表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪堕ち勇者達で滅亡寸前な世界の神官事情  作者: イマノキ・スギロウ
4/7

第4話「なんとかしてやる」

 リコエラの心の中に入っていくと、その先には一際大きい泡のような球体があった。


「あれが心の中心か?」


 泡のそばまで来ると、マサシは先ほどと同じように触ってみた。


 ・

 ・

 ・

 ・ 


「あれ?」


 さっきまでリコエラの心の空間に居たのに今は花畑に居る。 視線の先には記憶の中にあった小さいころのリコエラが座り込んでいた。


「あんた誰よ?」


「あ、俺はマサシ、君はリコエラ、だよな?」


「なんであたしの名前を知ってるのよ!」


「あー、えっと、それは後で教えるから、リコエラはなんでここに居るんだ?」


「ここが好きだからよ! 誰にも邪魔されず、ずっと大好きなお人形やお花達に囲まれてずっとずっと自由に生きるんだから! ……それを邪魔する人はみんなぶっ潰す」


 うん、小さくてもやっぱりあの女勇者だ。


「あんたも邪魔するんなら潰す」


「だぁ~まてまて! お前の好きな事を邪魔するつもりなんてないよ」


「嘘だ! そう言ってお父様もお母様も剣の先生もみんなみんなあたしから好きなものを取り上げて言ったんだ!!」


 軽く、いや、大分人間不信になってる感じだな。


「じゃあ、今から俺はリコエラの言うとおりにだけ動くってのはどうだ? それ以外の事をしたら潰してもいいぞ、 あ、息するなとか自分の首絞めろってのはなしで頼むな?」


「……本当に?」


「もちろん俺が出来ない事は無理だけど、出来る事だったらなんでもいいぞ? なんでも付き合ってやるよ」


「……じゃあ、一緒に遊んで」


「OKお姫様、何をして遊びましょうか?」


「んーとね、おままごと!」


「かしこまりました」


 それからマサシは子どものリコエラとおままごと、お馬さんごっこ、ボール遊び、花輪作り等、どれだけ時間が経ったのかわからなくなるほどたっぷりと遊び倒した。


「あはははは! すご~い! マサシ~! もっと早く~!」


「はいよ!」


 リコエラを肩車して花畑を歩くマサシは少しだけ歩くペース早くし、それにリコエラは大喜びしていた。


「あはははは! たっのし~! ねぇマサシ、ずっと一緒にいようよ」


「……そうだな、ずっと一緒にいるのもいいかもな、」


「でしょお? じゃあ今度は何して遊ぼうか?」


「けど、リコエラと一緒に居るならここだけじゃなくてもっと別のところにも行ってみたいな」


「……いや、外の世界は私に嫌なことしかしないんだもん」


「なら俺が全部なんとかしてやるよ」


「無理だよ、マサシ弱そうだもん」


「あ、こいつ、気にしてることを、これでも俺は女神様からお墨付きをもらった神官なんだぞ?」


「神官? 嘘でしょ?」


「本当だっての、おまえがどうしても勇者や他の事をするのがいやだって言うんならそれはしなくていい、お前の好きな生き方を選べばいいさ、けどな、ずっとここに居てやってくる奴や嫌いな奴を潰すのは自由な生き方って言うのとはちょっと違うぞ? それじゃお前も誰かに嫌なことをしているってことになるんだから」


「……だって、じゃあどうすればいいのよ!」


「今度から潰す前に俺に相談しろよ。どーすればいいか一緒に考えてやるからさ、それでお前がやりたい生きた方を俺が手助けするよ」


「……そんなことできるの?」


「やってみて無理ならまた別の方法を考えてやるさ、ついでにリコエラがしたいんならまたいくらでも遊ぶのだって付き合ってやる」


「………………マサシ、信じていいの?」


「任せろ、なんとかしてやる」


「うん、じゃあ信じる!」


 不安そうに曇っていたリコエラの顔がパッと笑顔になった瞬間、周囲が真っ白に変わり、次の瞬間マサシの視界も真っ白に埋め尽くされた。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 



