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10-少年成長する-

スロット君を狙った矢は飛び出したシュシュに当たり血だまりを作っていく。


「私は不届きものを追います。

あなたはここで護衛のほうを」

「は、はい」


 剣を渡され執事さんは茂みに向かった。

っち、そんなフラグいらないんだが。


「シュシュ!どうして」

「クゥーン・・・」

「っち、あの野郎外しやがって。

まぁ、陽動として優秀なわけなんだが」


 まだいたのかよ、俺だけで行けるか?


「スロット君。憲兵を呼んできて」

「でもシュシュが」

「俺たちにどうにかできるか、急いで呼んできて!

早く呼べばシュシュだって助かるかもしれない」

「・・・わかった」


 さて、シュシュもあるけどこいつをどうにかするか。

スロット君と犬たちは


「っち。まぁいいか、てめぇを殺せばダメージは通るだろ」

「つまりなんですか?あなたたちはこの家に被害を出したいと」

「そうじゃねぇんだ。俺らは貴族に恨みがあんだよ」


 とりあえず会話を長引かせて憲兵を待つか。


「この家じゃなくてもよかったと」

「別にな。ただこの家は無駄に優秀でな。

芽は早いうちに摘むそうだ!」

「!?」


 ガキン!


 あっぶね。会話終わらせてから切りかかってくれ、というより切りかからないでくれ。


「流石は冒険者ってとこだな」

「お褒めに預かり光栄ですよ」


 俺から殴らなくていい、憲兵を待とう。

俺に人を殺すだけの度胸はない。


 ガキン!キン!キン!


「おいおい守ってるだけじゃ俺は止まんねぇぞ!」


 だが、まだ見切れる。ダンロンさんに比べれば全然だ。

ありがとう、ダンロンさん。あなたのおかげで無双が


「おらよ!」

「って」


 だからと言って防げるかは話が別だ。

無茶苦茶痛い、泣きそう。


「お前が死ぬのが先か俺が死ぬのが先か気になるな!」


 づあ!腕の次は足か・・・

やめてください死んでしまいます。


「がはは、楽しいな弱者をいたぶんのはよ!」

「やめてほしいことこの上ないですがね」

「そうつれないこと言うなって!」


 頭!?危ないけど少し切られた。

アドレナリンのせいで痛みは気にしないけど恐怖心が。


「なんだお前?人とやるのに震えてんのか?」

「慣れてないんですから難儀なものです」

「冒険者が猶更似合わないな!」


 っち、残ってる片腕からも血が出てきたか。

きっつ、ダンロンさんいなかったらここで死んでたな。


 ・・・死ぬのか。


「こんなところで死んでたまるか!!」

「そんな攻撃が通ると思うなよ」

「!?がぁぁ!」


 腕刺された!?

骨見えたんじゃね?なんて冗談言ってる場合じゃない。


「おいおい、殺しあってんのに泣いてんじゃねぇよ。女か、てめぇは?」

「生理現象だ!」

「ん?よくわかんねぇが今楽にしてやる」


 それは勘弁だ。ここで動かなくていつ動くよ!?


 ガキン!


「ほう、やるじゃねぇか」

「はぁ・・・はぁ・・・」

「でももう限界」

「兄ちゃん!!」


 あーいつもの憲兵さんとかが見える。

時間稼ぎはできたのか?


