表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

五話

「あの……これからどうするんですか? 勇者様」


「まずその勇者様って呼ぶのをやめろ」


街中

俺とアリアは一緒に街を歩いている

道中他の人たちからの視線が痛いがそこはもう割り切ろう

郷に入れば郷に従え。これがこの世界の常識なんだから


「しかし……闇の勇者様は私たち黒髪を救う存在だと親に言われてましたから」


どんな存在だ


「その闇の勇者と俺は違うんだ。だから勇者様はやめろ」


「では……ショウ様で」


あまり変わらないだろ

いや、これでもこいつの中で譲歩したのか?

……まあ名前で呼ばれてるからまだましか


「じゃあいいよそれで……。で、どうするかだったな」


当面の目標は考えている


「仲間を集める。同じ志を持った仲間をな」


かと言って誰でも仲間にするわけではない

信用ができて戦力になる奴らを仲間にする

その見極めはまあ……勘だ


「でしたら、東の国に行ってはどうですか?」


「東の?」


「はい。ここ、アリスベルグから東にジャポネと言う国があるんですけど、そこは比較的黒髪が多いんです」


「へえ……」


ジャポネ……ね

ジャパンを少し崩したのだろうか

その国がもし日本をモチーフに作られてるとしたら確かに黒髪は多いだろう


その時にアリアのお腹からのんきに腹の虫がなる


「はわわわ。ご、ごめんなさい!」


慌ててお腹を押さえるアリア

顔が赤くなっている。恥ずかしいのか? 恥ずかしいのか

そう言えば昼飯を食わず脱走したんだ。ただでさえ少ない飯を食えなかったんだから腹の虫もなるだろう


「まずは何処かで腹ごしらえか」


「あ、 でもお金が……」


アリアのセリフを俺の手が遮る

その手には通貨の入った袋が握られている


「え……?」


「出る時に奴隷商の腰にぶら下がってたからくすねた。いくら入ってるかはまだ見てないがな」


そう言って袋の中を確認する

なかみは銀貨ばかり。枚数はおよそ30枚と言ったところか

銅貨一枚が100円だから、ええと……


……30万。こんなのよく持ち運べるな

奴隷商には恨みしかないがこればかりは礼を言っておこう

会う機会があればだが


「これだけあればどこでも食べれるだろ。何処がいい?」


「あ、いえ。私は何処でも」


何処でもと言われましても

俺はこの世界の初心者なんだが

何処で飯を食えるか以前に何が食えるのかがわからない


そんなことを考えているとアリアの視線が横を向いている

俺も視線の先を見てみると、何やら屋台をやっているようだ

屋台には後丁寧に日本語で「焼き鳥」とかかれていた

……この世界が本当になんなのか考えたくなる


「……あれ食べるか」


「え!? そ、そんないいですよ! ショウ様の食べたいもので!」


「じゃああれが食べたい。これでいいだろ」


一体何を遠慮してるのだろうか

お腹が空いてるのは俺も同じだ。何か食べないとそろそろ腹の虫がなる


アリアも止めなくなったので俺は屋台で焼き鳥を買うことにした


「おっちゃん、焼き鳥……そうだな、10本くれ」


「あいよ! ……って、黒髪か。銅貨10枚」


元気な対応から一変、俺の髪をみるや無愛想になる

しょうがないことだと思いながら俺は銀貨を一枚取り出す

お釣りが銅貨90枚か……

銀貨と銅貨で別々の袋を用意しといた方が良さそうだな


でももちろん今はそんな袋は持っていない

俺はやむなく銅貨90枚を受け取り同じ袋に入れる

そしてタレに浸かった焼き鳥を10本受け取り屋台を後にする


アリアに焼き鳥を半分渡すと何故か申し訳なさそうな顔をしていた


「す、すいません。買ってもらったりして……」


「いいよ、俺も食べたかったし。と言うかそもそも俺の金じゃないし」


て言うか申し訳ないならちゃっかり食うなよ

アリアはさりげなく俺が渡した焼き鳥を食べていた

まあ別にいいんだけどさ


まずは仲間を集めるために東の国か

何にしても長旅になりそうだな

もしかしたら途中で強い魔物に会ったり盗賊に襲われるかもしれない

出発の前にレベルを少しあげておくべきか


「となると次は装備か……」


そう言ってあたりを見回すと、幸いにも両刃の剣が交わっている看板を見つけた

店の前までいくと名前はなかったが、店内をみるにやはり武器屋のようだ

店主であろう厳ついおっさんがタバコをふかしながら新聞を読んでいるのがよく見える


「おじゃましまーす」


嫌な態度をされるのを覚悟に店のなかにはいる

アリアも俺の後に店に入ってきた

店主は俺を一瞥しただけでまた新聞を読み始めてしまった

まあ嫌な態度されるよりましか


「よし、アリア。お前にも戦ってもらうから好きな武器を選べ」


なるべく安いものを、とは言いますまい


「え……でも私」


「戦えない、か? 俺も戦えないから二人とも武器を買うんだよ」


生憎何処かの御都合主義みたいに剣道を習ってたりチート能力はもらってない

貰ったのはこの幻惑スキルだけだ

そんな状態で他人を気遣う余裕なんて皆無なわけで


「というわけで、選べ」


「なにがというわけなのかわかりませんが……わかりました」


