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PC☆レボリューション  作者: ポーラ・ポリタス
第一章 ~亀山千夏~
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新入部員が入ってきたけど質問ある?

「へぇ~。そんなことが……」



「もう、突然でびっくりしたよ」



放課後、いつもの友人と帰る中、先ほどあったことを喋っていた。


友人の表情はなんとなく、憐れみの表情を醸し出していた。



「ま、おかげで今日は暇じゃなかったっていうのはよかったかな」



そう、あれからずっと、同じ、「歌ってみた」の動画を調べていたのだ。


たくさんの人が同じ歌を歌っていたため、私はその曲を覚えてしまっていた。


頭の中にはさっきからその曲がエンドレスに流れ続けている。



「あ、そういえばさ、優華はさ、『音野くみ』って知ってる?」



ずっと同じ曲を聴いていた時、この曲の元ネタであろう曲を見つけたのだ。


それを歌っていた?のが、「音野くみ」だったのだ。


どうして歌っていた「?」なのかというと……



「なんかさ、確かに歌ってるんだけど、人の声の感じじゃないんだよね~。なんていうか、機械音?っていうか?電子音?みたいな感じの声でさ~」



「あ~、『音野くみ』かぁ~。なんか聞いたことあるかも~」



彼女もよく知らないのか、ただ聞いたことはあるらしい。



「そういうの、もっと詳しそうな人がいるといいのにね」



「だねぇ」



その後は、特に他愛もない話をして帰っていった。


しかし、この歌ってみた動画を見ていたことが、パソコン部の活動を支えることになる。










「やっぱり今日も暇だー!」



いつものように部室に入る今日。


しかし当然のごとく、部員は私以外に現れない。


そしてすることもなく、また暇な時間が続く。



「前見ていた動画でも見るか」



あれからいろいろ調べたところ、どうやらこの歌ってみた動画は、かなり多くの人がやっているジャンルで、彼女よりも人気を出している人も多い。


彼女の人気は、せいぜい中の下程度。


だと思う。


でも、なぜか私はこの歌声に惹かれていた。


今度は昨日と違い、ためらいもなくクリックをした。



『~~~~~~~~♪』

「~~~~~~~~♪」



いつの間にか私もこの歌を覚えてしまったようで、口ずさんでしまっていた。


うん、なかなかいい感じだ。


自分はあまりカラオケとかにも行かない性格だから、どんな歌声かはよく知らない。


だが、なんとなく歌えている自信はある。


動画の彼女ほどではないのだろうが……。



「失礼しまーす」



「えっ!?」



突然、部室の扉が開いた。


慌てて右上のバツ印を押し、声が聞こえた方を向く。


すると……



「えっと、昨日は、ごめんなさい……」



「あっ」



昨日、突然叫んで入ってきた、あの女の子がいたのだ。


昨日と違い、叫んで入ってこなかったし、落ち着いているようにも見える。



「大丈夫よ?気にしなくても」



「で、でも、迷惑、かけちゃったと思うから…」



ちょっと泣きそうな表情を見せる彼女。



「そんなことないって。昨日はむしろ暇だったから、ちょうどいい刺激になったくらいだし」



「でも、何かここでやってるんでしょう?昨日も今日も、いるくらいだし」



彼女はどうやら、私のことを気にしてくれているようだった。


しかし、そんな心配ご無用なのである。



「うん、一応パソコン部っていう部活動なんだけどさ。部員が誰も来ないのよね。いつも」



「えっ、パソコン部?そんなのあるの?」



彼女はどうやら、パソコン部の存在を知らなかったらしい。


そういえば、部員募集の期間中、パソコン部は表立った広告活動をしていなかったと思う。


私がこの部に入ろうとしたときも、そんな部知らないといった生徒もいたくらいだ。



「あるんだよー。5人くらい部員がいるはずなんだけど、誰も来ないんだよねー。特に部活動らしきこともしていないからいいんだけどね」



他の部のように、何かのコンテストに応募するわけでも、何か大会があるわけでもないし、第一パソコンにそういうものがあるかどうかなんて知らないし。


ま、あまり他人には関係のないことか。



「ま、立ち話もなんだから、ゆっくりしていきなよ。別に好きなことしてていいから」



「あ、ありがとう」



そういうと、彼女は隣に座ったのだった。










「ねぇねぇ、そういえば、この前はどうして飛び込んできたの?」



「えっ」



私がたまたまぶつけた疑問。


彼女との最初の出会いだったわけだが、あれは私にとってかなり衝撃的な事件だったのだ。



「あ、あれは、その……」



「あのときは何も言えなかったけど、あれすごくびっくりしたよ~。それに、この動画のタイトルまで知ってたみたいだしさ~。なんで知ってたの?」



彼女の顔がみるみる赤くなる。


どうして赤くなる必要があるのか。


あの時のことを思い出して赤くなっているのだろうか。



「恥ずかしいから、あまり他の人にこういうことは言わないんだけど……」



「うんうん」



「実はこの歌を歌ってるの……私、なの」



「えっ」



「この動画はね、私が歌って投稿した歌なの」



「マジで!?」



この歌を歌っている人は、たくさんいる。


そんななかで、たまたま私が選んだ動画の人が、今目の前にいる…?


なんというか、偶然過ぎるだろ。



「で、あのとき、突然、私の動画を再生している人がいたんだって嬉しくなったの。でも、それと同時になんか恥ずかしくなっちゃって……」



「ああ。それで思わずこの中に飛び込んできちゃったと……」



なるほど、それなら分からなくもない。


自分が書いた作文を勝手に読まれて、そのうえ感想まで言われるとか、そんな感じの恥ずかしさだろう。


私にもそれがとんでもなく恥ずかしいことだってくらいは分かる。



「ごめんね、恥ずかしいことさせちゃって」



「いいえ。動画を見てくれたのは、うれしかったし」



しかし、彼女の顔は真っ赤なままだ。



「ねぇ。私、実はもうファンなんだよね。よかったら、これからも仲よくしてくれないかな?」



「えっ!!」



さらに真っ赤になっていく彼女。


彼女の感情がモロに出ているのが、なんとも微笑ましい。



「ついでに、部活動やってないなら、パソコン部に入部してくれるとうれしいな。いろんなこと教えてほしいし」



「わ、わわわわ、わ、私でいいなら…………」



ものすごく恥ずかしそうにしていたのだが、彼女は承諾をしてくれた。



「じゃ、自己紹介するよ。私、稲辺春香って言います」



「私は、亀山かめやま 千夏ちなつです。この動画とかみたいに投稿するときは、『りのと』ってハンドルネームを使ってます」



「よろしくね?」



「うんっ」



今日から、新たな仲間、千夏ちゃんが入ってくれた。


彼女との出会いが、私との運命をいろいろと変えていくのだ……。

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