第40話 何だかんだイイ感じ
お久しぶりです。
これから週一更新になります!
ジェットコースターとかの絶叫は何だかんだで楽しめるものだけどさ、結局一番怖いのって観覧車な気がしてきたんだよね。だって高いしさ、ガタガタ揺れるし。
つーか何でよりによってガラス張りの透明なゴンドラに乗ってるんだ! 怖いぞ! 足元が見えてさ! 東京タワーのガラス床の恐怖を思い出してしまう。俺って意外と高所恐怖症なのね。
「意外と怖いわね…観覧車って…」
「お嬢も俺と同意見ですか」
早月お嬢が一緒に乗ってくれたのは嬉しいけど、お互い正面に向かい合う形で座っている。どうせなら隣に座ってほしいな。これはこれでいいんだけどね。
「さて、この密室空間で二人っきり、下につくのは少なくとも5分後…フフフフフフ」
「…乗ったのはやっぱり失敗だったみたいね」
「まぁまぁそんなこと言わずに~」
まぁどう言おうと数分の間はここで過ごすことになるのだ。色々やりたいことはあるが犯罪者になるのはゴメンなんでね。
「チューくらいなら良くないですか! いいですよね!?」
「イヤ」
「せっかくロマンチックな場面なのに!」
「少なくとも時雨の発言でそんなもの無くなってるわよ!」
う~んやっぱり早月お嬢のガードは硬い。せっかくのこういう機会、見逃すわけにはいけない気がするんだけど…。
「お嬢、折角の2人きりなんで言いたいことがあるんですよ」
「なによ改まって…怖いわね」
「付き合ってください!」
「イヤ」
「何で!?」
「イヤなものはイヤ」
っく、やはり壁はデカイ。これを崩さなくては早月お嬢攻略の道は遠いぞ!
「4月から何度もアタックしても態度は依然として変わらず、一体どうすればいいんだ!!」
「もう半年も経ってるのね…もうアホとしか言い様がないわね」
「…まぁ、何だかんだで今の生活、すっげぇ楽しいからイイんですけどね!」
「…そうね」
早月お嬢は微笑んでそう言った。やはり可愛い。その微笑んだ顔のままこう言った。
「変なのが一匹増えちゃったんだけど」
「人を害虫みたいに言わないでくれません!?」
そろそろいいだろうか…?
俺たちの乗ってるゴンドラが一番高い位置まで登った時点で俺がすることがある。
俺はポケットにしまってた可愛らしいリボンで飾った小さな箱を取り出した。早月お嬢のプレゼントだ。
「お嬢…急で申し訳ないっすけど、これどうぞ」
俺は取り出したプレゼントを早月お嬢に差し出した。早月お嬢は少し驚いた顔をして言う。
「な…何考えてるの? 中に変なもの入ってないでしょうね?」
「入ってませんよ! どんだけ信用ないんですか俺!?」
「マヤの予言くらい」
「う、またリアルな…」
なんかショック。気を取り直して俺は言葉を続けた。
「…えー…今日は早月お嬢の誕生日ってことなので俺からのプレゼントっす」
なんか改めてこう言うと気恥ずかしくなってしまって、まともに目を合わせることができなくなってしまった。ぐ、こういう時に限って俺の今までの女性経験不足が堪えるぜ…みんなには口だけの変態とか言われたが何も言えん…! 女性にプレゼントなんてした事がないんだよクソ!
しばし戸惑った早月お嬢であったが、俺が差し出したプレゼントを受け取ってくれた。
「知ってたんだ。私の誕生日」
「もちろんですよ! 早月お嬢について知らないことは殆どありません!」
「それはそれで怖いけど…」
引いてしまったので気を取り直して俺は
「早月お嬢、誕生日おめでとうございます!」
と言った。やっと気持ち的に落ち着いてきたのでまっすぐ早月お嬢を見ることができる。早月お嬢は少しプレゼントを見つめて、
「開けていい?」
「どうぞ」
早月お嬢はリボンを解き、プレゼント包みを剥がし、一つの小さな箱が顕になる。その箱を開けたら中にはピンクシルバーのハート型のペンダントだった。早苗お嬢が寝てしまってプレゼント選びを断念した次の日にもう一度行って買ったやつだ。もちろんこれは個人的なやつであって、みんなで買ったやつもある。
「これって…」
「いわゆるロケットペンダント? ってやつらしいですよ。中に写真が入るやつです」
「そうなんだ」
そういって早月お嬢はペンダントのチャームを開いた。チャームの中には俺の写真が入っているのだ! これでいつでも俺と一緒にいるとっても素敵なアイテムさ!
「…………」
「どうですか!?」
「うわ、いらな」
「ええぇぇぇぇぇぇぇ!?」
そこまで言われるとかなり心にくるものがあるんだけど!! チョイスがやはり悪かったかな…ここは俺の水着写真にするべきだったのだろうか…やはり燕尾服姿ではあまりに見慣れていて華がなかったとでもいうのか…うぅ…。
「フフッ」
「ど、どうしたんすかお嬢?」
いきなりお嬢が笑い出したのでちょっと不思議に思ってしまった。
「ホントにアンタのチョイスって酷いわね…」
「うっ」
「………でも」
早月お嬢はペンダントを自分の首にかけて、少し間を置いて言った。
「嬉しい ありがと」
「……え?」
早月お嬢は今まで俺に対して見せたことのない笑顔を向けてくれた。正直こんな真っ直ぐな笑顔をみたことがなかったから、いつもよりずっと可愛く見えてしまった。俺は思わず顔を伏せてしまう。きっと俺の顔は真っ赤に紅潮しているだろう。まさかこんな反応してもらえるなんて思わなかった。
「ど、どうしたの時雨? もしかして酔いでもした?」
「いや、少し興奮しただけです」
「心配して損したわ!!」
なんつーかその、早月お嬢に出会えて幸せだ。エロいことができたらもっと幸せ。
俺と早月お嬢は帰った後、屋敷で笠神さん、早苗お嬢等と盛大に祝いました。
23話まで加筆修正はしておきました。大まかに改変ということはないので物語に支障は出ません。セリフが増えたり、地の文補足が増えたり、誤字訂正とかです。 ちなみに残りは来週までには終わってるはずです。
次回は復活記念ということで明日になります。読んでくださると幸いです。