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四話

翌日

奴隷商が昼飯を持ってくるのを待つ

脱出の手口はこうだ

昼飯を持ってきた奴隷商をおりを開けた瞬間気絶させる

そのまま集団逃亡し、俺がスキルを使って見張りに見つからないように外に出る

とてもシンプルな作戦だ


問題は俺のSPが脱出するまで持つかどうか

見張り一人にスキルを一分使用するとして相手にできるのは30人まで

それ以上になったらもはや力ずくだ


「…………きた」


遠くから足音が聞こえてくる

今までは飯が食べられる楽しみがあったが、今日は脱出できるという極上の楽しみが待つ足音だ


奴隷商が牢の前にきて腰から鍵を取り出す

そして鍵穴に差し込み、扉を解錠して開く


「今だ!」


俺が合図すると、おっさんが後ろから奴隷商の首を絞める

突然の出来事に奴隷商は昼飯の乗った皿を落とし、首を絞めているおっさんの腕を話そうとするが、おっさんの方が力は強いらしい

しばらくすると奴隷商の腕がだらしなく垂れる


「よし……いくぞ」


そう言って全員で檻から出る

おっさんも奴隷商を離してついてきた


周りにも牢屋があるのだが、ここはあたり一体が黒髪用の牢屋なのか誰もいない

しかしそれはありがたい

下手に騒がれても困るだけだ


廊下の突き当たりまできて、俺は壁に隠れながら出口の方に座って退屈そうた見張りを見つける


幻惑スキル、発動


これであいつにはいつもと変わらない風景が見えているはずだ

俺たちが通っても気づかないはず


俺が率先して進んで行く

ばれないと頭の中で思っていても、目の前を通るのは少し度胸がいる

目の前を横切っても見張りは反応しない

成功だ


俺はまだ向こうにいるみんなにきても大丈夫だと手招きする

順調だ。このまま行けば無事にみんな脱出できる

残りSPは29。これが0にならないことを祈ろう


奴隷商に連れてこられた時のことを思い出しながら出口を目指す

ど忘れした場合は少女から聞く

少女は昨日のあの一件から心を開いた

俺が道を聞いた時も、今では素直に応えてくれる


しかし……


見張りの数が増えてきてる

出口が近い証拠ならいいのだが

残りSPは16……半分まで減少した


「っ……止まれ」


後ろの奴らを止める

見張りが四人、見回りが二人……六人か

俺は幻惑スキルを発動して、見張りたちの前を横切る

そして他のやつらも俺についてくる

残りSPは10……そろそろまずいな


「あ……おい、あれ!」


後ろのやつが前を指差し叫ぶ

何事かと指先の方をみると、光が差し込んでいた

出口だ。外から二週間ぶりの日の光が差し込んでいる


俺たちは走りだし我先にと外に出ようとする

その時、左右の通路から人影が現れる


「そこまでだ奴隷共。大人しく牢屋に戻れ」


この世界にきて何度もみた奴隷商が、何人もの見方を連れて現れた

馬鹿な……あいつは昼飯を持ってきた時気絶させたはず

気絶させたのは……


俺たちは一斉におっさんの方を見る

おっさんは静かに歩き、奴隷商のそばで止まる

俺たちはその光景をただ呆然とみていた


「おっさん……どう言うことだよ……」


俺はおっさんに詰め寄る

おっさんが裏切った? だがそんな暇はなかったはずだ

奴隷商と顔を合わせるのは昼飯と晩飯を持ってくる時、もしくは新しい奴隷を連れてきた時だ

しかも俺が作戦を実行すると言ったのは昨日の昼飯の後だ

晩飯の時おっさんは奴隷商のそばにはいってなかった

一体いつ……!?


「……俺のスキルは意思疎通。頭の中で会話ができるのさ」


おっさんは笑っていた

俺が牢屋に入れられた時浮かべていた、いやらしい笑み

あれはおっさんの元々の顔のせいだと思っていたけど、違ったのか?


「利用させてもらったぜぇ……闇の勇者様よぉ。お前らの情報を売った褒美に、俺は無事に奴隷から解放されるんだからな!!」


くそが……!

こんなことなら一人で脱出するんだった

同じ境遇だからって油断した……


「なあ奴隷商! 俺は解放されるんだよな!」


「ああ、お前はもう奴隷じゃないさ」


奴隷商が仲間から剣を受け取る

何をするつもりかと考えていると、その剣でおっさんの胸を一突きした


「え……?」


「お前は今日から……死人だ」


奴隷商が剣を引き抜くと、おっさんは地面に崩れ落ちる

そして奴隷商の冷たい目はこちらに向けられた


どうする? 敵の数は二十人程。俺の残りSPは11に回復しているが、焼け石に水だ

圧倒的に足りない。どうにかしなければ


できる限りの人数にスキルを使って無理やり脱出するか?

