第24話 最後の戦い
明日に新作投稿します。もしよければそちらも読んでくれるとうれしいです。
「ん~、おはよー……って時雨君!?」
「ふふ、おはようございます」
結論から言うと、どうにもならなかった。何もできないまま1時間過ぎた。
俺にはこの問題を解決することができなかった。何かもう…どうでもよくなってしまったんだよね。
「どうしたのさ時雨君……もしかしてずっと起きてたのかい?」
笠神さんが驚きと心配交じりで、俺に問いかけてきた。
「はい、ずっと起きてましたよ、ふふふ」
「ど、どうしたんだい…怖いよ時雨君」
あぁ、もう俺に尽くす限りの全てのことをしたんだよ。その全てがうまくいかなかったんだからもう燃え尽きちまったぜ。
「で、どうしたんだい…何か理由があったんだよね?」
「簡単ですよ。この画面見てください」
俺はこう言い。不思議に思っている笠神さんにパソコンのデスクトップ画面を見せた。
これを見て笠神さんは一瞬沈黙をし、苦笑を見せた。
「なるほど、これは……」
うーん、と笠神さんは困った表情を見せて考え込む。
「僕もパソコンに強いほうじゃないからなぁ」
「あぁ、死にたい」
何だよ、この家族にエロサイト見られてるのがばれた時の絶望感と似たようなものは…。
「俺はただ純粋にエロスを求めていただけなんです……それなのに……それなのに何でこんなことになっちまったんだ!!」
「そ…そうだね」
笠神さんはしばらく考えた後、こう発した。
「パソコン得意な鬼船さんに聞いてみるのが一番じゃないのかな」
「あ」
なるほど、その手があったのか…そういえば鬼船さんはそういう類のものが得意だと聞いてはいたが忘れていた。つか、もしかしたら起きてたかもしれない…。
そんなことに気づかないほどテンパってたみたいだ。
「じゃあちょっと呼んでくるから待っててね」
笠神さんはそう言い部屋から出て行った。恐らく鬼船さんを朝っぱらからここまで連れて来るのに30分は軽くかかるような気がする。早くしないと楓さんが……
「お早うございます…って時雨君しかいないんですか?」
おっと…一番来ちゃいけない人が来てしまったぜ。この事件に関しては女性に知られたくないのだ。当たり前だろ! 女性に知られたらまずドン引きされるわ!!
「時雨君どうしたんですか?」
「何でもないです。決してなんでもないです」
楓さんは少し疑わしいような目線を向けてこちらに近づいてきた。
「何か隠してません?」
「そ、そんなこと………ないってばよ……」
「何で急に語尾が変化するんですか」
額から汗が流れてくる。心なしか顔が息も荒くなってきたし…これはピンチ! 打開策を練らなければ俺は一生楓さんに蔑みの目をされてしまう!! それはそれで良いけど!
「あ! あんなところに男同士でイチャイチャしている輩が!!」
「え!? どこですか!?」
「ポチッ」
まさか楓さんが振り返るとは思わなかったけど、運よく成功した。楓さんが余所見をしている間にパソコンの電源押し、強制シャットダウンをすることに成功したのだ。
「いないじゃないですか! 時雨君の嘘つき!」
「居る訳無いじゃないですか男同士いちゃついてる奴なんて! 馬鹿ですかあなたは!!」
こいつ……やばい! かなりの重症患者と判断させてもらう! しかしそのおかげで一旦は助かったのだ。良かった…。
「まぁいいです……時雨君、私パソコン使いたいんで退いてもらっていいですか?」
「え」
え………っと、……え? パソコン使っちゃうんですか? 本当に?
楓さんが今パソコンの電源を入れたらまずい。すぐさまデスクトップに悪魔が出現する。それって軽いセクハラなんじゃないだろうか…まぁ日頃してるしいいんだけどさ。
「早まらないで下さい楓さん…!」
「え? どういうことですか?」
「BL関連のサイトを見るのはやめたほうが…」
「違いますよ! いくらなんでもそこまではしません!」
しまった…どうする…笠神さん早く着てくれ非常事態なんだよ!!
「パソコンと俺どっちが大切なんですか!!」
「唐突になに変な質問してるんですか!?」
「おっぱい揉ませろー! グヘヘヘヘ!」
「いやあああ! やめてください!」
困ったときの安定のごり押し作戦である。
ここまでくると別に見られてもいいような気がしなくも無い。だけどここまで来たんだから最後まで守り通してみせる。
「楓さん分りますか、目の前におっぱいがあるのに揉まないなんて失礼ですよね」
「その理論はおかしいと思います!」
「世の中にはおかしな事ばかりですよ」
「何綺麗に片付けようとしてるんですか!?」
結果から言うと、俺はパソコンを守り切り鬼船さんによってデスクトップに巣食う悪魔を無事削除することに成功した。
この事件の真相は俺と笠神さん、鬼船さんしか知らない…。こうして俺の長きに渡る戦いは幕を閉じたのであった。