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ブックプラント  作者: アッキ@瓶の蓋。
ハンマールード(全6話)
15/34

ハンマージェラシー(1)

「……写真部をぶっつぶして、貰えません?」


 とある写真部の部活動の日。

 部室の扉を開けて入って来たその少女は、普通に文芸部として活動する僕達に物騒な事を頼んできた。

 小柄な身体とバランスが取れていない長すぎるくらいの黒髪のポニーテールを揺らし、長すぎる大きめの服の裾を持ちながら入って来ました。それに対して、座っていた加賀見(かがみ)アキさんが声を出す。


「誰? あの小さな子?」

「……あなたも十分、小さいけれども」

「な、何よ! 何か文句あるの!」


 ……いや、文句と言うほどではないんだけれども。

 ただ、それほど身長変わらないから、どっちもどっちって言うか……。


「……どんぐり、背比べ(笑)」

「な、なにを言ってるのよ、あんたは!」


 と、この前部活に入った白山楓(しらやまかえで)がそう囃し立てると「ムキー!」と顔を赤くしながら怒っている。

 

(……元気だなー)


 と幼馴染と部員との温かい(?)やり取りを見ていたいのだが、どうやらそう言う訳にもいかないみたいである。


「……そこの、男子。ちょっと、良いでしょうか?」


 何故かあっちがご使命なのは、僕みたいだし……。

 何でわざわざ僕を指名するのかは全然分からないけれども。

 出来る事ならばこっちは、無関心で居たかったのだけれども……なー。

 溜め息を吐きながら、僕はご使命の彼女に話しかける。


「なんでしょうか?」

「……今からそこの魔王と話をするので、良ければ仲介相手になって貰えませんか?」


 そう言いながら長いポニーテールの彼女は、黙ってニコニコとした笑顔で座っている月見里奈々(やまなしなな)部長を指差していた。


「ウフフフ……日向野君、相手をしてくれる? どうも私は嫌われてるみたいだからね」

「は、はぁ……」

「……あの女の今の言葉で、私は大きなダメージを負ったかも知れません。

 帰ったら姫花生徒会長に慰めて貰いませんと……ハァハァ……会長……」


 そう言いながら、懐から取り出した写真にキスをするポニーテールの女。

 ……この時点で関わりたくない、逃げたいと言う気持ちでいっぱいいっぱいなんですが。


「とりあえず名前を教えてくれませんか? 自分は日向野健です」

「……左凛(ひだりりん)。1年で生徒会の書記を担当しています。

 後、姫花生徒会長は私の嫁、です」


 ……つっこまないぞ。

 同じ女性同士じゃないか、などとはつっこまないぞ?


「それでうちの部活に何の用ですか?」

「…………」

「それで、何があったんですか?」


 何が言いたくないみたいだが、こっちはそれを言うのをいつまでも待っている訳ではないから早く言ってここから帰って欲しい物である。

 その意思が伝わったのか分からないが、彼女は小さな声で話し始めた。


「……生徒会長がやられました」


 その言葉に対し、「へぇー……なるほどー……」と言葉を出す月見里部長。


「それが、写真部を潰して欲しい、に繋がる訳ね?」

「……あなたには聞いておりません」

「あらら。嫌われてしまったわね」


 ……この1年生にどれだけ嫌われる事、したんですか、月見里部長。

 全く……。


「生徒会長がやられた、それがどう写真部を潰す、に繋がるんでしょうか?」

「……生徒会長は写真部部長、九十一(いちじくじゅういち)を倒しに行きました」

「何故、一介の部長と生徒会長が戦う事に繋がるんですか?」


 異能特区の生徒会は、言わば自衛組織である。

 異能者と言うのは特別な存在であり、高校生と言うのは思春期の真っただ中で精神的に不安定だ。だからそれを管理するための組織、それが生徒会と言う物である。


「……前生徒会長は九十一さんを生徒会長として選んでました。

 彼が生徒会長になる事を拒否したので、西城姫花さんが生徒会長に選ばれました」

「……つまり、は次席(No.2)?」


 そう楓が言うと、ムッとした顔で楓を睨み付ける左凛。


「……私が尊敬する生徒会長に、なんてことを言うんですか」

「違う、の?」

「……ムッ」

「ちゃんと、理解しない、と。いきなり、部活に来て、迷惑」


 そう言って互いに互いを睨み付ける、楓と左さん。

 けれども睨んでたら話が進まないと理解した左さんは、また小さく言葉を出す。


「……私が焚きつけて生徒会長は写真部の部長を倒しに行くように仕向けました。そして生徒会長は大けがを負って、やられた」

「ハッ! 流石、No.2と言う所ね!」


 今度は加賀見さんを睨み付ける。今度は、加賀見さんが怖がって僕の後ろに隠れてしまったので互いに睨み付ける事はなかったけれども。

 ……そうなると分かっているのならば、そんな相手を挑発するような言葉を言わなければ良いのに。


 ……?

 焚きつけて?


「……焚きつけた?」

「……はい。私が敬愛する生徒会長が、あんな下等な部長如きに負けている現状を思うと、居ても経っても居られずに。……なので、生徒会長の闘争心を焚きつけて、戦わせるように仕向けました。あんなのが、私の愛する生徒会長より上だと思われているかも知れないと思うと、腹が立って」

「それで生徒会長が返り討ちにあったと……」


 つまりは……


 こ い つ が 原 因 だ!


 左さんが焚きつけさえしなければ、西城生徒会長は写真部部長にやられなどしなかった!


「……可笑しいんですよね。生徒会長の実力ならば、普通に九十一くらいぶっ殺せると思って焚きつけたんですが」

「それで本当に九十一さんが殺されたらどうする……」


 ……と言うか、その話のどこに文芸部が絡んでくるのだろうか?

 全く関係ない気がするのだが。


「あらら? その話のどこに、我がごく普通の文芸部が関係するのかしら?」

「……あ、あなたのせいです! と月見里に伝えてください」


 と、僕の後ろに隠れてそう言う左さん。

 いや、伝えてくださいって……もう十分聞かれていると思うが?


「……いつもの私だったら、脳内でボコるくらいしか思いません」

「それは思うんだね……」

「……はい。姫花生徒会長は最強、無敵、美人!」


 うん。最後のは別に今は関係ないと思う。


「……だから、あんな蜘蛛野郎の事なんて、いつもの私だったら気にしなかった。あなたさえその前に来なかったら! と、伝えてください」

「あらあら。苦手な私に会った後で、嫌な人物が出て来たから、いつもは我慢出来る所が我慢出来なくなっちゃった、と」

「……その通りです。ですので、月見里部長……ひいては文芸部が悪い」


 いや、極論過ぎるだろ!


 ……こいつ、本当に自分勝手だな。おい。

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