俺が魔法科に進むまでの歩み
はい、始まります
『科学科トップの中学生が高校で魔法科に進むそうです』
のんびり書いて行きまーす。
「はあ、はあ……」
森の中で一人の少年が息を切らして走っている。すると、突然三つの火の玉が少年に向かって飛んできた。少年は三つともうまく避けるが火の玉は木に移り燃えた木々が少年の周りを囲む。
「もう終わりかよ?滝火翼」
燃えた木々の中からまた一人の少年が現れる。その少年の両手には片手サイズの火の玉が浮いている。
「やっぱ最弱クラスがいくら吠えたところで弱いのは変わらねえって事か……これで終わらしてやるよ」
そう言って少年は火の玉を翼に向かって投げた。
――― 一週間前
「やっぱり魔法科受かったんだな」
「あ、ああ…って始めはあれだけ科学科にしろって言ってたのに都合が良くないか?」
「当たり前だろ?科学科のトップがいきなり魔法科に進むって言ったら誰でも止めるに決まってるだろ?それに翼はムラが激しいだけで魔法の才能がない訳じゃないからな」
全国の小中高には必ず魔法科、科学科と二つの学科がある。文学や芸術などは普通科という学科にまとめられており、中には普通科がない学校もある。
俺が魔法科に進みたい理由ってのは…まあ、そのうち分かる事でなぜ魔法があるのかと言うと……話せば長くなるので簡単に話そう。(実を言うと自分もほとんど知らない)
ある日、一人の学者があるきっかけで迷信であった魔法が現実にあると分かり、世界に宣言した。始めは誰一人信じなかったが様々な研究により科学では証明されず、魔法と信じる他なかった。
今では科学と魔法を応用した研究が進んでいる。おまけに魔法をスポーツの一つにまでなっているのだ。
俺滝火翼、通称キャンプファイヤー(結構嫌いじゃない)は、小学生から魔法科に進みたかったのだが両親から猛反対され最終的には『中学になるまで一度でもトップになれたら魔法科に進んでいい』という事になった。
二人とも始めの頃は無理だと思っていたのだろーが、俺の気持ちはそんな軽くはない!
寝不足になるほど毎晩の様に夜遅くまで勉強し続け……と言いたいところだがこれといって遅くまでやっていた訳じゃないし、特別な勉強方法がある訳でもない。寧ろ復習だって一時間やってるかやってないか位だ!(堂々と言える事でもないが)。
だけど小三の頃に初めて一位を取った。今まで一位だったコイツ白波大河、通称タイガー(俺より何倍もかっこいい)と出会ったのもこの時期だ。当初は敵意むき出しだったがいつの間にか仲良くなっていた。これぞ!昨日の敵は今日の友ってやつだ!
両親はそりゃあもう驚いていた…下手したら俺以上に。これで中学は魔法科に進めると思っていたが、甘かった。またしても条件を出したのだ。それは『中学卒業までトップを保ち続ける』という事だ。今回は流石に厳しいと思い、勉強時間を倍にした。
今思うとたった二時間で一位を保てるなんて思った俺はなんて馬鹿なんだ!実際本当に保てたのだが、俺の人生の運は全て使い切った気がする。
中三の最後の期末は折角だから(魔法科の)勉強を夜中までやった。
長い長い科学科生活もやっと終止符をうち、高校からは魔法科に進めるという期待を胸に両親に報告した。二人は最後の手段と言わんばかりに、小遣いを三倍にするから科学科に進めと言われた。
くそ、金で物を釣るとはなんと卑怯な…だが、俺の魔法科へ進みたい気持ちは揺るがない……わけでもなかった。だって毎月二千円もらってんのに科学科に進めば六千円になるんだぞ⁈悩まない奴は大馬鹿だろ‼
悩みに悩んだ末、結局魔法科を選んだ。母さんは泣くわ、父さんはネガティブになるわまるで世界が滅亡でもするかという程に落ち込んでいた。
だけど、一つ下の妹だけは「おめでとう」と愛想悪く言ってくれた。
滝火愛花。
見た目だけは十分美人に入るのだろうが口は悪い…しかも俺だけ。なんて奴だ
そんな愛花は小学校から魔法科だった。あの両親がなぜ魔法科を許したのかというと、愛花は赤ん坊の頃から飛び抜けて魔力が高かったからだ。
おかげで色々苦労した(今もだけど)。例えば風呂のお湯を俺の部屋にぶちまけるし、喧嘩した時は口より手より浮遊魔法が出るからなぁ…あれ?そういや俺のことにしか魔法を使ってないような。この前友達と喧嘩した時、アイツ一度も魔法を使ってなかったし……まぁ、いいか。
そんな奴だが、あの時はアイツなりに気の利かせた一言だったんだと思う。
妹のくせにと言いたかったが「(ちょっと妹が言う感じで)は⁈たった一つ年上なだけで偉そうなこと言ってんじゃないわよ‼私はアンタを兄貴だなんて思ったことないんだからアンタも私のこと妹って呼ばないでくれる⁈」なんて言いながら浮遊魔法を使うから言わないでおこうと思った。
ということで明日から晴れてアルテミア学園という魔法科ではそれなりに名の知れた高校に入学するのだ。
これからどんな魔法科生活が待っているのか……今日は眠れそうにないぜ!