パソコン部の転倒
『そう、どうもありがとう。もしよかったら、感想を書くこともできるから、そこに感想でも書いていって』
こんな返信が残されていた。
ここまで親密的に話してくれるなんて、意外に私の好感度って高いんじゃないかって錯覚してしまう。
それよりも、だ。
『あとどれくらいまでこうやって作品制作をしてるんですか?』
こういったちょっと核心に触れるような質問をしたっていいだろう。
しかし、この質問が後に、私たちの関係を思ったよりも違う展開へと運んでしまうのだ―――――
「春香ちゃん、ポスターが出来たよ!」
「ん、ありがとう!」
できたポスターは、めちゃくちゃシンプルな、なんというかパソコン部らしい感じに仕上がった。
これを学校のどこかに貼ればいいのだが。
「ポスターを貼るには、生徒会の承認が必要らしいよ」
「生徒会の承認!?」
生徒会。
部活動の管理を行い、生徒の問題を取り締まり、学校の行事で先陣を引っ張る。
とは言うものの、あまり活動をしているのをみたことがない。
というか、そんなのがあったことを私は忘れていた…。
「そうか……。じゃ、一緒に行かない?」
「ごめん。今日は用事があって、これからすぐに帰らないといけないんだ~」
「そうか。うん、分かった」
生徒会に向かうことにしよう……。
「で、私を呼びに来たわけ…?」
「うん。部活終わったんでしょ?」
「いや、確かに終わったけど……」
私は生徒会に向かう前に、茶道部の部室に向かっていた。
生徒会室へと向かうルートの途中に茶道部の部室があるからだ。
「…………まぁ。いいや。行こうか」
「うんっ」
私は優華と一緒に生徒会へ行くことにした。
「部活の勧誘ポスター?」
「はい、パソコン部の部活勧誘です」
「パソコン部…?あぁ、そういえば、この前部員が足りなくて廃部になったんだっけ」
おいおい、パソコン部の存在、生徒会でも忘れられそうになってるぞ…!
というか、しっかりと廃部だけはされてるんだな…。
「このポスターを承認してほしいんですけど」
「ん。ちょっと待って」
生徒会の人は、せわしなくさまざまな書類に何やら手を加えていた。
パソコン部とは雲泥の差がある…。
生徒会の人は、何やらハンコを持ってくる。
「このハンコのついたポスターが、生徒会承認ポスターとなるんで、新しく刷ったりしたらまた持ってきてね。稲辺春香さん」
「は、はい。ありがとうございます」
特に大した障害もなく、無事に承認されたのだった。
「特に何か言われることもなく承認されてよかったじゃない」
「うん、よかったね」
あとは学校のどこかで宣伝、そして校舎のどこかにポスターを貼っておけばいいのだが……。
「手伝ってくんない?暇でしょ?」
「誰が暇よ。どうせあんたが面倒なだけでしょ…」
「バレたか……」
隠す気なんてなかったけどね。
「こういう壁とかに貼っていけば、一年生の目には入るんじゃない?」
一年生の教室の壁に貼るという作戦。
これならば、何人もの一年生が見ていくことになる。
というか、先輩たちの時もこれをすれば、今頃廃部になんてならずに何とかなっていただろうに……。
「いやー。やっぱりこういうときに優華はやっぱり役に立つねー」
「あんたなら面倒くさがって、変なことになりかねないものね」
「そうだね」
と、他愛もない話をしながら、さまざまな場所に貼っていく。
「あとは部室前にでも貼っておいたら、ここが部室だって分かるよね」
「あぁ、それいいね。さっすが優華。そこに痺れる憧れるぅ!」
「ふふっ、なにそれ……」
雑談を交わしながら部室前へとたどり着くが……
「あれっ、先輩……」
中に先輩がいるのを発見する。
「あれが前に行ってた、辞めようとしてる先輩?」
「そう。上野先輩と尾鷲先輩だよ」
先輩たちが辞めなければ、少なくともまだこのポスターは必要ではなくなるのだが、まぁ仕方ないことなのだろう。
「じゃ、この部室に貼れば完成でしょ。私やっておくから、先輩に声でもかけてきなよ」
「おっ、優華気がきくねぇ」
先輩たちの話をしにいくため、部室へと入っていった。
「先輩」
「あっ、稲辺ちゃん。悪いけど、そろそろ帰らないといけないんだ」
「大丈夫ですよ。私もただ声をかけただけですから」
「冬香の小説の感想書いてくれたの、君でしょ?ありがとうな!」
「いえいえ。書きたいと思っただけです」
上野先輩が、いつものように私に話しかけてくれている。
尾鷲先輩は、だんまりを決め込んだまま、パソコンに向かって一心に文字を打ち続けている。
しかし、その様子は前に見たものとは少し違って見えた。
「………ッ…。……」
「先輩……大丈夫ですか…………?」
「おいおい。あまり無理するなよ…?」
先輩の様子は、一言でいえば満身創痍だった。
身体はふらふらと小刻みに震えて、髪の毛はボサボサ。
なんというか、何か余裕のない感じに見えた。
「そろそろ、休憩しろよ、な?」
さすがに心配になったのか、上野先輩が休憩をさせようとする。
しかし……。
「あと、少しだか、ら」
「駄目ですよ!休憩しましょうよ!なんか辛そうじゃないですか!」
「自分の身体は、自分が一番よく、わかってる……。だから、やる…!」
「……こいつ、こうなると頑固だからなぁ……」
上野先輩は、半ばあきらめたかのように呟いた。
確かに、尾鷲先輩は半分くらい意地で書いているように感じる。
ブラインドタッチする腕が震えているのだ。
身体に何か悪いことが起きているに違いないのに……。
「グッ……!」
「先輩!?」「冬香っ!!!!」
ついに先輩は椅子から倒れ落ちた……。
そのまま意識がなくなったため、先生を呼び、近くの病院に搬送された―――――