムガンもびっくりだな。
同時に姫さんの瞳から出る黒い魔力がギリギリ俺の目に届いた。
「「あ」」
同時に俺の四肢は固まったかのように動かなくなった。
ほんとに動かねぇ。姫さんも緊張が解けたんだろうな。
「ん?どうしたんだい?」
「・・・どうしよう。制御できなくてかかっちゃた」
「え?君、大丈夫かい?」
「手、足。動か、ないです」
意識はあるから即死は防げたみたいだな。
でもこれいつ動けるようになるんだ?
「それくらいなら平気だ、1日で動くだろう。」
「・・・よかった」
「・・・適当な部屋に投げておけ」
「ダメ、私の部屋」
どちらにしても丁寧な扱いをお願いしたいです。
ほら、首からだくだくと血がね。
「いやでもだよ。年頃の女の子なんだよ」
「・・・お父さん口調」
「ごほん!わが娘を危険に晒すわけには」
「お母さんに色々言いつけるよ」
「え?それは反則じゃないか!」
「・・・はやく私の要求を飲む」
あのー、親子喧嘩もいいんですがそろそろ俺を助けて。
「でもだよ」
「搾り取られればいい。私の弟が楽しみ」
「っく、卑怯な。
わかった!そいつをパルム・・・わが娘の部屋に連れて行け」
ドナドナー。
担がれ運ばれ部屋に戻された。
「ごふ・・・」
「お前がどんな手を使ったかしらねぇが人間のてめぇに居場所なんかねぇぞ」
だからってうつ伏せはやめてくれ。絨毯の毛が鼻に入ってくしゃみが出そうなんだ。
「・・・床はダメ。ベットに」
「っち、わかりましたよ」
ごふ、頭が壁に。しかもうつ伏せなんで呼吸が辛いです。
「・・・ご飯お願い」
「すぐに」
で、俺はベットの淵に寄りかかりなされるがままになった。
「・・・ありがとう」
「どうし、ました?」
「救われた。目を見て話せるようになった」
今の姫さんは目隠しをつけておらずちゃんと目を見て話している。
なんかすごく新鮮なんだが頬が痩せこけているせいでちょっと心配になる。
「お嬢様こちらご夕飯です」
「・・・ん」
で、フォークを突きつけられている。
なにをするつもりだ?
「何食べる?」
「え?」
「はやく」
どうやら手足が動かない俺に代わって食べさせてくれるらしい。
すっごく気恥ずかしいんだが。
そっから自分も食べながら食べさせてくれた。
間接キスを意識してる俺はダメな男なんでしょうか。
「・・・完食」
「ありがとう、ございま、した」
「ん」
メイドさんがプレートを下げて2人だけになった。
そしてその途端、首に抱きついてきた。
「痛い」
「あ、キズ」
「ひゃい!?」
な、舐められた!?傷口に唾つけるのはわかるけど吸わなくても!?
「・・・美味しい」
「なわけ」
「しょっぱい」
「汗、汚い!」
「美味しい」
す、吸わないで!
「お母さんに言われた」
「?」
「好きな人のは全部が美味しい」
肉食系怖すぎるだろ!何、目隠しがリミッターだったの!?
「私じゃダメ?」
「ダメじゃ、ない。でも、もっと肉、付ける」
今のこの子を抱きしめたら折れそうなんだもん。
もうちょっと筋肉つけてくれると助かる。
「・・・太ってるほうがいい?」
「折れる、怖い」
「わかったもうちょっと頑張る」
そして俺を抱き枕に、腕を枕にして布団を被った。
え、今日の俺はここで寝るの!?動けないから拒否権や間違いはないんだけど。
「あ、灯り」
「それくらい、消す」
火の周りに風魔法。酸素なくせば消えるだろう。
これくらいはできるようになった。
「ふふふ、やっと見れた」
「嬉しい?」
「あなたは私に色をくれた。
だから、私の全部あげる」
重くない!?魔法教えただけなのに全部もらっちゃたよ!?
「おやすみ」
「お、おやすみ」
はぁ、夢かもしれない。寝て起きればわかるだろう。
現実逃避だって時には重要なんだよ!
「おはよう」
「・・・おはよう」
お父さん、お母さん。
俺はきっと日本に帰ったら児ポ法で訴えられるかもしれません。
「・・・私があなたの妻になれなかったら殺すからね」
「あはは、oh・・・」
幼妻(ヤンデレ成分多め)か。
本当にこの世界は俺に優しくない。
投稿は2~3日に一回。
誤字脱字があれば報告していただけると嬉しいです。