表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/58

第48話 自己的

そろそろですね。そろそろ…



冬休みの終わりは基本的にはあっという間と言うべきか…。夏休みとかと比べると本当に早いよね。俺こと双馬時雨は本日学校に行くために準備をしている。現在は早朝、鳳咲家の使用人としての仕事を一旦終えて、燕尾服から学校指定の制服へと着替えをする。屋敷での燕尾服着用はしっかり襟元まで正してネクタイをしっかり締めないといけないから正直窮屈でしょうがないのだが、制服となってはネクタイゆるゆる(学校の制服に関する規制がユルい)であり、こっちのほうが開放感あって好きだ。

 

「心地の良い朝だ…」


 俺は思ったことをツイ口に出してしまった。未だ冬といえど窓の外は晴天であり、不思議と心は心地よい。汚れた心が清められていくようだ。まぁもともと俺には汚れた心なんてないのだが。

 俺の朝の愉悦に浸っていると、横槍が入ったように早月お嬢が俺に声をかける。


「お楽しみのところ悪いんだけど、ここ私の部屋よね? なんでアンタが私の部屋で着替えてるのよ?」

「そんなの俺の着替えがここにあるからに決まってるじゃないですか」

「いや、だから何でそもそも私の部屋にアンタの着替えがあるのかって聞いてるのよ!!」

「ここは俺と早月お嬢の共有の部屋でわ?」

「違うわよ! いつからそうなってんのよ!」


 俺は早月お嬢がわけのわからないことを俺に言ってくるので嘆息し、俺は部屋の隅の方に向かった。部屋の隅の方にはひとつのボタンがあった。


「……? そんなところにボタンなんてなかったと思うんだけど…」


 早月お嬢が不思議に思っているところを俺は、まぁ見ててください、と適当に言った。そしてこのボタンを押すと天井から機械音が小さく鳴り響く。


「え? エ?」

「遅くなりましたけどこれが俺のクリスマスプレゼントですよ!!!」


 天井からハシゴがゆっくりと降りてくる。そう、これは天井収納型ハシゴ(どっかで画像見てください)の如く、俺の部屋と早月お嬢の部屋を繋いでやったのだ! 実は早月お嬢の部屋の上は俺の屋根裏部屋だったのだ! 矛盾があるかもしれない? 知らないよ!! だってこの屋敷裏部屋いくつかあるし!!

 早月お嬢は今起こっていることを理解できず、ポカンと口を開けてその場で硬直していた。なるほど、それだけ嬉しいということか。これで俺もプレゼントをあげた甲斐があるというものだ。


「これで俺と早月お嬢…寂しくなったらいつでも会えますよ!!」

「いらねぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」


 ようやく我に返ったのか。早月お嬢が叫び始めた。女の子がそんなハシタナイ言葉を使っちゃダメだと思うけど…あえてそこは言わないでおこう。


「嬉しいな~早月お嬢と会いたくなったらすぐに会えるなんて…一分一秒でも多く早月お嬢と一緒にいたい俺にとっては夢のような物ですよ」

「1つ聞きたいことがあるんだけど…」

「はい?」

「これ私のプレゼントなのよね?」

「そうですけど…?」


 何を言っているんだ早月お嬢は…。あまりにも嬉しすぎて何を言っているのか分からない状態なのかな。


「これ完全にあんたにしか利点ないわよね」

「なんだってー!!?」


 おかしいな…確かに、俺にとってはこのプレゼントもといハシゴは利点がある。かなり便利だし、かなり嬉しい。だって、好きな時に好きなだけ早月お嬢の部屋に入ることができるんだよ! これほど魅力的なプレゼントはないはずだよ! …あれ? やっぱりこれ、俺にとっての利点しかないのか…? いや待て。よく考えてみてくれ。早月お嬢と俺は両想いのはずだし。愛し合ってる二人が同居をしたいと思う気持ちは当然。至極当然のことである。結婚にしたってそうだ。仲睦まじい夫婦が部屋が分かれているなんてあるだろうか…? 仮にあるとしても少数派であることに間違いないのだ。つまり早月お嬢はこのプレゼントをもらって嬉しいハズに違いないのだ。………ン? こういう考えもできないくはないだろうか…? 愛し合っている夫婦もとい恋人は敢えて距離をとることによってお互いの大切さや恋しさを思う、という考え。そうか…わかったぞ早月お嬢が言いたいことは…。俺と毎日のように…そしていつものように部屋で一緒にいると逆に恋が冷めてしまうのではないか、という一種の恐れがなした答えだということだ!


「…早月お嬢…俺が浅はかでした」

「また勝手に自己完結してない?」

「でもそこまで早月お嬢は俺のことを思っていてくれるんですね!」

「うん、すごくウザいと思ってるよ」

「え? なんだって?」

「うわ、都合の悪い言葉をカットしてきたわ」


 すまない皆! こう見えても俺主人公でさ! ライトノベルとか漫画の主人公みたいに、女の子の告白とか、俺のことを良く言ってくれてるセリフがたまに聞こえなくなっちゃうんだ!

ちょっとこれには悩まされちゃってんだー! ちょっと難聴気味かなー? なんて思ってるんだけど病院に相談したほうがいいのかな?


「少なくともアンタが行くべきところは精神科よ」

「なんで!!?」


 早月お嬢が俺とおしゃべりしてるせいで時間が過ぎてしまって遅刻した。





来週も日曜の夕方から深夜のあいだに更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