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二話

誰かが部屋の戸を叩く音が聞こえる

急いでいるのか、ドンドンと強く叩いているようだ

眠りの世界に入っていた俺はその音で目を覚ます


ベッドから起き上がり、寝ぼけている目をさする

その時我慢できなくなったのか、扉を叩いていた人物が勝手に部屋に入ってくる

兵士だった。昨日部屋まで案内してくれた兵士とは違うようだ

その表情は何故か険しくなっている


「闇の勇者! 少しきてもらおうか!」


「いきなりなん……って、おい! 引っ張るなって!」


兵士から乱暴に腕を掴まれ、部屋から引きずり出される

昨日の道を逆走している

ということは行き先は昨日のあの広間だろうか?


行く途中すれ違う人たちから何故か白い目で見られる

使用人らしき人たちは目の前でひそひそ話をしはじめた

俺が何かしたのだろうか


そんな白い目を浴び続けて、ようやく広間まで到着する


広間の中央までいくと兵士に無理やり押さえつけられ、王様に対して跪く体制になった


「っつ……何すんだよ!」


もがこうとしたら周りからも兵士がやってきて俺を押さえつけてくる

大人相手に、しかもこんな大人数に力で勝てるはずもなく、俺は兵士を睨みつけながら大人しくなる


「闇の勇者。いや、ショウよ。見損なったぞ」


「はあ!?」


突然王様から見損なったなどと言われた

昨日はずっと部屋にいたのにどうしろと言うんだ


「昨晩、使用人の一人が殺されていた」


「それと俺になんの関係があるんだよ」


悪いが顔も知らない誰かが殺されていようと俺はどうでもいい


「貴様がその使用人を指す瞬間を、見回りの兵がみておるのだ!」


「なっ……!」


何を言ってるんだ?

俺はその使用人を殺す凶器も、動機も、時間だってない


「ふざけんな! 俺はあのあとずっと部屋に……」


「黙らせろ!」


王様のその一言で頭を押さえつけられる


王様を睨むと、わずかにその顔が笑みでゆがんだのが見えた

そうか、そう言うことか

どう言うことか知らないが、王様は俺のことが憎いらしい

だから使用人を殺し、兵士に嘘の目撃証言を言うように命令した

そうして何らかの処分を下せば晴れて俺がいなくなるって訳か


全部憶測だ。俺の勝手な妄言と言われればそれまでだが、俺はこの推理に自信がある

と言っても、この中で俺の言うことを信じてくれる人なんて皆無だ

どうすることもできないのか?


「闇の勇者は奴隷として奴隷商に突き出せ」


「は!? ふざけんな、俺はやってねえ!おい、きけよ!」


二人の兵士から羽交い締めにされ引きずられる

部屋から出るまでの間も、必死に弁解しても聞く耳もたない






「おら、入れ」


あのあと俺は奴隷商に引き渡された

そのまま地下牢のような場所に連れていかれ牢の中に放り込まれる


「…………ふざけんな糞が!!」


奴隷商が何処かへ行ったあと、俺は檻に八つ当たりの蹴りをいれる

檻は僅かに振動して鈍い音を響かせる


「よう兄ちゃん、お前も濡れ衣きせられたのか?」


「ぁあ?」


キレ気味に振り返る

そこにはいやらしい笑みを浮かべたいい年したおっさんがいた

新人いびりでもしようってか?


