第28話 俺たちの戦いはこれからだ!!
《香透楓の場合》
「楓さん、代わりに私が持ちましょうか?」
「大丈夫ですよ、私だけで平気です」
「わ、私はもう不必要ですか? いらないのですか?」
どうやら時雨君は頭を打ったか、1回転生したみたいです。何というか真面目君になっていて、どっちかというとおかしいです。
いつもエッチなことばかり言ったりしてるのに今日に限って何故こんなにも真摯なのでしょう。きっと何か邪なことを企んでいるに違いありません。
とりあえず私は思ってることを口に出して時雨くんに聞いてみました。
「どうしちゃったんですか時雨君、急に真面目になっちゃって」
「私はいつも通りですよ」
いつも通りにはまったく見えません、どうにかしちゃってますよ。
私は少し重いダンボールの箱を両手で持ち上げて歩いていると時雨君が私に絡んできました。いつもならセクハラやらをしてくるのですが、今はまったくその気を感じません。しかし油断は禁物です。もしかしたら時雨くんは邪な心を他人に見れないような能力を持っていてもおかしくないからです。何かしらしてくるつもりです!
「いいのですか、私が持たなくて? 重くはないですか」
「大丈夫ですよ! 私も立派なメイドですよ! 舐めちゃいけません!」
「とはいいますけど、すごく辛そうですよね?」
「ふぐぐ…平気です。時雨くんはどっか行ってください」
正直言うと辛いです。女の子にはこういう力仕事は辛いのです。でも時雨君の前では弱音を吐いてはいけないのです、後輩に見っとも無い姿は見せられないですもの。いや、時雨くんは基本優しいのですがその裏にがあるのか分からないので、変に借りをつくるわけにはいかないのです。
「本当に平気ですか?」
「だ、大丈夫です…」
しかし時雨君がこんな真面目キャラになってしまうと私の脳内形成が少し崩れてしまうのです。今まで時雨君はヘタレ受け担当だと思っていたんですけど…こういうキャラになってしまうとなると…。いや、時雨君はどう足掻いても攻めにはなれなさそうですね。生粋の受けです!
「どうかしましたか?」
「いえ、何でもないです…」
思わず私が邪な感情を出してしまうところでした!
…戻ってくれないですかね。何か慣れないので。
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どうしてだろう。結構俺なりにしばらく紳士に振舞ってきたのだが皆の反応がおかしくなってない? ぎこちなくなってない?
俺は何も間違っていないはずだ。俺は早月お嬢のために紳士を装っているのに…。
「気持ち悪い」
「えっと…どうされましたか早苗お嬢様?」
「気持ち悪いよ」
「お体を害されましたか? 少々お待ちください今すぐ薬を…」
「時雨が気持ち悪いんだよ」
「…えっと…」
「めちゃくちゃ気持ち悪い」
え、えぇぇぇ…気持ち悪いっすか? うまく振舞えていると思ったけどそんなに下手だったか? いや、何か穴があったのだ。そこを直せばきっと良くなるはず…。
「早苗お嬢様、私の何処が気持ち悪いのでしょうか?」
「だからその口調と態度だよ」
「つまりいつも通りに戻れと?」
「そうだよ」
…そうか、ありのままが一番! そういうことですね早苗お嬢! どうやら俺の心を入れ替えるという行動は全て無駄になったという訳である。
「仕方ないですね。おっぱい揉ませて下さい」
「一気に戻ったね」
「だって早苗お嬢としては俺はエロいほうがいいんですよね!?」
「別にそういう意味じゃないんだけど」
「早苗お嬢のドスケベめっ☆」
「…何か後悔した気がする」
何か早苗お嬢が言っているようだが聞こえなかった。ふん、変に今後とも紳士キャラで通さなくても済んだことは楽だし、俺はエロス一筋! エロス道を遠慮なく歩んでいけるのだ! そして早苗お嬢はそんな俺が好きなのだ! これ以上に素晴らしいことはない!!
「さて、早苗お嬢はやっと口説けたし、次は早月お嬢を口説きに行くとするか」
「いやいや、私口説かれてないよね?」
「安心してください早苗お嬢。俺からの愛は平等ですよ!」
「う、うん…そうだね」
早苗お嬢が不安そうな顔をしているので迷わず俺はフォローした。たとえ俺の彼女が10人いたとしても俺は全員平等に愛するのだ! 1人を特別扱いなど絶対にしない!!
さて、俺は早月お嬢を口説くため次のステージに進むことになる。これは俺と性欲が持つか、自制心を保てるかの勝負となる。しかし逆に考えるんだ。「保たなくていいさ」 と考えるんだ。
どんなに苦しくても俺は諦めない。何故ならその先にエロスがあるからだ。
さあ、行くぜ。俺の戦いはこれからだ!!!
26話で「ネタギレ」を「ネタバレ」って間違えて書いてしまった…(今思うと何故間違えたのだと思う。きっと呼んだ人も「?」が浮かんだと思います、すいません。
ついに4月を迎えました。詳しいことは活動報告で報告しますが、大学受験という関係で更新頻度がかなり不定期になります。