第一話 (小修正)
や、やっと一つ落とせた
(>_<)
徐州、寿春城の郊外
本来なら音もなく静かに一日が終わるこの土地は、現在反乱軍とそれを鎮圧するために出撃した袁術軍の交戦でひどく騒がしくなっていた
袁術軍本陣は先程から戦況報告の伝令があわただしく走りまわっていた
伝令兵「伝令!!右翼孳義隊が敵左翼の突破に成功!!ただ被害が少なからず出ているので右翼側からの包囲が現状困難とのこと!!」
本陣中央で指揮をとるのはどこか学生服を思わせるような親衛隊の制服に特徴的な帽子を被った一人の女性
???「う~ん、そうですねー。本陣の兵力から1500をまわします。その時に全兵に弓を持たせて下さい。遠距離から一方的に敵を削ります♪」
伝令兵「御意」
ピンっと指を立てそう伝えるこの女性が、袁術軍筆頭軍師にして軍権を握る張勳である
張勳「呆気ないですね。」
張勳はつまらなさそうにそう呟いた
開戦からまだそれほど時間は経っていない
右翼にまわした騎馬隊が予想以上の速度で敵軍を蹂躙してしまったので既に勝敗が見えてしまっていた
突破された敵軍の兵士が恐慌状態に陥り、敗走する前局と、押し止めようとする後局とがぶつかりあい、味方同士で文字通り潰されあうという凄惨な状況下にあった
ただ、賊軍相手に騎馬を思いの外消費してしまったらしいのが痛手ではある
張勳「あとで楓ちゃんには説教ですね」
後退りしたくなるような怖い笑顔でそう呟いた
???「お見事に御座いますな」
張勳「………」
???「いやはやここまで一方的とは。袁術様が貴女を重く用いられている理由が分かります。」
張勳は先程までの表情を一変させ、酷く煩わしそうな顔をした
張勳「何用ですか?袁徽さん」
張勳が後ろを振り返ると、そこには齢は四十をこえているのだろう、戦場には場違いな文官服に身を包んだ白髪混じり男が共を二人連れてその場に佇んでいた
袁徽「我が軍筆頭軍師の手腕をこの目で見たく思いましてな。無茶を言ってこの場に来させていただいたのですよ」
“鬱陶しいから城に帰れこの腹黒狸親父♪”と喉まで出てきた言葉をぐっとこらえる
張勳「いくら本陣とはいえ今は戦の最中です。お嬢様の伯父である貴方様に何かあっては………」
袁徽「相手は賊軍、既に勝敗は決したも同然。おまけに我が軍は精強で、本陣には貴女の率いる親衛隊が半数以上が詰めているのです。問題ないでしょう。」
張勳は(チッ)っと内心で舌打ちをした
確かにその通りであるので反論ができない
張勳(恐らくは監視でしょうね~。最近文官の入れ替えを露骨にやり過ぎたのはちょっとアレでしたか………。まったく面倒臭いです。)
その時前方より伝令兵が陣幕内に駆け込んできた
伝令兵「申し上げます!!本隊が敵前線指揮官を討ち取りました!!また右翼が散り散りになった敵左翼を追討しながら本隊と連携を取りつつ敵本陣に進軍しております。」
張勲「こちらの左翼はどうなっていますか?」
伝令兵「敵軍が崩れだしたのと同時に前線を押し上げています。」
張勲「ならば右翼と左翼は騎馬隊で弓隊に先んじて包囲の枠を形成、本隊は歩兵に足並みを揃えさせゆっくりと戦線を上げさせて下さい。半月陣形で被害を押さえながら当初の予定通り弓にて殲滅します」
伝令兵「御意!」
兵士はその指示を伝えるべくすぐさま陣を立ち去った。
それを見届けた後、そっと息をついた。大将軍とはいえ張勲はこういった戦の経験は実はあまりない。というのも彼女は謀略や調略には長けているものの軍略というものにはあまり精通はしておらず、付け焼き刃の兵法に謀を織り混ぜてそれらしくみせているだけなのだった
最も未だに負けたことはないのだが………
そんなわけで今回も戦に勝利出来たことに対して思わず安堵の溜め息ついた。
袁徽「………?どうかなさいましたか?」
張勲「いえいえ別に。呆気なさ過ぎて思わず」
袁徽「さすがは張勲殿。仰ることが違いますな。」
かっかっかと袁徽は笑う
少し皮肉ったように聞こえたのは気のせいだろうか
袁徽「そういえば………最近人事が慌ただしいと耳にしたのですが、何かありましたか?」
