第27話 この上なく真面目
《笠神灯矢の場合》
いつも時雨君は僕を先輩として見てくれていないような気がした…まぁ、僕も先輩っぽくないのが原因な気がするんだけどね。
しかし、どういうことだろう。僕としては大変嬉しい事なのかもしれないけど…これはこれで少々慣れないということもある。
「笠神さん、次は何をすればよろしいでしょうか? 何なりとお申し付けください」
「えっと、もう休憩していいよ」
「しかし笠神さんがまだ働いているのに私だけ休みを取るだなんてそんなことできません!」
つい数時間前まではあの変態キャラを貫き通していた時雨君が急にこんなに生真面目な子になっちゃったんだろう…一体数時間前に何が起きたんだろう、気になるよね。いや、でも何となく予想は付くような気はする。お嬢様に何かしら言われて時雨くんが変に解釈してこうなったとか…。
僕は反応に困ったが、取り合えず何か仕事を与えなきゃいけないと思い、こう言う。
「そ…そう? …じゃあリビングのテーブルと椅子を綺麗にしてきてもらおうかな」
「すぐ行って来ます!」
「…う…うん、ゆっくりでいいよ…」
僕の言葉を聞いた後、一礼してすぐさま部屋から出て行った。
何というかその……怖いよ時雨君。本当にどうしたんだい、やっぱり頭を打ったのかな…。どちらかというと前の時雨君に戻ってくれたほうが助かるな…。
そんな考え事をしながら夕食の準備をしていると部屋のドアが開き時雨君が来た。どうやら息切れしているようだ。
「終了しました!!」
「早っ!?」
早い…時雨君いつもはこんなに仕事はテキパキするような子じゃないんだけどな。僕より早くない? 一体何が君をここまで動かしているのさ。
「さて、次は何をいたしましょうか?」
「流石にまだやることはないかな…」
「でも私1人が休んでいるだなんて…」
「うん、じゃあ部屋の点検お願い」
「分りました!!」
凄く面倒くさいキャラになってるよね。数分待っていると時雨くんが走って使用人室の部屋に入ってきた。
「終わりました!」
「だから早くない!? 本当に点検してきた!?」
「安心してください! 猛ダッシュで見てきました! 3周してきたんでほぼ確実に大丈夫です。問題ありません!」
「そっか…じゃあ休んでていいよ」
「そういうわけにはいきません! 何かしら仕事があるはずです!」
「だから少し…」
「そうだ! 自分で何かしら仕事を探せば良いのですね! 笠神さん! 日頃からお疲れでしょうに、私がマッサージでもして差し上げましょうか!?」
「もういいよ! 楓さんのところにでも行って!!」
ごめん楓さん。君のところに時雨くんを押し付けることになってしまったよ。でも分かってくれるよね。
《鬼船幸助の場合》
「引き籠ってたから知らぬ」
次回更新4月1日予定です