「っち、あいつらに感謝するんだな」

「そりゃあもう」


 相手が林に消えていくのと同時に誰かに支えられた。

あー、痛みががっつり来る。


「頑張ったな。今治療してやる」

「お願いします」

「‘トラスト‘」


 傷が治っていく、魔法ってスゲー。

でも貧血治らねぇ。さすがに流血までは無理か。


「シュシュも頼む」

「はい。‘トラスト‘」


 シュシュの傷口はなくなり矢も肉に押されて抜け落ちた。


「シュシュ傷は治ったぞ」

「・・・」

「なぁ、シュシュ・・・起きてくれよ」


 シュシュの体はまるで人形のようだった。

おそらくもう目を覚まさないのだろう。


「憲兵さん、お墓のほうを」

「どうしてだよ!まだ寝てるだけ」

「シュシュは死んだよ。君をしっかり守って」


 実感わかないよな。

俺も全然わかないが死んじまったんだよ。


「なんで・・・なんで守っちまったんだよおれな」

「スロット、それ以上言ったら殴るぞ」


 はぁ、なんでこんな熱血キャラになってるんだろう。

わんこ達も何故か俺の手をなめている。


「シュシュは君を守るために死んだんだ。

そのシュシュが守った君はそんなもんの男なのか?」

「・・・」

「ありがとうなシュシュ。スロットを守ってくれて」

「お墓の準備できました」


 俺はシュシュを抱えてお墓まで向かった。

さっきまで元気に駆け寄っていたとは思えない。


「ここに」

「ちょっと待ってくれ」


 櫛を取り出してブラッシングしようとしたところ袖を引かれた。


「俺にやらせてくれ」

「どうぞ」


 綺麗にしてから布にくるみ土に埋めた。


「こちらをお使いください」

「ありがとうございます」


 いつの間にかいた執事さんがフリスビーを渡してくれたので、地面に刺した。

あとは花だが、すまんなこんな花で。


 たんぽぽみたいな花を添えるとついにスロットが泣き崩れた。

そこに2匹が行き2匹と1人を残してその場を離れた。


「ありがとうございます。助かりました」

「俺こそ礼を言おう。

お前がいなければ間に合わなかったかもしれない」

「守ることはできませんでしたけどね」


 はぁ、もうちょっと私生活頑張ってれば結果は違かったかもな。

悔しさしか残らない。


「悔しいなら強くなれ。それで俺も強くなれたんだ」

「そうですね。肉体改造を頑張るぞ」

「ははは、何もそう強さだけじゃないさ。

誰かを守れる力は何も肉体だけじゃないだろ」


 ・・・この人すげぇな、なんか感動した。

どちらにせよ力をつけないといけないのか。


「カズヤ様、奥様がおよびです」

「はいわかりました」


 執事さんはお墓前にいるスロットを見守るそうなので1人足を運んだ。


「わざわざごめんなさいね」

「いえ、お忙しいことはわかっていますから」


 書類が山積みで目の前の紙はインクで真っ黒だった。


「まずは息子を守ってくれてありがとう」

「それはあくまで偶然ですよ。

彼が守ってくれなかったら」

「そうね。シュシュがいなかったら危なかったかもしれないわね」


 あの時気づけなかった俺に非がある。

悔やんでも悔やみきれない。


「でも、シュシュはちゃんと守った。

そして、シュシュが守った息子をあなたはちゃんと体を張って守ってくれたわ」


 どんな言葉も受けるつもりでいた。


「でも失望もしているの。

冒険者なのに撃退もできず犠牲も出してしまったことにね」

「はい。返す言葉も思いつきません」


 もうがっつり反省モードだよ。

俺の修行不足か。勇者ならもっとうまく立ち回ったんだろうな。


「ですので今日のところはお引き取りを」

「はい・・・ところは?」

「はい。そんなしょぼくれた顔をされてはこちらにまで支障をきたします」


 この人はこんなときまで・・・

なんか、泣きそう。今日はいっぱい泣いてるな。


「それにスロットも落ち込んでいますから考えさせる時間がほしいの」

「わかりました。今日のところは帰らせてもらいます」

「あ、それとこれを受け取って」


 これはお金?なんで?


「スロットを守ってくれたお礼よ。

命にお金なんてって考えたけど私から渡せるものはこれしかないから」

「そ、そんな」

「いいから受け取って。受け取ってくれないと困るのよ」


 ・・・うん。ここはありがたく受け取ろう。


「ありがとうございます」

「それで遊びなさい。今日はちょっとしたお休みなんだから」

「・・・奥さんもしっかりと休んでくださいよ」

「その時が来たらね」


 少し癒された、今日は帰って明日に備えて英気を養おう。

布袋の中には4000Kも入ってました。すごく驚きました。




「ブレイスさん、相談したいことがあるんです」

「ん?なんだ?」


 俺は10000Kが入った布袋を持ってコックのブレイスさんのところに向かった。

事情を説明して袋を渡すとびっくりしていた。俺は金使わないし・・・


「これをダンロンさんに渡したいんですが、驚かせたいんです」

「なるほどな。あいつ、いい弟子を持ったじゃないか」


 話し合いの結果、ダンロンさんの好きな酒と手紙を一緒に置いておくことになった。

どうやらダンロンさん、夜中にここに入り冷えている酒を飲んでいるとのことだった。


「安心しろ。あいつの親友としてきちんとあいつに渡しておく」

「お願いします、ブレイスさん」


 今日は嫌なこともあったがサプライズも仕掛けることができた。

気分のリフレッシュはきちんとできたな。


 それから夕飯も食べ、いつも通りの作業もしていたが急に眠気が襲ってきた。

流石に疲れが出たか、もう寝るか。


 湯あみを終わらせ眠った。

明日はすることがあるから忙しくなるぞ。






「お前らも冒険者として頑張ってるからな。

俺としても目的がやっと果たせたこれほどいい日はないだろ」


 勇者3人のランクは早くも石炭のランクまで上り詰め、ダンロンさんもなぜかテンションが高く食事をおごってくれるようだ。


「酒を飲めるのが俺しかいねぇがまあいいだろう。

今日はめでたい日だ。遠慮せずに食えや」

「ありがたいんですが大丈夫なんですか?」

「気にすんな!臨時収入も入ったことだしお前らくらいの食費ならどんと任せろ」


 その宴会から数日後、ダンロンはメイドのドリーと結婚式を挙げた。

結婚指輪を渡し全員からの祝福をもらっていた。


 そこには勇者全員がいた。

投稿は2~3日に一回。


誤字脱字があれば報告していただけると嬉しいです。

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