パソコン部員の合宿 〈3〉
トントントントン
と、私一人でいるときはほぼ絶対に鳴り響かないであろう音が、台所から流れている。
じゃんけんで負けた私と千夏ちゃんが、カレー作りをする羽目になった。
私の役目は、肉を焼くこと、そして煮込むこと。
私の包丁さばきが危なっかしくて見てられないらしい。
私は男子か。
いまどき、男子でも料理くらいできるらしいから、それ以下だろう。
ま、いまどきはコンビニだってその辺にいくらでもあるのだから、別に料理ができなくたっていいのだ。
「あとは煮込むだけだね」
「うへぇ。本当に人参入れたの…?」
「…………だって、優華が言ってるからねー。好き嫌いはだめだって…」
「人参ってさ、おいしくないんだもん…。変な味するし」
「変な味かぁ。そういや、私もトマトが嫌いだったな」
「嫌い『だった』?克服できたの?」
「うん。克服したよ。優華のおかげかな」
私のトマト嫌いは、優華が作ったとある料理で直ったのだ。
「トマトが嫌い?そんな子供みたいなこと言ってないで、ちゃんと食べな」
「……嫌いなものは嫌いなんだもん……」
「もうしょうがないなー」
そういうと彼女は、食事を終え、再び台所に向かう。
そして数分すると……。
「ほい。完成」
「なにこれ?」
彼女が出してきたのは、全体的に赤い色をした、まったくなんなのか想像もつかない料理だった。
だが、とてもおいしそうで、私の食欲はおどろくほどそそられた。
未だに、あの料理がなんだったのかは知らない。
でも、それがトマトを使った料理だということだけは味で分かった。
とてもおいしかった。
あれのおかげで、嫌いなトマトが好きになったのだ。
「なんだかんだで、私はいつも優華の手助けばかり受けちゃってるんだよね」
「……二人とも、本当に親友ってかんじだもんね」
「そんなことないよ。優華。本当に世話焼きだから……」
彼女が私を助けてくれたことは、数えきれないくらいの量ある。
それに比べ…………はは、私は何か彼女にしたかなぁ。
「二人とも、本当に仲の良い二人だなって思うもん。うらやましいよ」
「うらやましいって…。そんな大層なもんじゃ…」
「そうかなー。ああやって、何事も隠さずにズケズケと言い合える仲の子がいるって、結構大事だよ」
「ズケズケって…。向こうがあまりにもストレートに言ってくるから」
彼女って、特に私には、思ったことをそのまま言ってくるのだ。
おかげでこの前喧嘩したし。
まぁ、あれは私も悪いのだが…。
「でもそれは、優華が春香ちゃんに心を許してるって証だよ」
「それならありがたいんだけどね」
優華は、私のことをそんな風に思ってくれているのだろうか。
だとしたら、すごくうれしい。
「まぁ。優華には小学生のころからお世話になってるしねー」
「やっぱり、昔からの仲って大切だよね」
「何の話してんの?」
っとそこに、夕貴ちゃんが割り込んできた。
「幼馴染っていいなーって話だよ」
「へぇ。誰が幼馴染なのー?」
「私と優華だよ。あれ?言わなかったっけ?」
「うん。聞いてないよー。そっかぁ。二人がねー。だから、優華ちゃんさっきからこの部屋、まるで自分の家みたいに慣れてたのか」
「それはそれでどうなんだよ」
ちょっとあとで優華と話をつけないとなー。
もう夕飯の時間にはいい頃合いだ―――――
「はぁ。食べた食べた」
夕食はやはり6人だったからか、女だけでも鍋一つをきれいに平らげた。
あとは入浴とか遊ぶとか、それだけだが……。
「ねぇねぇ。優華と春香ちゃんてさ、いったいどれくらい仲良いの?」
「「はぁ!?」」
「あぁー、確かにそれ気になるかもー。いっつも二人で帰るってるしー」
「この家だって、よく泊まったりしてるんでしょ?」
「もしかして、行くとこまで行っちゃいました?」
行くとこまでって……。
女二人でどこまで行くというのだ。
だいたい私たちは…
「小学生のころから毎日同じように帰ってるんだから、むしろ一緒に帰ってないほうが不自然だもん」
「そうそう。だいたい、女の子同士なんだから、泊まったりしたって問題はないでしょ」
二人そろって反論するのに、さらにメンバー全員が追い打ちをかける。
「だってさー。小学生のころから、二人ずっと仲良しなわけでしょー?なんかアヤシイー」
「アヤシイって何よ!?ただの親友よ!親友!」
「本当に『ただの』親友ー?」
なんだこれ。
まるで修学旅行の深夜のノリだ。
好きな人を聞いていくみたいな状況の中、
「だーーーー!!もうっ!結局何が言いたいの!あんたたちは!!」
「まるで夫婦みたいだなーって」
「夫婦じゃないー!!ただの幼馴染だから!!」
私たち二人の顔が赤くなっていく。
別に意識したわけじゃないが、なんていうか、こういう扱いを受けるのは恥ずかしい。
「「もうっ」」
ほらもう……ちょっと優華と視線を合わせにくくなっちゃったじゃないか…。
さて、そろそろ深夜なのだが―――――