いや、それでも五分五分。しかも相手が武器を持っているのだからきっと失敗する

こいつらを見捨てれば俺一人は逃げることができるかもしれないが、それは気分が悪い


くそ、おっさんさえ裏切らなければこんなことには……!


「……裏切り?」


そこで一つある考えが浮かぶ

おそらく現状で一番有効な方法

もしかしたら脱出できるかもしれない


「さあ、牢屋に戻る前に少し痛めつけておこうか。二度と脱走しようなんて思わないように……」


奴隷商が近づいてくる

俺は意を決してスキルを発動する


幻惑スキル、発動


「う、うわああああああ!!!」


「クハッ……お前、何やって……」


「く、くるなぁ!」


奴隷商の仲間たちが突然同士討ちを始める

半分が恐怖の顔を、半分が混乱の顔を浮かべている


俺の残りSPは0。すべて使い果たした

タイムリミットは効果がきれる二分間


「な、何をしているお前ら!」


「無駄だ。そいつらには今頃、他のやつが化け物に見えてる」


「なに!?」


そう。俺は残りSPをすべて使って同士討ちを狙った

恐怖心にかられた奴らは攻撃をする

それが味方だとは知らずに


突然の仲間割れで一人、また一人と倒れて行く

死んだ奴もいるだろう。でも……殺らなきゃ、殺られるんだ


二分がたった

SPが残ってないのでスキルは自動的に解除される

残った敵は奴隷商を含めて四人

この数なら押しきれる


「突っ込め!!」


「「「「「うおあおおおおおおおおお!!」」」」」


俺の掛け声でみんなが一斉に走り出す

奴隷商達は俺たちの行動に気づいて止めようとするが、数に違いがありすぎる

止めるどころかはじき返された


そのまま俺たちは久しぶりの日の光が当たる外の世界へと飛び出す

ヨーロッパ風の街の風景

太陽の位置が今は昼時だと教えてくれる


「や、やった……」


「外だ……外に出たんだ……!」


「「「「「わあああああああああああ!!!」」」」」


歓喜の声

外に出れたことに、全員が喜んでいた


「今すぐ国王に連絡しろ! 絶対に逃がすな!」


後ろから俺たちとは真逆の怒号の声が聞こえる

ここに居続けても捕まってしまう。早く逃げよう


「よし、それじゃあ解散だ! もう捕まるなよお前ら!」


俺がそう言うとみんな思い思いの方に走って行く

俺も早く逃げないとな


「あ、あの……」


突然少女が声をかけてくる


「どうした? お前も早く逃げろ」


「闇の勇者様……だったんですね」


様付けされるのはなんかくすぐったいな

そういえばこの少女には俺が闇の勇者だといってなかった

さっきおっさんが俺のことをそういってたからその時知ったんだろう


「ああそうだ。それがどうかしたか?」


「こ、これからどうするんですか?」


……これから、か

当面の目標はあのクソ王に一矢報いることだ

でも俺一人じゃ難しいだろう。仲間が必要だ

それこそ、国と戦えるレベルの


「旅にでも出るかな。この国と戦うための仲間さがしに」


「私も連れて行ってください!」


「は?」


思わず聞き返す

あんなの普通の人が聞いたらバカじゃないのかと思われそうだ

なのに連れて行って? 何言ってるんだ


「私……帰る家もないし、いく宛もないんです……。だから、連れて行ってください!」


だからってそこまで世話する気は……


いや、待てよ?


ヘルプはすべて見たしおっさん達からこの世界の通貨なんかも聞いた

でももしかしたらまだ俺の知らないことがあるかもしれない

こいつを連れて行くのはプラスになるかもしれないな


「勝手にしろ。でも甘やかしたりしないからな」


この言葉は本当だ

牢屋の中は死なれたら嫌だから色々--まあパンを渡しただけだが--してやったが、仲間になるのならタダではやらない

働かざるもの食うべからず。怠けるようなら見捨てるだけだ


「は、はい!」


俺の言葉に嬉しそうに返事をする少女

そう言えば名前を聞いてなかったな


「お前、名前は何て言うんだ?」


「あ……アリアです。アリア・ラーン」


「アリアか。俺は翔。黒崎翔だ」


自己紹介をすると、奴隷商の居るであろう方向から足音が聞こえてきた

流石に長居しすぎた


「いくぞ」


「はい!」

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