「おい小僧」


アリアと話してたら店主のおっさんから声をかけられた

振り向くと相変わらず目線は新聞に向いている

人を読んで顔を合わせないとは失礼だな


「何か? 言っておくが冷やかしじゃないからな」


「んなこたぁ分かってる。お前とその子の武器、俺が見繕ってやろうか」


「…………は?」


ちょっと待て、俺は今スキルを使ってないよな

ということは当然、あの店主には俺たちが黒髪だとわかってるはずだ

なのになんだこのサービスは


「ふん、勘違いするな。俺に息子がいて、そいつが黒髪で世間からはぶられていた。終いにゃ自殺、だから黒髪を放っておけないだけだ。……あいつみたいな奴を二度と出さないためにな」


ふーん……

ちなみに言っておくが店主の髪の色は茶色だ

地属性の茶色

その息子が黒髪って言うことは髪の色は遺伝じゃないらしい

そこら編はヘルプにも乗っていなかった

無駄に長いくせに


店主は新聞をたたむと立ち上がり、適当に剣を二本選んで投げてきた

一瞬なんの嫌がらせかと思ったが鞘に入っていたので難なくキャッチ

俺はいわゆる片手剣。アリアの方は短剣だ


「お前らが剣を握ったことがないのはみればわかる。まずはそれで慣れるんだな。二つで銀貨18枚だ」


本職と言うのは見るだけでわかるのだろうか

まあ引きこもりと少女の組み合わせじゃ、そう思うのが普通か

俺は袋から銀貨を18枚取り出しおっさんに渡す

剣二本で18万か……剣なんて買ったことがないから高いのか安いのかわからないな


「じゃあな、世話になったよ」


俺は鞘に収まった剣を腰にさし、店から出ようとする


「小僧」


突然呼び止められて振り返る


「……死ぬなよ」


「だったらもっといい剣寄越せ」


どうも辛気臭い空気は嫌いなのでつい店主の言葉にぶっきらぼうに返してしまった

まあいい。何にせよ武器は手に入った

これからの生活費と考えると残り銀貨10ちょっとは妥当なところだろう

あとは定番の薬草などを少し買っておくべきか


「あ、あの……良かったんですか? 私結局買ってもらってるんですけど」


アリアはもう少し自己主張したほうがいいな

これでも最初の頃に比べたらマシになったが


「お前にも戦ってもらうんだから武器は必須だろう」


そう言って無理やり納得させる

別に戦闘要因じゃなくて料理などの生活要因でもいいが、ぶっちゃけそれは宿屋に行けば住む

それに何度も言うがいざという時守れる自信がない

せめて自分の身を守れるくらいには強くなってもらわねば


戦うことが不安なのかアリアの顔が暗い

年は13、4歳。俺と対して違わないが幼い分一年の差が大きい

日本で考えればまだ義務教育中だ


「ま、できる限り守ってやるから安心しろ」


泥舟に乗ったつもりで、と心の中でつけたしてアリアの頭を撫でる

手を離すとアリアは顔を赤くして俺が撫でた部分に自分の手を重ねた

さすがに頭を撫でられるのは恥ずかしかったか?


俺はメニューウインドウを開いてステータス画面にする


黒崎翔/Lv1

装備/スモールソード

スキル/幻惑スキル


アリア・ラーン/Lv1

装備/ダガー

スキル/なし


アリアのステータスも表示されている

さっき買った武器はスモールソードとダガーなのか

どちらもゲームの序盤で定番の武器だな

それ以外に特に変化はない


次にスキル画面に切り替える

相変わらずの白黒。だが今回は少し変わっている


「なんだこれ……剣術スキル?」


何気なくそのアイコンをタップする

「剣術スキルを習得しました」

その文字が画面に浮かび、剣術スキルにはLv1が浮かび上がっていた


俺は一旦画面を戻し、ステータス画面にする


黒崎翔/Lv1

装備/スモールソード

スキル/幻惑スキルLv1 剣術スキルLv1


アリア・ラーン/Lv1

装備/ダガー

スキル/なし


剣術スキルが増えている

剣を装備したから条件を満たしたってことか

でもアリアにも短剣用のスキルがあるのだろうか

俺は一旦ステータス画面から戻す


「アリア、新しいスキルとか何かないか?」


「え、スキル……ですか? 確認してみます」


そう言ってメニューウインドウを開く動作をするアリア

だが俺にはただ指を動かしているだけにしか見えない

メニューウインドウは他人に見られないように設定されている……らしい

ヘルプにそう書いていた気がする

でもまさかパーティメンバーでも見れないとわ


「あ、ありました! えっと……短剣スキル?」


やっぱりあったか


「よし、それじゃあそれを習得するんだ」


「は、はい……」


アリアが指を動かしたのを確認して再びステータス画面に切り替える

俺のステータスはもう飛ばしておこう


アリア・ラーン/Lv1

装備/ダガー

スキル/短剣スキルLv1


よし。ちゃんと習得されてる

このスキルがどれだけ役立つかはわからないけど少しは戦闘が楽になるだろう


これで準備はできた

あとは薬草か何かを少し買えば大丈夫だろう

感想、誤字脱字報告、アドバイスなどお待ちしております

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