パソコン部の和解
いよいよこの章が完結します。
次の日。
優華と共に朝食を取った後、上野先輩と集まることになった。
集合場所は学校近くのファミレス。
「おう、来たね。春香ちゃん」
「おはようございます。先輩」
先輩が座る席の前に座る。
先輩とは向かい合う形だ。
「とりあえず飲み物だけでも頼むか」
「はい。私、紅茶がいいです」
「じゃ、俺オレンジジュースで」
すぐに注文を取り、先輩との話し合いが始まる。
「問題は、どうやって冬香を説得するか、だよな……」
私は昨日、優華の言葉を聞いて考えが変わっていた。
先輩にちゃんと伝わるかどうか……。
「せ、先輩…」
「うん?どうした?何か考えがあるのか…?」
「は、はい。一応」
私はおずおずと話始めた。
「なるほどな……。あいつの無理をやめさせるんじゃなくて。支える…………。みんなで…………」
「そうです。必死に頑張ってる先輩に、何か力になれるようなことをしたいです」
前と意見がガラリと変わってしまっているのに、先輩はその意見を聞いてくれていた。
先輩はすごく優しいな。
「でも……俺だって今まで必死に支えてきたつもりだったんだがなぁ」
「は、はい。そうですけど…これからは私もお手伝いしたいんです。何か具体的に!」
一人より二人。
二人よりも三人。
多い方が良いだろう。
「…………いいな。じゃ、一回バイト先にでも行ってみるか」
「バイト先ですか…!?」
そういえば、先輩が働いている姿を実際に見たことはなかった。
「はい。いいですね!行きましょうか!」
ファミレスの会計を済ませ、ファミレスから出た。
「ここだよ。バイト先は」
「へぇ~」
バイト先、というのは、とあるファーストフード店だった。
有名なMの文字が印象的なハンバーガーショップ。
「先輩、こういうところで働いてるんですね」
「ここは、俺の親父が経営してるからな。冬香も働くのに特に支障はないらしい」
なるほど。
先輩たちに親密な人が経営にいるところ……いわば縁故だ。
「じゃ、今日はバイトしてるはずだから、中に入るか」
「は、はい」
ハンバーガーショップの中に入ると、何人かの人が注文を受けていた。
「はい、いらっしゃいませ!はい、チーズバーガーのセットですね!お飲み物はどれにいたしますか…?」
「じゃあ……コーラで」
「かしこまりました。こちらにズレてお待ちください」
「おっ、冬香、やってんじゃん」
尾鷲先輩がやっていたのは、接客。
奥にも商品を作る仕事があるが、どうやら接客を尾鷲先輩が担当しているのだ。
「今日はどうやらもうちょっとでバイトが終わりそうだから。あいつがバイト終わるまで待とうか」
「はい」
とりあえず、上野先輩が注文に出ていき、私が適当な席を確保したのだった。
「冬香。バイト終わったのか…?」
「……うん」
バイトが終わった尾鷲先輩は、上野先輩に案内され、席に着いた。
しかし、そこに私がいるのを知ると、面倒そうな顔に変わる。
「何…?私に何の用があるの…?」
「あ、あの……」
「おい。冬香、そんな言い方したら可哀想だろ」
「何よ。最近この子の味方ばっかりして」
「そういうわけじゃないだろ!」
「じゃあどういうわけなのよ!」
二人の喧嘩をよそに、私は言いたいことを必死に口に出そうとした。
「あの…先輩。先輩のこと……、上野先輩に聞きました。私…昔、いじめられたことがあって。そのときのことを……先輩の目を見て思い出しちゃったんです」
「…………」
「心を壊すのはよくないから。それをやめさせるってことばかり考えてて……先輩のことなんか無視して、私の意見ばかりを押し付けようとしちゃいました」
私の最大の間違いはこれだろう。
「だから……本当は先輩の意見を尊重しなきゃいけないんだって。私たちは、それを支えなくちゃいけないんだって。そう考え治しました」
「あぁ。俺もだ。これまで以上に、お前のためになることをしたい」
「………………っ」
だんだんと、先輩の視線が落ちていく。
顔を隠そうとしているようだ。
「お前がどんなに大変か。俺たちも知って、そのうえで、お前の心の支えになるっ。約束だ」
「私も!」
小学生のときにやった…、小指を出して指切り。
上野先輩と私の小指が出される。
「ありがとう……。でも……」
「俺たちは自分たちの意思でやってるんだ。お前が意地になったって、やるって言ったらやるからな」
「上野先輩だけじゃなく、私もできたら何かお手伝いしたいです」
「……………………わかった。感謝するよ。ありがとう」
尾鷲先輩の指も、私たちの指の前に差し出され、指切りが交わされた。
「そういえば、稲辺ちゃんはなにして手伝いするの…?」
「…………私。先輩の執筆活動を手伝いたいです」
「執筆活動…?」
「そうですっ。先輩、小説書くの、好きですよね…?」
「う、うん」
「私も、先輩と同じように、いや、先輩の代わりに、小説を書きたいですっ!」
「……私、あれくらいしか趣味無くて……でも、やめなきゃならなくて、少しさみしかったんだ。稲辺さん、引き継いでくれるってこと…?」
「や、やっぱりご迷惑ですか…?」
「ううん。お願いしたい」
私と尾鷲先輩とで握手が交わされる。
ようやく、私と先輩の間の、大きな段差がなくなった、気がする。
「へぇ。で、ノートに小説の下書きを作ってるってわけ……」
「うん」
「勉強もそんな感じで頑張ればいいのに」
家に帰り、さっそくノートを買い、小説を書こうと……。
「どんなのを書いていいか分からないっ!!!」
さてさて…これからどうなるのか。
思ったよりあっさり和解した二人。これからはパソコン部正規メンバーが4人です。




