三上梓
「さっきから何考えてんの?」
「あー……誰だっけ?」
すると彼女は顔を真っ赤にして怒り出す。
「三上梓よ!同じクラスなんだから覚えてよね!」
「そこまで怒らなくても…」
シュークリームを食べ終えると席を立つ。
「ちょ、ちょっとどこに行くのよ」
「三郷んとこだよ。蓮って奴のこと何も知らなねえからな」
「霧覇蓮ね。そんなの私が教えてあげるわよ」
「三上知ってんのか?!」
「何意外みたいな表情してんのよ!あいつとは小中一緒だったから多少はね」
そろから梓から蓮のことを色々聞くことができた。
とりあえず分かったことは蓮は火の魔法を得意としてかなり不良ということ…そして怒った時には誰一人蓮を止められないってこと。
これだけで十分作戦を練れる。後は当日の調子次第だ。
また俺は席を立つ。
「あっそうだ。三上って可愛い顔してんだから怒ってばっかだともったいないぜ」
若干愛花みたいな性格だからこの先そのまま行くと、近寄り難くなるからなぁ…個人的に。
梓は今まで以上に顔を真っ赤にし、「余計なお世話だ!」と怒鳴りつけた。
「ただいまー」
なんだかんだで学校も終わり、家に帰ってきた。靴を脱ぎ捨て、リビングへ向かう。リビングで母さんがソファーでテレビを見ていた。そして俺と目が合う。
するとなぜかいきなり顔を伏せて号泣した。未だに魔法科に進んだショックがあるらしい。
俺はこんな母さんに呆れて見てられなくなり、リビングを出た。すぐ目の前にはインナー姿の愛花が立っていた。愛花は顔を赤くし、思考が停止していて動かない。俺はそんな愛花などお構いなしに通り過ぎる・・・というか、正気に戻られる前にその場を立ち去りたかっただけだ。
しかし逃げるのが遅かった。
「キャーー!」
「ギャーー!!」
愛花の悲鳴と俺の絶叫が家中に響き渡る。それが収まった頃には俺はボコボコにされ、愛花は「この変態!」と言ってリビングに入った。
ううう・・・自分が下着姿でいるのが悪いんじゃねえか。それを全部俺が悪いみたいに・・・理不尽にも過ぎるだろ。
そんなことをブツブツぼやいてると愛花が出てきた。今度はちゃんと服を着てる。
「そういえばあんた、あの霧覇蓮とやりあうらしいね。入学早々調子に乗りすぎてない?」
うっ・・・それ、俺が不良らに言った言葉じゃないか。
こんな妹に言われるからかなおさら、イラッとくる。
「知ってる?あの人、中等部では不良らを片っ端に・・・」
「知ってるよ」
愛花の説明を俺が遮ると、少し不機嫌な様子になる。
「じゃあなんでそんな勝負引き受けたのよ?」
「第一に引き受ける時はそんなこと知らなかったし、知っていたとしても売られた喧嘩は買わないとな」
俺の答えに愛花はため息をつくかのように「バッカじゃないの?」と呆れて言う。
「まあ、そう言う訳だから。夕食できたら呼んでくれなー」
俺は二階へ上がり自分の部屋に入った。
そんなこんなで気づいたらあっという間に当日になってしまった。