第29話 朝の嗜み
夏も過ぎ、秋になった。夏のあのクソ暑さが今じゃすっかり無くなってしまった。俺らは半袖の夏服からちょっと着苦しい燕尾服を着ることになる。
「ん~久々に着たなーこれ」
あの暑さから開放されたことは満足なんだけど久々に燕尾服を着ると動きづらくて嫌だなぁ。俺は一度大きく背伸びをして部屋を出た。
朝早いから日はまだ昇りきってない。いつもならこの時間に使用人室に居るであろう笠神さんに会いに行くのだが今日はいつもより早く起きたから時間的に余裕がある。さて、早月お嬢の部屋に侵入するか。
そうと決まれば俺の行動は速い! 俺は猛ダッシュで早月お嬢の私室の前に駆け込んだ。早苗お嬢は朝食ギリギリまで寝ているから、いつも早く起きてしまう早月お嬢の部屋に早めに侵入するのがコツだ。
「ふふふふ、お邪魔します」
先に言っておくが俺は変態ではない。テストに出るよ! 覚えておくように!
部屋はまだ暗く、ほとんど何も見えない。しかし俺は早月お嬢の匂いを頼りに足跡を立てないように歩き始める。もう一度言う。俺は変態ではない。
俺はお嬢が寝ているベッドの前に立ち塞がった。俺の目が暗闇に慣れてきたため、早月お嬢の眠っている顔が僅かだが見えてきた。
グヘヘヘ、自分がどんな状況か知らずにこんなに無防備に寝やがってこの小娘め! …しつこいようだが変態ではない。ちょっと自信無くなってきた。
この前は早月お嬢の隣に潜り込んだんだけど今日はどうしようかな。取り合えず寝顔の写真を収めるとしよう。スマホの無音カメラアプリでな!! 1枚500円で売ってあげる。
取り合えず色んなアングルで100枚取った。後で拡大印刷だ。部屋に飾ってやるぜ。
しかし、これから何をしようか。…時間は限られているし、早めに実行に移したい。
胸を揉む、おしりを触る、チューするとかはだめだ。そういうことは相手のご了承がないと俺はしないんだぜ! 紳士だろ!? ……自信はない。無意識の中でしているかもしれない。
仕方が無い、今日もベッドに潜り込むか。
俺は早速お嬢が寝ているベッドの中に潜り込んだ。俺はお嬢と顔を合わせるようにして寝転んだ。今日はお嬢の顔を見ながらリラックスしよう。
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10分後
「ん……う~ん、…………」
早月お嬢が目を覚ました。お嬢は目の前に居る俺を見て一瞬硬直した。
「早月お嬢お早うございます!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!」
お嬢はたちまち大声を上げて叫びだし、ベッドから飛び降りた。
「何でまたアンタが私の部屋にいるのよ!!!」
「だって早月お嬢がいるから…」
「だからってベッドに入ってこないでよ!!」
「じゃあ俺は朝の娯楽をどうやって過ごせばいいんですか!?」
「知らないわよ!!」
早月お嬢も無茶をおっしゃるものだな。この楽しみあっての使用人だ。
「早月お嬢にとって秋といったら何ですか?」
「え…? 秋といったら……食欲の秋?」
「違うね!! 性欲の秋さ!」
「何ドヤ顔で言ってんのよ!!」
次回投稿来月の中旬の予定です…