密談
椅子に座ったノトンが、大理石のテーブル越しにちらりと白髪の老人を見た。
その顔にはいやらしい笑みが浮かんでいる。
「で、膠着状態に陥ってからもう十五時間も無駄な争いをしていますが、そろそろリザーバー、入れてもかまいませんね?」
老人はぎろりとノトンを睨み付けた。
「……貴様! 端から!」
「さて。過去の例からすれば、開始二時間から三時間での投入が割と一般的ですしね。十五時間というのは、かなり長く待った方ではないですかね」
「そもそも! プレイヤーも空席、ああして戦う勇者も異世界! 例外に例外を重ね、更に何を企むのか!」
「失礼な。我が世界の魔王イオタの願いを汲んで、代理で私がプレイヤーを行っているだけですよ。そして彼も異世界とは言いつつも、エル・ダ・ラバーナとの世界近似率は96%の世界からの来訪者だ。ほぼこの世界の住人ですよ」
詭弁を弄し、煙から煙に巻く方法でノトンはどうにか『ゼウル・クァトロ』に多々野をねじ込んだ。
そして、そこにさらにリザーバーとして誰かを投入しようと言うのである。
「上が飲んだ以上、そこを蒸し返す気はない。で、誰をリザーバーとするつもりだ?」
彼らが覗く大きな窓には、ズタボロになった多々野と、それに対し打つ手を失った二体のロボットが未だに無駄な戦いをする様子が映っていた。
圧倒的に巨大な存在であるロボット。それに対し、豆粒ほどの存在の多々野を一切傷つけられないという異常な状態。
これを肴に酒宴を行っていた神々も、すっかり興が冷めたようで、居眠りする神や、明らかに他のことをし始める神がいたりと、もはや興味は他に移っていた。
その興味を戻すには、リザーバーとして誰かを投入するというのは仕方の無いことだろう。
しかし、ノトンが誰を投入すると言うのか。
この戦いを取り仕切る神は、額に汗を浮かべた。