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ブックプラント  作者: アッキ@瓶の蓋。
ブックプラント(全5話)
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ブックプラント

「ちっ……!」


 僕は彼女が放った火炎を見て、小さく舌打ちをする。


(いきなり攻撃をするだなんて、どれだけ凶暴なんだか……)


 と、僕はそう言って近くに植えられている雑草を手に取る。

 手に取ると共に雑草が僕の力によって、茶色い楯へと姿を変えていた。

 そして僕はその盾で炎を防ぐ。


「草木がいきなり盾に……それがあなたの異能なんですか? なんだか不思議な能力で、ほんの少し興味がありますね。い、いや、別にあなたに特別な興味があると言う意味で言った訳ではなくて……」


 そう言いながら彼女は、火炎の塊を掌の上に作り出す。

 先程とは違って火炎の大きさも、それから数も段違いである。


(炎を別の物体に出来ない所を見ると、相手は無象属、か)


 属性系統の無象属と有象属の分類はかなり難しい。

 何故かと言うと、その分類が曖昧だからである。

 無象属も有象属のどちらも使える属性は1つであり、その条件分けはその属性をどう言う物に出来るかと言う事にある。

 無象属は自分が出す属性を生み出して放つ事しか出来ないが、有象属は生み出した属性を色々な物へと変える事が出来る。

 大きくは出来るし、増やす事も出来るらしいが、別の物には出来ないらしい。

 最も、敢えて物にはせずに無象属だと思わせる有象属も居るから分からないけれども。


「戦うのは面倒だな……」


 僕はそう言いながら、芽生えている若葉を手に取る。

 手に取ると共に、僕の手の上で若葉が戦闘機へと変わる。

 これが僕の異能、植物を武器へと変える異能である。


 武器の定義は僕が武器だと思っている物であり、先ほどのような盾のような装備品も、今回の戦闘機のような乗り物だって出来る。

 ただ、植物を武器へと変えなくてはいけないため、冬はあまり活躍出来ない能力である。

 他にも色々と制限なりがあるのだが、それは今は関係ない。

 僕は若葉を変えて作った、その戦闘機をその少女へと向けようとして、






「――――――そろそろ良いでしょうか?」


 と、1人の少女によってそれは止められるのであった。

 その少女は青いセミロングの髪と眼の下の泣き黒子が大人びた美しさを引き立てる、ほんの少し背が低い巨乳女だった。


「これくらいで良いわ。もうこのくらいで止めてあげましょう。ね、日向野健君?」


 彼女はそう優しく微笑みながら言った。


 その青いセミロングの大人びた雰囲気を持つ女、月見里奈々(やまなしなな)に促されるようにして僕と、炎を放ったその少女、加賀見アキは文芸部室へと招待された。


「いやー、まさかあんな見え透いた物に引っかかる人がまだ居たみたいでびっくりしたよ。しかもそれぞれ別の伝承を信じているとはびっくりだね」


 と、月見里奈々さんはそう言っていた。

 その後、月見里さんが説明してくれたのだけれども、『鳴らない鐘』の話は嘘の伝承みたいなのである。

 僕が聞いたのは『鳴らない鐘』を聞いた男女が縁を取り持つとされているらしいが、加賀見アキが聞いたのは僕のとは違って、


「『鳴らない鐘』を聞いた男女は戦い合わなければならないと言う噂なのでして。ですから、『鳴らない鐘』を聞いたから戦わないといけないかなと思いまして、戦う事を選んだのですが、私としましても本当だったら戦いたくはなくて、まぁ、本当はそんな事は関係無いんですけれども……」


 と、そう言った。


「いや、普通に戦わなくても良いでしょうが……」


 月見里さんは呆れた口調でそう言った。


 ともかく。


 僕達は七不思議とか、伝説が間違った状態で伝わってしまったために、こう言った事態になったらしい。

 全く持って、都市伝説とは人騒がせな話である。


「まぁ、2人にはこれから色々と聞きたい事がありますので、出来るのならば文芸部に2人とも入りませんか?」


 と、月見里さんはそう提案していた。


「……いや、僕は確かに本は好きですけれども、部活動に入るほどでは」

「私も別にそんなに本自体は好きではなくてですね。そもそも読書は別としても、文芸部では確か本を書く執筆の作業もあって、それが私はどうかなと――――」


 僕と加賀見さんのどちらも断ろうとしていると、月見里さんはこう言っていた。


「一年生にはあまりピンとこない話かも知れないけれども、私、こう見えてこの学園に沢山の情報を教えてくれる友達が居るんですよね。そりゃあもう、本人達が隠しておきたいような情報まで事細やかに教えてくれるような、優しい友達がね。

 勿論、あなた達の情報も仕入れているから、今度放送部の知り合いに読み上げて貰う事も――――」


「「……是非、入れてください」」


 僕と加賀美さんはその後、月見里さんに優しく(または脅迫されながら)入部届を書かされた。


「嬉しいわ。文芸部って2年生の私1人しか居ないのよね。だから、生徒会長にほんのすこーし頼んで待っててもらったけれども、1年生の新入部員が2人も入ってくれたら本当に心強いわ。

 日向野君、加賀見さん。これからよろしくお願いするわね♪」


 ちなみに、これはその後聞いた後日談なのだが、彼女の能力は人を脅迫する能力とは全く関係ないとの事で、沢山の情報を知っているのは彼女の単なる腕の良さだと言う。

次回、「タイガーフレンド」

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