第三話
お待たせしてすみません
m(_ _;)m
それではどうぞ
ドタドタと何者かが駆け寄って来る音が部屋の中に居ても聞こえてくる。
筆を置いた袁術は扉へ振り返り、それと同時にダンと勢い良く開いた。
ドアを開けたその人物は室内にいる袁術を確認するやいなや飛び掛かり、袁術に軽くかわされて机に顔からダイブした。
けたたましい音をたてて机がへしゃげた。
それほどの勢いにも関わらず、当の突撃した本人は何事もなかったように立ち上がり、そして袁術へと振り返った。
張勲「ご無事ですか!?お嬢様!!」
袁術は思わずずっこけそうになる体をどうにか抑え、溜め息をつきながら頭に手をやる。
袁術「危うく無事な体が吹っ飛ぶところになったがの!安否を確認しに来た者が危害を加えてどうするのじゃ!!」
張勲「すみません。お嬢様が心配のあまりつい………。」
袁術「まったく、七乃は妾が絡むと思考が吹き飛ぶ癖をどうにかせい。おぬしが頭痛の種になってどうするのじゃ。」
七乃「すみません………。」
瑞希「まぁそのくらいにしてあげてくださいお嬢様。七乃ったら心配のあまり後処理を副官に任せてすっとんで帰って来たんですから。」
袁術「………のぅ、瑞希?庇っておるようで、叱られる事柄が増えただけじゃぞ。」
瑞希「あらあら、失敗しました。ナナちゃんごめんなさいね。」
謝っているものの顔は笑っているのでわざとだったらしい。
ただ効果は抜群で、袁術がちらっと横目で見ると、七乃が顔を青くしながら少し俯いていた。
瑞希「でもその判断はあながち間違ってはいないと思いますよ。お嬢様に何かあればこの寿春は終わりですから。兵逹も混乱してましたしね。先程使いを出して無事を連絡させました。」
袁術「ふむ、確かにその通りじゃな。だがの、それはそれじゃ。毎回心配だからという理由で戦線離脱されては洒落にならんのじゃ。まぁその話は後にゆっくり七乃とするとして」
七乃「そ、そんなぁ。」
そんな七乃をスルーしつつ袁術は話を続けた
袁術「妾の話の内容は言わんでもわかるじゃろ。先程の騒ぎで面白いモノを拾っての。今は横の部屋に転がっておる。その処遇をどうするかを相談したいのじゃ。」
七乃「おもしろいもの………ですか?」
袁術「うむ、人が空から降ってきたのじゃ。しかも無傷での。先程の流星の正体はどうやらそいつじゃったらしい。妾もこの目で見ながら未だに信じられぬ。」
七乃は先程までの表情を一変させ、真剣な面持ちで顎に手を当てつつ考え、そして“切りましょう”と袁術に告げた
七乃「このまま城に留めて置くのは危険です。どのような人物なのかわからない以上、今意識のない内に処分すべきです。」
袁術「………」
その言葉を聞いて袁術はじっと目をつむり思案する。七乃は言葉を続けた
七乃「それに瑞希とも話をしたのですが、そちらよりも大きい問題なのは、どういう人物かよりもむしろ“天の御遣い”であるという可能性があること、そのほうが問題なのです。未だ弱小である我が軍が天を騙っていると吹聴されれば、最悪大陸中を敵にまわし、消し飛びますよ。それだけの危険を抱えながら得られる対価が少なすぎます。」
袁術「ふむ………確かに七乃の言うことは正論じゃな。瑞希はどう思うかや?」
瑞希「私は……迷ってます。確かにナナちゃんの言う通りであると思うのですが………。」
袁術「何か引っ掛かる、と。」
瑞希「より正確に言うなら期待、でしょうか。私達以外の有力な勢力ではなく、此処にいるその意味するところに。まぁナナちゃんみたいに何か根拠があるわけではなく、女の勘といったところですが。」
そう苦笑しポリポリと頬をかく
それを聞いていた七乃は唖然とし、すぐさま呆れた
七乃「何を呑気なことを言ってるんですか。今こうしているうちにも、勘づかれたら色々と積み上げたものが吹き飛ばされちゃいますよ。公になる前にその人は即刻排除すべきです。」
袁術「………ふむ」
袁術は再び思案し、そして迷いのある顔で口を開いた
袁術「……とりあえず話だけでも聞いてみたいの。処分はそれからでも遅くはない。」
七乃「美羽様!?」
七乃はありえないといった表情で袁術を振り返る
ここまで論理的に説明したのにも関わらず、何故躊躇うのかと
袁術は意図的に七乃を無視して話を続けた
袁術「まだあやつが御遣いじゃと決まったわけでもない。流れ者を気紛れに拾ったと言い訳もたつじゃろ。妾の表向きの顔ならばそれも可能じゃ。人となりも見ずに切り捨てることは妾にはできぬ。それでは邪魔な者は叩いて潰しておるあやつらと同じになる。無論、邪な者であるならば容赦はせんがの。」
七乃「しかし………」
それでも納得できないと食い下がろうとするが、それを“くどい”と切って捨てた
袁術「もう決めたことじゃ。二人ともよいな?」
七乃・瑞希『(………)御意』
袁術「話は終わりじゃ。七乃は引き続き先の反乱の事後処理を頼む。瑞希は妾の護衛として付いてくるのじゃ。隣の部屋に行き、奴と話がしたいのでな。」
七乃はまだ納得はしていなさそうであったが、一礼をして部屋を退出した。
それを見届けてから瑞希がやれやれと言わんばかりに微苦笑する。
瑞希「ナナちゃんへそ曲げちゃいましたね。」
袁術「七乃は妾を第一優先に考えてしまうからのぉ。それゆえ考えが狭まるきらいがある。考え方の違う親いものがおれば話が別なのじゃが。」
瑞希はそこではたと気がついた。“もしやそこまで考えていた”のかと。しかしそれを察した袁術は首を横に振る。
袁術「さすがに其処までは………の。じゃが期待にそう者であれば良いのじゃがな」
そう言って窓の外に目をむける
その目に何を映していたのかは背を向けていたので分かりようもなかったが、その背に負うものの多さに瑞希は言い様のない悲しさを感じていた。
なんとか仕上がりました
(・_・;)
難産だったわけではないのですが、仕事の方がかなりバタついておりまして………
9月頃まで少し更新が不安定になるかもしれません
更新遅れそうなら今後は活動報告にて随時報告していきます(・ω・)