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PC☆レボリューション  作者: ポーラ・ポリタス
第二章 ~尾鷲冬香~
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パソコン部の過去 ~稲辺春香の場合~

「先輩……大丈夫ですか…?」



「う、うぅ」



先輩の状態はあまり思わしくないのか、少し顔が暗い。


やはり、疲労が溜まった結果だ。



「お前、無理のしすぎだよ。ちょっと休まないと。今度はもっと体調が――」


「私のことはどうだっていい……。私が頑張れば、私が耐えれば、家族を養えるんだから―――」



頑張れば―――――


耐えれば―――――


その言葉が、私にはひどく引っかかった。



「頑張っても、耐えても、先輩が体を壊したら意味がないですよ!?無理しちゃダメです!!」



そのせいか、普段ならこんなに言うはずがないのに、私は先輩に発言してしまった。


普段ならきっと、無責任に「頑張ってください」としか言わない、というか、関わらないはずなのに。



「何よ、あなた。他人のくせに、分かったように口を利かないで」

「おい、冬香!」



「体を壊したら意味がない…?体を壊すくらいやらないと、私の家庭事情的に暮らしていけないの。それなのに、あなたみたいに、何もせずにただパソコンに触ってるような奴に言われたくない」

「やめろっ、冬香!」



尾鷲先輩が、私をまるで敵のように罵る。


上野先輩は必死に止めてるが、悪い、というか、受け入れられないのは当然だろう。


一人暮らしならともかく、祖父祖母妹弟まで養うとなると、高校生ではなかなかうまくいくはずがない。


彼女みたいに、必死に自分を押し殺してやるしか方法はない。


でも、私は、彼女の身体と、『心』が心配でならなかった。



「耐えればいいなんて、そんなふうに自分を押し殺したりなんかしたらダメなんです!」



「あなたに何が分かるの?毎日深夜遅くになるまでバイトしたことあるの?テスト期間、学校が早く終わるから、昼間からずっと深夜まで、いくつものバイトを全部やったことあるの!?」



想像以上に壮絶だった。


バイトをするなんて、1こでも私ならできないと思う。


先輩の心の殺し具合が、想像を超えている。



「私たち家族は、こうやってしないと生きていけないの。私の家族を殺すつもりなの…?」



「そんなこと言ってません!ただ、先輩が、耐え続けるのに、心がもたないって思ったんです…!」



「心…?」



さっきまでの怒り心頭な表情から、私の言っている言葉を聞いた途端、理解ができない、そういった表情に変わる。



「心がまだ壊れてないときはいいんです。でも、もし先輩の心が壊れたときに、先輩が、どんな苦しい思いをするかって思うと―――」



「意味が分からないわ。もういい。あなたと話すだけ無駄。今日は二人とも遅いから、もう帰って。どうせ今日は入院になるんだろうから。夕食はおばあちゃんに任せるわ」



「………………ああ。大事にな」



「失礼、しました…」



先輩の不機嫌な表情が、最後まで変化することはなかった―――――










「稲辺ちゃん」



「はい、なんでしょう?」



「さっきはどうしてあんなこと言ったんだ?さっきも何か取り乱してたし。心の話は、俺にもなんのことだかさっぱりだったぞ?」



「……さっぱり、ですか?私、人に何かを伝えるのって苦手なんですよね。きっと先輩にも、ちゃんと伝わらなかった……」



さらに落ち込んでしまう私。



「よかったらさ、どういうことなのか教えてくれ。もしあいつに何かあったら、俺も悲しくなるからな」



「上野先輩がそういうなら……ちょっとそこの公園のベンチで話しましょう、たぶん長くなりますから…」



先輩に、私は、話をする決意をかためた。











時は少し遡り、冬香が病院へ搬送された直後。



「春香は病院に付き添ってっちゃったし。私はもう帰らなきゃね」



特に尾鷲先輩との接点がなかった私、長野優華は、仕方なく、部室に張り紙を貼った後、部室をあとにしようとする。


すると…。



「あれ?部室開いてない!?」



一人の女の子が、パソコン部の部室にやってきた。


1年生である彼女だが、おそらくパソコン部部員だ。


1年生の部員と言えば、きっと彼女だろう。



「えっと。亀山千夏さん、ですか…?」



「えっ…!は、はい、そ、そうですけど…!」



彼女は緊張した様子で肯定した。


私は彼女のことを知っているのに、彼女は私のことをあまり知らないのだから、当然と言えば当然なのだが…。



「私、稲辺春香の小学校からの同級生なの。今日もパソコン部の張り紙はるの手伝え―って言われたものだから」



「あっ、そうなんですか…!?えっと」



「長島優華って言います。よろしくね?千夏さん」



「は、はいっ。よろしくお願いします、優華さん」



「優華でいいよ。春香もそう呼んでるし」



「分かった。よろしく、優華。私のことも、千夏って呼んで構わないからね?」



まだ緊張した様子が残る彼女は、どうやら春香のツボをついたのがよくわかるようにかわいらしかった。



「で、どうして部室が開いてないの…?」



「それが、尾鷲先輩?が突然倒れたのよ。それで、春香が一緒に付き添いで病院まで行っちゃったから、たぶん今日はもう部活はやらないだろうね」



「えっ、大丈夫、かな?」



尾鷲先輩は、春香がやたらと気になっていた先輩だ。


なぜ気にしているのかはよく分からないが、あの無気力の塊である彼女の注目の的になるのは相当な何かがあるのだろう。



「だから、もう今日は帰りましょう?先輩のことは、明日にでも春香に聞けばいいし」



「それもそうだよね。なんなら、一緒に帰りましょう?小学生の時の春香ちゃんの話とか聞きたいし」



小学生の時の春香。


そういえば、千夏は、春香のことをまだ数日間しか知らないのだ。


でも、最近春香と驚くほど仲のいいのは、千夏しか知らない。


そもそも春香は、女の子の付き合いを、あまり好まない。


無理に団体で行動したりしないし、なんだったら食事とかも一人で黙々と食べることもある。


春香は、そういうところまで無気力で面倒くさがりなのだ。


だから、私や千夏のように、面と向かって仲よくなれる子はそういない。



「春香の昔の話聞きたいの?そんなに面白いものじゃないよ?」



「だって私、春香ちゃんともっと仲良くなりたいし!!………………それに、春香ちゃん、時々何かを隠してるみたいだし」



私は純粋に驚いた。


春香が他人と接するのがあまりないのと同時に、実は、他のクラスメイトも、あまり春香と接したりしない。


恐らく春香が何らかの寄せ付けないオーラを出しているのも原因だろう。


それなのに、彼女はそこに気が付いたのだ。



「春香ちゃんって、なんか、時々影があるように見えるし……」



「……分かる?」



「うん。最近、尾鷲先輩の話題になると、そんな感じがするよ」



千夏は、明らかに確信を得ていた。



「―――――分かった。ちょっと話が長くなるから、歩きながらだけどね」



「―――――うん、なんでもいいよ」



春香と優華が、過去を告白し始めたのだった。

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