“きた”と張勲は思った。いずれは尋ねてくるだろうと思ってはいたし、袁徽が陣内に態々足を向けるのはそれがらみだろうとは見ていた。だか、よもやこうも直接的に、しがも袁徽自身が探ってくるとは思ってはいなかったので、流石の張勲も少なからず動揺した。しかしそれをおくびにも出さない
張勲「"ナニ"かがあったのは事実です。まぁそれ自体は想定内でしたし、小事でもあったので内々に対応させてもらいました。気になされるようなら詳細を後程書簡に認めて使いの者に送らせましょうか?」
袁徽はほんの少し方眉をつり上げた
袁徽「事後報告は今後慎んでもらいたいですな。今回のような大幅な人事異動が行われるようなら事前に会議の場にて図っていただくようお願いします」
張勲「申し訳ありません。今後はそのように致します。では後程詳細を報告させていただきますね。」
袁徽「そのように願います。では私は城に戻らせてもらいます。事後処理は任せました」
そういい放つと踵をかえしてさっさと帰っていった
張勲「…はぁ。少しばかりやりにくくなっちゃいましたね。まぁ名簿と証拠は瑞希さんの管理下にありますし、こちらは速度を落として人材育成に注力しますか」
女性「ナナちゃん。ちょっといいかしら?」
幕をずらして顔だけのぞきこむように入れてきた一人の女性が張勲に声をかけてきた
張勲「瑞希さん。ちょうどいいところに。今後のことについて今から話し合いたい事があったんですよ」
瑞希「私の方からも美羽ちゃんのことで。でも先にそっちから聞いた方が………」
張勳「何言ってるんですか!!お嬢様に関係した話を後回しになんてできるわけないじゃないですか!!」
瑞希「………いいんでしょうけど、ナナちゃんこれだもんねぇ」
瑞希は苦笑しながらも話を続けた
瑞希「最近美羽ちゃんの近辺に目が増えたのよねぇ。しかも倍近く………。まぁ一部は猫バカの手勢だから今のところはただの収集なんでしょうけどね」
張勳「厄介なのはそこ以外ですねー。実は私も先程狸に直接釘打ち込まれたんですよ。」
瑞希「あらあら、また随分と焦ってるわね。子飼いのチビ狸が半分も左遷されたんだから当然の反応なんでしょうけど………。どうするの?」
張勳「とりあえずそちらに関しては手を緩めます。無論見逃してはあげませんけどー。今は新しく入ってきた人達を育てていくのを中心に立ち回ろうかと思ってます。」
瑞希「あまり悠長にはしていられないけれど、仕方ないわね。資料に関してはこっちで大事に保管しとくから何かあったらいつでも呼んでね」
そう言いながら瑞希はぽんぽんと張勳の頭を二、三回軽く叩いた
張勳は少し顔を赤らめながら、むぅと呟いた
そうは言いながら顔を見てみれば満更でもなさそうだった
張勳「敵わないですねー。まったく………」
瑞希「ふふっ。………あっ」
瑞希はそのまま天幕から去ろうとして、何かを思い出したようだった
張勳「?、どうしました?」
瑞希「そういえばナナちゃんは最近広まってる天の御遣いの噂について何か聞いてる?」
張勳「あぁ、あの流星云々、平和な世の中にーってやつですよね。まぁこの近くに現れるようなら即刻身柄を拘束して、使えるようなら利用する、無能なら切り捨てて有効活用しますねー。このご時世廃れたとはいえ漢王朝への叛意と捉えられかねない″天″の代理人なんて傷になりかねないですからねー。」
笑顔で、しかし彼女は絶対に守らなければいけないものを間違えずに、冷酷にそう告げた
瑞希「そうよね。ナナちゃんならそうするわね。でも美羽ちゃんなら………。」
そこで瑞希は城の方へ振り返って形容し難い表情を浮かべた
そして空に何かを見つけた
瑞希「あれ………何かしら?」
張勳「???」
張勳も空を見上げて、そして見つけた
張勳「あれ、流れ星………ですよね?」
流星はみるみるうちに大きくなり、そして城に落下した
瑞希・張勳『………は?』
読んでくださった方ありがとうございます
さて一話が出せました
頭にあることを納得のいく形で表すのって大変ですね(汗)
この調子なら完結はいつになるやら(・_・;)
あ、作者は軍事的なことには素人なので、ここおかしいよって指摘があればいただけるとうれしいです