パソコン部の完結
なんと最終話!
夕貴ちゃんの顔から、私への敵意はなくなっていた。
「ごめん……。春香ちゃん…………」
「ううん。こっちこそ……」
どうやら優華は、夕貴ちゃんを説得しに行ってくれたらしかった。
優華曰く、「夕貴に悪いところはないから」だった。
妹思いが、少しベクトルを間違えて反応していただけだったのだ。
そして、「沙夜ちゃんにいい思い出を作ってあげよう」ということを話すと、今までの沙夜ちゃんに対する何もしてあげられないという気持ちから解き放たれたのか、目からうろこが落ちたようで私たちに感謝すらしてくれたのだ。
「とにかく……今度は沙夜ちゃんの説得だね」
「沙夜は今……たぶん家にいるよ。いつも布団にくるまってるだけだから」
「よほど辛い思いをさせちゃったみたいだね……」
「大丈夫だよ。私たちとの思い出でいっぱいにすればいいんだから」
なんと、1年生メンバー、私、優華、千夏ちゃんも一緒に、夕貴ちゃんの家に行くことになった。
大勢の方が説得できるということだろう。
「じゃ、行こう。沙夜ちゃんを私たちの仲間にしよう!!」
「「「うんっ」」」
岡崎宅はそれほど遠くない場所にある
どうやら親御さんはいないらしいが、リビングにあげてもらった。
そこには、
「漫画がいっぱい!!?」
真朝ちゃんの家のように、大量の漫画が置いてあった。
そういえば、夕貴ちゃんはこういったのが好きなんだったっけ。
「じゃ……、今から沙夜を説得しに行くよ。沙夜の部屋は二階なんだけど」
「入っていいの?」
「部屋から出てくるかもわからないし」
本当に彼女は部屋に引きこもっているらしい。
今更不安が襲う。
私たちは、彼女を仲間にすることができるのか。
「行こう!!」
彼女の部屋へと向かっていった。
「沙夜…?」
「……お姉ちゃん……?」
部屋に向かってくる足跡の音が明らかに一人のものではない。
そのため、お姉ちゃん以外の人がいると察し、少し不安げな声で彼女かどうかを尋ねた。
「……私だけじゃない…。優華ちゃんも、千夏ちゃんも……あと、春香ちゃんもいる」
「………………何をしに来たの…!!?また……また…………っ!!」
「落ち着いて…、沙夜……。大丈夫だから…」
「犯罪者家族がこんなところに来るんねえ!!さっさとこの家から出てけ!!」
私に容赦なく浴びせる罵声。
「……沙夜…………、お願い……。もう、やめようよ」
「……やめ、る………!?」
「……今、春香ちゃんに当たったとして………何になるの…?」
「………!」
「それで…………優斗さんは帰ってくるの…?」
「…………っっ」
「やめようよ…沙夜。沙夜がこんなことしても………沙夜が苦しいだけだよ!!お願い、沙夜…。立ち上がろうよ…!お父さんなら、もういるじゃん!私だって、沙夜の、お姉ちゃんだよ!!だからお願い…」
「私のお父さんを……忘れろって、言うの………?」
「違うって!! お父さんは、沙夜のお父さんは、何年経っても優斗さんだよ。でも、そうじゃない…!私たちが、沙夜のいなくなった家族との思い出だっていくらでも補える。 だから……前に進もうよ!!」
「…………でも……っ、春香、は…………私のお父さんのことも………何にも思ってなかったんだ……。それなら……殺されたお父さんが、あまりにも可哀そうすぎるじゃない!!」
「それは違うっ!!!」
夕貴ちゃんがさっきまで彼女のことを説得させようとしていたが、この言葉を強く否定したのは、優華だった。
「…春香は、自分の親がとんでもない間違いをしてたことなんて、とっくにわかってたよ。いじめられても、やめての一言も言わずに、いじめを受けてた。たとえそれが、母親からの暴力でもね」
