第23話 男の覚悟
「さて、どうするか」
考え込んだ挙句2時間近く時間が経過してしまっていた。エロサイトを閲覧していて、動画を見ようとしたが、悲劇が起こる。
俺が見ていたサイトは詐欺サイトだったのだ。結果としてデスクトップ上にサイトの宣伝が出てきていくら消しても蘇ってきてしまう。
要するにこれは俺の社会的地位の危機が訪れるということになる。
「仕方ない…皆にばれるんだったら特定の1人に助けを求めるしかない」
俺は右ポケットにある携帯を取り出した。勿論待ち受けは早月お嬢の寝顔だ。
俺は慣れた手つきで携帯を操作、電話帳を開きある人物の所を開き、電話をかける。
数秒間、待った後、眠そうな声を出して電話に出てきた。
『…何だよ時雨こんな時間に……』
「悪いな輝…緊急事態なんだ」
俺が電話をかけた相手は逆谷輝彦、俺が子供の頃からの親友で、ここ最近高校に通うことになってから輝と同じ学校であるということが分った。全くの腐れ縁である。
輝は少し沈黙し、
「お前から電話なんて久々だな……何があったんだ?」
「…あぁ、聞いてくれ」
俺は今まで俺に起こった悲劇をすべて述べた。輝はこの悲劇を聞いてしばらく沈黙した後「なるほど」と相槌をうった後、こう続けた。
「それはやばいな」
「やべえだろ」
「まぁお前が何で鳳咲さんの家で使用人やってるってことは聞かないでおいてやるけどさ」
「あ」
しまった。思わず口を滑らせてしまったようだ。
輝にはいずれ話そうとは思っていたがまさかこんなタイミングで言ってしまうだなんて。
「輝…くれぐれも学校の奴には黙っていてくれ」
「分ってるってー」
我が親友ながら納得しがたい返事が返ってきたので不安になるのだが…。俺がそんなことを思っていると輝が会話を続けた。
「ところで時雨、お前は鳳咲さんとは結構仲良さそうだよな」
「あったり前だろ! お嬢は俺の嫁だ!」
「お…おう」
俺の発言に電話越しにでさえ若干声が引いていたのが分った。事実なんだから仕方が無いだろう。
「中学のときとは随分違ったよな、あれだけお前が女の子と関わりたいとか嘆いてた頃が懐かしいぜ」
中学の頃は俺にとってかなりの黒歴史だったんだけども…これについても皆に言いふらしてほしくないものだな。
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「って話それてんじゃねーかよ! 俺は今すぐにでもこのデスクトップを染め上げているエロサイトの広告を消し去りたいんだよ!」
「あ、俺には無理だわ。じゃ」
「え…」
俺が声を出す間も無く、輝は容赦なく俺との通話を切った。
「くっそ~、この薄情者めっ」
俺に残された唯一のツテが…。
俺はこの後どうするべきだ…こうなると俺には何の手段も無い。
俺もそろそろ腹を括る覚悟をするべきなのだ…たとえ俺がどのような仕打ちを受けようともな。
「この戦いに終止符を打つ…」
笠神さん達が起床する時間は午前5時、すでに時計の針は4時を回っていた。