「俺たちも似たようなもんさ。ところで、俺が街にいたころお前みたいなのは見かけなかったがよそ者か?」


そこで正直に答えようか少し悩む


でも待てよ? もしこいつ等を利用できる立場になったらこれから楽になる

俺は奴隷になって終わるつもりは毛頭ない

絶対にここから抜け出してあのクソ王に一矢報いてやる


「……俺は闇の勇者だ」


そう答えると周りが少しざわつく

城の時とは少し違う、嫌な気持ちにはならないざわつきだった


「ほ、本当か?」


「ああ、もしお前たちが手を貸すなら、ここから脱出する際お前たちも一緒に逃がしてやる」


「あ、ああ! いくらでも貸してやる! いいよな、お前ら!」


目の前のおっさんの呼びかけに周りも答える

ガッツポーズをする者、泣いて喜ぶ者


今気づいたのだが、この牢の中にいる人たちはみんな黒髪だ

そして先ほどのこのおっさんの言葉を思い出す

俺たちも似たような……ここにいる人たちのほとんどが冤罪で捕まったのか

どうやら黒髪はこの世界ではとても忌み嫌われているらしい


「なあ、この世界について教えてくれ。なにしろ昨日来たばかりで右も左もわからないんだ」


「ああ、まかせろ!」


その後おっさんたちからこの世界のことを教えてもらった

この世界では適正のあるスキル属性がそのまま髪の色に反映するらしい

これを聞いて他の勇者たちの髪の色についての謎も解けた


そして闇属性は人々の間で魔族の扱う属性とされていて、故に黒髪の人たちは魔族に近い存在と言われ人々から非難されているらしい

だがなにも全ての人がスキルを使えるわけではない

ただその属性に一番適正があるだけで、スキルを使えないと言う人も珍しくないのだとか


次に勇者召喚

数百年に一度の頻度で、魔大陸に魔王と呼ばれる存在が産まれるらしく、その魔王を倒すために勇者を召喚するらしい

召喚されるのは光、地、雷、風、水、火、闇の勇者の七人

闇の勇者は今まで召喚された勇者すべてが碌な扱いをされず、旅立つ前に姿を消すのが大半だとか


そして通貨

通貨は銅貨、銀貨、金貨の三種類あって銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚と同等の価値らしい

物価を聞いてみたところ、銅貨は前の世界で100円程度、つまり銀貨は1万、金貨は100万となる


教えてもらったのはこんなところだ

この世界で黒髪が嫌われている理由、勇者召喚の理由、通貨


「ああそうだ、一つ試したいことがあるんだ」


「なんだ?」


俺はおっさんの前で指を一本だけ立てる


「今俺は何本指を立てている?」


「何本って……2本だろ?」


おっさんが首を傾げて答える


「よし、もういい」


そう言って手を降ろす

おっさんは相変わらず不思議そうに首をかしげたままだ


今のでスキルの発動は念じるだけで済むとわかった

視界の上には、青いゲージが30から29に減少していた

1分未満でも1分と同じ扱いのようだ


しばらく待つと再び30に回復した

回復量は1分で1回復ってところか


さて、どうやってここから逃げ出すか……

見張りは幻惑スキルを使えばSPが切れるまでならなんとかなる

となるとこの檻か……

解錠スキル、なんてものがあればいいのだが生憎そんな都合のいいスキルはないようだ


その時、遠くから足音が聞こえてきた

また新しい奴隷でも連れてこられたのだろうか

足音の元は奴隷商だったようで、俺たちの檻の前で止まった

奴隷商の手には皿が掴まれており、腰から鍵を取り出し檻を開ける


「ほら、飯だ」


乱暴にそう言って、ご飯を地面に置く

そしてまた檻を施錠し、どこかへ行ってしまう


ご飯をもってくるときには奴隷商が持ってくるらしい

その時に檻を開けるのか……うまく奴隷商を気絶させれば檻からも脱出できるかもしれない


そう言えば朝から何も食べていなかった

俺も少しいただくとしよう


「……って、少し少なくないか?」


この牢の入れられている人数は10人ほど

それに対しご飯の量は7、8人分ぐらいだ

耐えられないほどではないがいささか少ない……


「いつもこんなものだ。ほら、好きなだけ食ってくれ」


そう言ってパンを渡される

好きなだけ食えとは有り難い。遠慮なくいただこう


牢獄内での環境は整った

と言っても決してすごしやすいわけではない

やはり早めに脱出した方がよさそうだ


俺はメニューウインドウと念じてメニューウインドウを出現させる

そして項目の一番下、ヘルプの項目を選択する

気になることはあらかた聞いたがもしかしたら俺が思いもしないことがあるかもしれない

脱出するために見張りの行動パターンなんかを調べなければいけない

それまでに一通り読んでおこう


スキルについて

スキルにはそれぞれ光、地、雷、風、水、火、闇の七つの属性と、誰でも習得できる無属性スキルがある

条件を満たすことでスキルが解放されることもあり、その条件は多種多様である

一定以上使用することでレベルが上がり、レベルの最大上限は5とされている

使用するためにはスキル名を口に出しても心で念じてもよい


俺はとりあえずスキルのついてを読んでみた

一旦戻ってスキル一覧を開くと、闇属性のスキルと無属性のスキルばかりで他の属性のスキルが見つからなかった

どうやら習得できるのは適正のある属性、それと無属性のスキルだけらしい


それとレベルか……

レベルが上がったらどうなるのだろうか

攻撃系スキルなら攻撃力が上がったりするのだろうが、幻惑スキルは攻撃系じゃないと思う

まあレベルを上げた時に確かめよう


「くぁ……」


突然眠気が襲い、つい欠伸を漏らす

そう言えば今日は無理矢理たたき起こされて寝不足だ

まだ日は落ちていないからこんな時間に寝たら生活リズムが崩れそうだが、こんな日の当たらない部屋にいたらいずれ生活リズムは狂ってしまう

ここは欲望に忠実になり、おとなしく寝るとしよう


「なあ、布団とかはどこにあるんだ?」


「ん? そんなものはない」


…………1日でも早くここを出よう

感想、誤字脱字報告、アドバイス、質問などお待ちしております

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