初バトル 後編
砂煙が舞う。やがて消えるとそこには俺の姿はない。
「ほぉー、やるじゃねえかぁ」
蓮は片手を横へ振ると周りの燃えた木々は消えていった。
俺は草影に隠れながらほふく前進で逃げていた。
くそー、まさかこんな目にあうとは・・・次の作戦はどうすりゃいいんだ。
ある程度まで離れ確かめることがあった。それは俺が電撃を使えるかということだ。火の玉同様、大したことないと思われるがやってみないと分からない。
自分の手を広げ、魔力を練りこむ。ピリピリと音を鳴らしてすぐに消えた。
「やっぱりダメか・・・」
「見つけたぜぇ」
俺のすぐ後ろで蓮が笑いながら立っていた。両手にはちゃんと火の玉を構えている。
「終わりだぁ!」
二つの玉を合わせ、俺の背中にぶつけた。
「うわああああっ!!」
熱い、痛い、熱い・・・同じ言葉が脳内で連鎖する。魔法科がこんなに苦しいなんて。
「どおだぁ?!痛いだろぉ!この悲鳴、表情・・・いつになってもたまんねえなぁ!!」
不気味に笑いながら喋る。魔力が消えると俺の背中には服が破け、大きな火傷ができていた。
「くそー・・・」
全身痛ませながら逃げようとする。
「おいおい!まだ逃げるなんて無様にも程があるぞ」
蓮の言う通りだ。これ以上は情けなさすぎる・・・もう、終わりか。
「(翼!聞こえる?!)」
俺の頭で誰かの声が聞こえた。聞き覚えのある声だ。
この声は・・・三郷?
「(三郷か?!)」
「(うん、さっきの魔法はどうしたの?)」
どうしたと言われたってまあそのまんまなんだけど。
「(そんなことより、何で俺の頭の中で声が聞こえるんだ)」
「(僕の唯一使える魔法で得意なのがこの遠距離会話魔法だけなんです)」
言っちゃ悪いけどそれでFクラスなのか。
「(そうだったのか・・・俺この勝負降参しようと思う)」
「(何言ってるのさ!試合前あれだけ大口叩いてて情けないじゃないか!)」
「(分かってる!分かってるけど、けど俺と蓮の実力の差が分かった今・・・勝てる気がしないんだよ。今回は運が悪かったんだ・・・)」
「(まさか、そんなことを聞かされるなんて思いもしなかったよ。どれだけ魔法科に進みたかったかは知らないけど・・・目的を達成して終わりなの?そうじゃないでしょ?もし、この試合買ったらシュークリームいくらでもおごるよ)」
エサでモノを釣るのか。母さんも似たようなことしたな・・・でも三郷のやり方のほうがずっと好きだ!それに俺は魔法科に進んで終わるつもりはサラサラないさ!
「(その言葉・・・二言はないな?)」
「(うん)」
そしてこれ以上三郷の声は聞こえなくなった。
「終わりだー!」
蓮の火の玉は再び俺へぶつける・・・はずが、玉はだんだん薄れ消えた。そして蓮の腕は指から少しずつ凍っていく。
「な、なんだ?!」
そう言いながら無理やり離れた腕は完全に麻痺しているように見える。
「これが俺か・・・さっきまでとは信じられないな」
俺は氷の両手を降ったり、開いたり閉じたりし確認する。
「まあいいや・・・さあ、これからが本番だぜ」