「………いじめられてるときは……本当にしょうがないことなんだって思ってた。私が罰を受けれたいいと思ってた。でも…、やっぱりちゃんと謝らないといけないよね。………本当に、申し訳ございませんでした」
彼女の部屋の前で、頭を下げて土下座する。
彼女には見えていないけど、これが一番気持ちを伝えられるはずだ。
「……私のお父さんがやったことは、もう取り返しの着かないことだけど…、沙夜ちゃんと一緒に…、お父さんのぶんまでたくさんの思い出を作りたい」
「うん。一緒に…さ。亡くなったお父さんにも届くくらいの楽しい思い出を作ろうよ」
千夏ちゃんも、優華も、夕貴ちゃんも、そして私も気持ちは一つだった。
沙夜ちゃんと楽しい思い出を作りたい。
それだけだった。
「…………、グズッ……………………」
「沙夜のお父さん…、なんで私の家に養子にしたんだと思う…?」
「分からないよ……」
「……私がいるから……。血のつながりだけで…決めるんじゃなくて…、沙夜の幸せのために、家に養子にしてくれたんだと私は思うよ」
「……………私の幸せ…?」
「そう、沙夜の幸せだよ。お父さんの死をずっと悲しんでる沙夜より、それでも明るく、幸せに生きてる沙夜がいる方が…、お父さんもうれしいんじゃない?」
「…………本当…?」
「うん。そうだよ。沙夜は幸せになるべきなんだよ。だから…私たちと、楽しい思い出つくりをしようよ」
「……」
沙夜ちゃんの部屋の扉が開く。
「……グスッ……。私……、私……、これから楽しく生きる……。お父さんが喜んでくれるように…。精一杯生きる」
「これからは、私にもお手伝いさせてね…。こっちもそれなりのことはしないと」
「…………ありがと…………春香ちゃん」
仲直りの握手とでもいうのだろうか。
私たちは、いつの間にか、互いの手を強く握りしめていた―――――
「ねぇねぇ…!私こんな曲作ったんだけど、どう?」
「おおっ、ここの音かっこいい!!」
「でしょ?すごくない!!これをMADにしたいんだけど」
「私がやってあげるよ」
「ありがと…!お姉ちゃん」
「でも…歌詞だけが思いつかなくて」
「私がやるよ」
「春香ちゃん!助かるよ!!」
3年生の夏―――いつの間にか私たちの時間はそんなにも過ぎていた。
そろそろ受験だというのに、私たちは部室にいた。
卒業する前、部活動として何かを残しておきたいと考えた私たちが作ったのは、
私たちの曲つくりだった。
沙夜ちゃんは実はいうと、ピアノを習っていたらしく、音楽にかなり精通していた。
何回か、音野くみでの曲も動画投稿をし、再生数が10000を超えた作品もあった。
いつの間にか彼女は、すっかりとパソコン部のメンバーに打ち解けていた。
くだらない談笑で、かわいらしい笑みをこぼすようになり、いつしか笑顔を見せるような女の子になった。
私のことはいつの間にか許してくれてたようで、私の作詞にした曲も作ってくれた。
この曲のタイトルは『PC☆レボリューション』。
歌詞は私が考え、沙夜ちゃんが作曲し、夕貴ちゃんがMADを作り、千夏ちゃんと優華(実は歌がうまい)が歌う。
これは動画投稿には回さない。
その代り、永遠に私たちの宝物になった。
MADとして完成したのは、私たちの思い出として撮った写真を加工して流したもの。
とてもうまく作れていて、私たちはうれしかった。
高校の数年間はあっという間に過ぎ去っていた。
でも……パソコン部と共に作った思い出だけは、いつまでも残り続けている。
ずっとここに――――――
今まで読んでくださった方がいらっしゃったら、ありがとうございました。ちなみに次話にプロフィール完全版を用意いたします。