「マサシさん!」

「マサシさん!!」


「ん、あ、ルアスか、あのあとどうなった?」


「マサシさんがスキルを発動して二人を光が包んだと思ったら二人とも倒れちゃって、呼びかけても全然目を覚まさなくって、それからえーと、えーと、」


「落ち着けって、俺がスキルを使ってからどれ位経った?」


「倒れてからそんなに時間は立ってないよ?」


 ……どうやらリコエラの心の世界と現実の時間の経ち方は違うみたいだな。


「あ、リコエラはどうした?」


「それならそっちで倒れ…、マサシさん! 逃げて!」


「おわぁ!?」


 ルアスが指さそうとした先から復活していたリコエラがこっちに向かって飛びかかってきており、ルアスはとっさにマサシを突き飛ばして庇おうとした。


「どけぇ!」

「ぐっ」


 マサシの盾になろうしたルアスの胸倉を掴みあげたリコエラはそのままルアスをポイ捨てしてマサシに再び飛びかかった。


「マサシさん!」


「マサシ~! 約束だからね! あたしの嫌なものは全部なんとかしてね~?」


「へ?」


 襲われると思っていたルアスの目に飛び込んできたのはマサシに思いっきり甘える感じで抱きついているリコエラだった。


「わかってるよ、約束だからな。 あと、なんかあったらちゃんと相談するんだぞ?」


「わかってるよ!」


「す、すごい、ほんとに勇者を元に戻しちゃった……」


 マサシに抱きついたまま離れないリコエラを見ながらルアスはその様子を見守る事しかできなかった。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 




「……で、元に戻ったリコエラどのを連れてそのままここに来たというわけか」


「元に戻ったって言ってもいいのかこれ?」


「マサシ~、後で一緒にご飯食べようね~♪」


 教会に戻って来たマサシは現在、リコエラに抱えられて、人形のように膝に乗せられていた。


「まぁ、街を襲うよりは勇者の側に戻った言って差し支えないと思うぞ?」


「ぷー」


「ルアスはルアスでなんでふくれっ面してんだよ」


「別に~?」


 男に嫉妬されても全然うれしくねぇ。


「さてリコエラ殿、少々伺ってもよろしいかな?」


「言っとくけど、あたし、あいつらの事はほとんど知らないわよ?」


「なら知っている事だけで良いので教えてもらえんかの?」


「……あたしは最初の魔王討伐隊として他に三人の勇者と一緒にそいつの根拠地に殴り込みをかけようとしたんだ。けど、逆に奇襲を受けて、あたしは他の勇者たち別々に、そのあとは捕まってあのざまさ」


「あの黒い触手に捕まったってわけか」


「……マサシ? なんで知ってるの?」


 しまった。つい口が滑った。


「あーごめん、お前をこっち側に戻す時にちょっとだけお前が捕まった時の記憶見ちゃった」


「え? うぅ~、もしかして他の記憶も見た?」


「いや、捕まった前後の記憶くらいしか見てないぞ!」


「ほんとぉ~?」


「ほんとだって」


「……二人だけの秘密だよ?」


「ああ、約束だ」


 なんとか誤魔化すことに成功し、マサシは命の危機から脱出した。 


「リコエラ殿、向こうの仲間になっとった間になにか見聞きしたことはないかの?」


「基本は自由行動だったからな、行きたいとこに行って、気に食わない奴が居ればブッ飛ばしてって感じで、」


「そういえばリコエラ、俺達を襲ってきた時に教会を探してたみたいだけど、あれはなんでだったんだ?」


「ああ、それはあいつらと唯一交わしていた約束だったからだよ」


「約束?」


「あたしたちが自由にしていい代わりに、街を襲った時とかに教会と神官をぶっ殺すっていう約束をあいつらとしてたんだよ」


「なんとまぁ、やはりそうじゃったか」


「神官を優先して狙うっていう事かよ、なんでまた?」


「それは、寝返らせた勇者を復活させないためじゃないかな?」


 マサシが理由を考えているとルアスが横から答えを教えてくれた。


「ふむ、そうじゃな、ワシたち普通の神官にもマサシ殿程ではないが、魔を払うスキルを持つ者がおる。その中から勇者を元に戻せる者が現れるのを恐れての事じゃと思うが、」


「ってことは今後俺はもっと狙われるって事か?」


「たぶんそうだと思う」


「オーノー!」


「心配には要らないよ、マサシの事はあたしが守ってやる!」

「私だって衛兵としてマサシさんを守るよ!」


「二人とも…、ありがとう」 


「何はともあれ、初めての引き戻しは無事に成功したようじゃの」


「そうだな、なんか今日はすげぇ疲れたよ」


「ならしっかり休んで明日に備える事じゃ、明日からリコエラ殿が壊した街の修復作業じゃからな、マサシ殿にも手伝ってもらうぞ?」


 マジかよ!?

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