表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/58

第49話 ください

おくれてすいませんでしたー

 学校が始まってから1ヶ月と少し経ち、2月。展開の進みは遅いが、物語の季節が進むのは早い。2月と聞いた諸君、大体想像はつくだろうが、バレンタインデーだ。男にとって最大のイベントでもあるし、男にとって自分の位置づけがわかる酷な日でもある。俺が小学生高学年の時、クラスの男子みんなにチョコを配る系女子にもらって以来、一度も女性からもらったことがないのだ…!! あ、でもコンビニで、可愛い店員さんから渡されたことならあるよ! もちろんお金を払ってだけどね!!つまり俺は今年こそ…早苗お嬢、早月お嬢、楓さんという3人の女性陣がいるのだから少なくとも一つは貰えるのではないかという期待を抱いているのだ! これは俺の人生のマンネリを打ち破るチャンスとなり得るのだ! …俺が見据えるのは手作りチョコレート! 女の子が俺のことを考えながら一生懸命作ったチョコレートを俺は所望します!…と、昔の俺なら言っていたであろうこのセリフ。今の俺は一味違うぜ。別に手作りじゃなくてもいいじゃないか。市販のチョコでもいいじゃないか。女の子がくれるなら俺はどんなチョコでも嬉しいことには変わらないじゃないか! 俺ってホント寛容だよね!  絶対モテるタイプだよね! 今はバレンタインデーの二日前、女性陣はそろそろ動き出してもいい頃合である。しかしここで俺は直接チョコくれます? またはチョコ作ってるんですか? という質問を女性陣に聞くのは野暮といえよう。というかそういう質問は女性陣に下手にプレッシャーやハードルを上げかねない。つまりここは触れないのがベターな選択肢といえよう。何食わぬ顔をして二日間過ごそう。当日チョコをもらって初めて、あれ? 今日ってバレンタインでしたっけ? とぶちかまそう。きっとそれでいいはずだ。きっと時雨ってそんな浮ついたイベントには興味ないタイプなんだー、意外とクールなのねーとか思われるに違いない。きっと好感度ぐんぐん上昇だ。急上昇しすぎてオーバーしそうだ。フフフ、これは当日が楽しみだな。


 バレンタインデー前日。

 …おかしい。早月お嬢、早苗お嬢、楓さんまでもチョコレートを作っている気配が無い。もしかして買っているのでは? という疑問が湧いてくるだろうが、そこについての点はちゃんと調査済みだ。楓さんについては、どこかに出掛けたか、もしくは何かを作っているか。という二点を笠神さんに頼み込んで調査してもらった。ほかにも俺の見てないところで笠神さんには楓さん以外の二人の監視を頼んでいる。しかし早月お嬢に関しては俺がほぼ一日中一緒にいるから何をしているかは分かる。その二人は全くチョコを作る、買うという動作をしなかった。早苗お嬢に関しては屋敷にいるとき以外はあまりよくわからない。鬼船さんに頼みたいところだが、基本的に何もやってくれなさそうだし、早苗お嬢は基本的には何もやってなさそうだから問題ないのだろうか…。いや、問題アリなのだが。残り1日。このままだと俺はチョコをもらえないのではないか…? 俺はそんな未来を思い浮かべて身震いをしてしまった。

 さぁここで俺は考えるのをやめて行動に移そうと思うのだが、前述のとおり、直接聞くのは俺はしない方向で行こうと思う。まぁ、まず一番早く会えるし、最も会う回数の多い早月お嬢にちょっと聞いてみることにしよう…。もちろん。間接的にだ。直接ビシッと言うつもりはないし。直接作ってなんて言うと俺のプライドが許さないし、情けがないのでそんなことは言わない。あくまで遠まわしで行こう。なんなら早月お嬢からバレンタインの話題を振らせても良い。

 …さぁ行こう。これが、これから俺が行う会話によって早月お嬢がチョコをくれるか否か、分岐してしまう。…少し自信が無くなってきてしまったが、こんなところでグダグダやっている暇はない。今できることをやるんだ!


「早月お嬢!! 一緒にチョコレート風呂に入りましょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「いきなり部屋に入ってくるなぁぁあああ!!」


 何故こんなに早く部屋に入れたのかというと、前回もあったように俺の部屋と早月お嬢の部屋をハシゴで行き来できるようにしたのだ。…残念ながら一声かけてからハシゴを出すという条件をつけられたのだけど…。俺の名誉のために言うけど、別に早月お嬢のプライベートの観察とか、あわよくば着替えとかを見たいとかいう意味でこれを設置したわけではない。断じてないわけだ。もしかしたら裸とか見れるとか、そんなことは絶対に思っていないぞ!


「お願いします!」

「嫌よ、何でチョコレートの風呂に入らなくちゃいけないのよ」

「そ、それは…」


 おっと、流石に直接的に言いすぎたか…下手するとすぐにバレそうなレベルである。もう少し抽象的に話を進めるとしよう。


「何かお菓子が食べたいですよねー」

「……なによいきなり」

「いや、甘いものが食べたいなーって思って」

「…別に今はそうでもないけど…」


 少しまずい事態となった…。変な汗も出てきたし。やっぱりここは直接……


「あぁ…なるほどね」


 俺が発言をする前に早月お嬢は一人納得したかのように相槌を打った。


「チョコレート…とか言ったりお菓子とか言ったり、アンタ、バレンタインのこと言いたいの?」


 …バレた。


次回も同じ感じです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