初バトル 前編
「さあーっ!始まりました。今回は急遽このアルテミア国際ドームにて開催されることになりました!」
「対戦者は右から・・・滝火翼ー!」
実況者の紹介に合わせて、フィールドの中へ入る。それと同時に観客席からは地震でも起きているかと思わせる程の歓声が上がった。
「名前の通りキャンプファイヤーと二つ名?を持ち、中等部では科学科の首位で卒業したという学歴があります」
俺はこの紹介に腑に落ちる箇所があった。
愛花風に言うと「は?!キャンプファイヤーは二つ名じゃないから!あと何で魔法科在籍中の俺に中等部でしかも科学科の話だすんだよ!そりゃあ高校で初めて魔法科に進んでまだ情報はないどろうけど、せめて”期待のルーキー”的なのにしてくれてもいいじゃない!アンタは俺に科学科以外何もできないって言ってんの?・・・バカにすんじゃねえぞ!」ってな感じかな。
そんな俺のどうでもいいことを思っている内に紹介も終わり、蓮がフィールドへ入ろうとしていた。
「中等部で不良を片っ端から倒し、ついた二つ名は炎の悪魔。その名は霧覇蓮ー!」
歓声は俺の時以上に上がった。
うわっかっけー。二つ名もそうだけど紹介だって俺なんかよりずっといいじゃねえか!あの実況・・・絶対蓮推しだろ?!
「おいおい、キャンプファイヤーって随分とユニークな名前だなぁ?!科学科トップ君」
試合の始める前から苛立っている俺に蓮はさらに葉っぱをかけた。
「お前もどんなにかっこいい名前でも実力がなくちゃただの見かけ倒しだぜ?」
俺の負け嘉な一言で蓮の目つきは一瞬で敵を見る目へと変わった。
「言ってくれんじゃねえかよぉ・・・」
「おおっと!早速両者から激しい火花が散っています!この試合、どのようなことになるのか期待できそうだー!実況は双葉実がお送りします」
すると何か浮いている機会に乗った審判員が二人の間で浮く。
「基本ルールは分かっているか?」
二人は審判員に向けて軽く頷く。
「よし、それではスリーカウントで始める。スリー・・・」
客席からの声援は耳に入っていない・・・
「ツー・・・」
ただ、聞こえるのは自分の心臓の音だけだ。
「ワン・・・」
そんな今の自分を不思議に思った。
「オープン」
審判員は片手を高々と上げた。
すると俺の視界に広がった光景はさっきまでいたドームではなく、木や草が生え放題になった森林にいた。
あまりにも突然過ぎて今の現状を理解できていない。
は?こっちにも木、あっちにも木、そっちにも木・・・一体どうなってんだ?!
「心配すんな。転移されただけだ」
すぐ前に蓮がいたことを忘れていた。
「おい、転移されただけって・・・それが問題なんじゃねえか」
「ここのドームはそんじゃそこらの仕組みとは全く違うんだよ。とりあえずはこの森もあいつらが管理しているから、向こうではモニターにでも映して見れるんだろうさ」
闘技場は普通に考えて開始されてもフィールドはドームのままだ。
「んなことよりも先手で俺を攻撃すんじゃねえのかよ」
そうだった!こんな仕組みに驚いて作戦を忘れてたっ!
俺は両手を重ねる寸前で止め魔力を練りこむ。その魔力はすぐに手の間に火が生まれた。やがてその火は大きくなる・・・予定だったのが、小石程度のサイズまでしか大きくならなかった。
「あれ?!」
「ハハハッ!それで着火魔法かぁ?!実力を見せてやるよぉ!」
蓮も同じように両手で魔力を練りこむ。手の間に火は出来たが俺よりもどんどん大きくなる。
このまま待っていても大きくされるだけだ。ならこの玉をっ!
「くらえー!」
その小さな玉を投げる。蓮も同じく俺のより5倍は大きい玉を投げた。
当然俺の玉など太刀打ちできるはずもなく、逆に蓮の玉に吸収された。そして俺の方に向かってくる。
「うわああっ!」
ギリギリで避け軽い火傷で済んだ。俺はそのまま森深くに逃げていった。
くそ!くそ!くそ!作戦が全部狂っちまった。どうすりゃあいいんだよ!
「はあ、はあ・・・」
森の中で俺は息を切らして走る。すると、突然三つの火の玉が俺に向かって飛んできた。俺は三つともうまく避けるが火の玉は木に移り燃えた木々が周りを囲む。
「もう終わりかよ?滝火翼」
燃えた木々の中から蓮が現れる。両手には片手サイズの火の玉が浮いている。
「やっぱ最弱クラスがいくら吠えたところで弱いのは変わらねえって事か……これで終わらしてやるよ」
蓮は火の玉を俺に向かって投げた。