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第2話 ただ一つ、男が夢見る物

小説を書いてみると色々難しいことがっぱいありますね・・。

  よくよく考えてみれば女性専用車両はかわいい女の子だけが入ってくるわけではないのだということに気づいてしまったんだ。お婆ちゃんとか入ってきてる。いや、何かむしろオバチャマくらいしかいなかった。

 実際に駅のホームに朝早くからずっと女性専用車両を眺めていただけに、少し自分の淡い期待を壊されたことに3時間落ち込んでしまった。だが、代わりに新たなる夢を見つけたんだ。


 銭湯の番台はご存じだろうか? 女子更衣室と男子更衣室の間にある、ようするに男湯と女湯を共に見渡す位置にある受付所のようなものだ。

これはつまり、女子風呂を覗けるということだ!!! なんと幻想的であろうか!


「要するに俺の将来の夢は銭湯の受付係です!」

「いや~、それはそれで夢があって良いけど…最近そういう所ないよね?」


 冷静に俺にツッコンでくる人は、笠神灯矢かさかみとうや、執事としての俺の先輩に値する人だ。英国人を思わせるような金髪の髪に、狐のように細い目。キッチリと着こんだ漆黒の燕尾服えんびふくはまさに執事だと思わせるほどの者である。うん、イケメン消えろ。


「何を言うんです! 無いならつくればいいだけの話でしょう!」

「そう簡単に言ってくれるけど…って実際そういうところあっても、流石に若い女の子が入ってくる可能性は低いんじゃないかな?」

「……なん……だと?」


 確かに言われてみればそうである。最近の女子は銭湯とかいった場所には行かないケースが多い。いや、勝手な偏見なのだが。さらに番台から着替えているところをどこぞの知らぬおっちゃんおばちゃんに見られているのだ…。


「やはり……だめ…なのか……」

「まぁ、考え直した方がいいね~」


 また俺は絶望の淵へと落とされることになるのか。こんなのっておかしい! おかしいよ! 俺に彼女ができないくらいおかしい! 


「しかし、時雨君…そろそろ早月お嬢様も補習から帰ってくる時間だからさ、昼食の準備、各部屋の点検は僕がやっておくから時雨君は今頃寝ている筈の早苗お嬢様、起こしてきてくれないかな?」

「りょ…了解…」


 いけないいけない…。俺としたがこんなことで落ち込んでいたらお譲達に見せる顔がないぜ。

 それにしても早苗お譲、今朝起こしたのにまた自分の部屋に逃げ込みやがった…。どれだけ寝れば気が済むのだろうかあの子。

 俺は笠神さんが去って行ったところで独り言を呟いた。


「いやー、しっかしあれだ。学生が夏休みって言うのに俺ら執事は年中無休ってのは辛いものだよなぁ」


 そう、執事というものには休憩はあるが休日がないのだ。

 しかし、この鳳咲家に住んでいる主は事実上早月お譲と早苗お譲だけだ。笠神さんに聞いた話からすると両親は今母国なる英国に行っているらしい。

 まぁ気にし過ぎだろうが、お譲達は一切両親のことについては言ってこない。だから何となく此方からも何かと尋ね辛いという感じにある。

 

 俺はそんなことを考えながら長く続くレッドカーペットのような廊下を歩いて行くうちに俺の背を大きく上回るドアをノックせずに開けた。

 ちなみに執事は主の部屋であってもノックなしで部屋に入室することが許されているのだ。俺はこの話を聞いた瞬間、まず考えったことはお譲達が着替えている瞬間に入室すればとってもToloveるなことが起こるのではないかと!

 しかし、今のところそのような出来事は起こっていない・・・いつかは実現したいな。絶対に起こしてやる! 


「ったく……よくそんなに寝れるものだなぁ」


 はぁ、と嘆息しながら今朝のようにゆったりとではなく、勢いよく布団を取り上げた。すると、取り上げた布団の下に寝ていた早苗お譲の姿が現れる。寝相が悪く、パジャマがはだけてへそが見えてしまってる。素晴らしきかな。


「うっ……うう…まだ…」

「早苗お譲~、睡眠は最大で8時間で十分じゃないですか。二度寝はよくないですよ」


 己の欲求を抑えつつ、俺は面倒なことにならないようにと、早速早苗お譲の身体を両手で持ち上げる。


「さ、行きましょうかお譲」

「ううぅ、眠い…」

「お譲~、早月お譲も帰ってくるでしょうし着替えも済ましておかないと俺が怒られるんですけど~…」


 昼になるのに未だに格好がパジャマなので早く着替えさせたいところなのだが…。俺は早苗お譲をすぐそばにある椅子に腰かけさせた。


「着替えさせてよ、時雨」

「はいはい……え?」

「めんどくさいし」


 着替えさせて…? KIGAESASETE?

 それは、俺がお譲の服を脱がし、服を着させるということなのか!?

 この少女は男に着替えさせられることに対し何も感情を刺激されないのか!? それともただのバカなだけ!? ただ面倒臭いことがどうしても嫌なだけで俺に着替えを任せるとでもいうのか!?


 ゴクリと俺は生唾なまつばを飲み込み、混乱した脳内を落ち着かせようと一度深呼吸をした。


「お譲……俺に着替えを任せてもいいのですか…?」


 若干シリアスムードのような俺の顔を見て、早苗お譲は眠たそうな目を少しだけ大きくし、可愛らしく小首を傾けてこう言う。


「執事なんだからそういうこともするものじゃないの?」


 ひゃっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!

 俺はこの約2カ月間の間執事の仕事を真っ当に行ってきたが、これほど嬉しいイベントが待っているとは思いもしていなかった! なんて素晴らしい職業なんだ執事というものだ!!

 双馬時雨そうましぐれ16歳、中学は男子校に通っていただけに一度もモテたことがない(小学校はあまり記憶はないので除外)。今までに溜まりに溜まった、女の子とイチャイチャラブラブしたいという欲求に追われ続けた毎日に今、やっと神様が俺にプレゼントを与えてくれたのだ!


「でわ……失礼して……」


 額から僅かに汗が滲み出ているのが分かる。

 俺は両手をゆっくりと早苗お譲が今着ているパジャマのボタンを外そうと僅かに膨らむ胸へと手を伸ばそうとする。

 ドクンと俺の胸の鼓動が激しくなる。俺は落ち着きながらパジャマの上のボタンからテンポよく外していき遂に露わになったのは…


「……早苗お譲……パジャマの下にシャツを着るなんて準備満タンですね…」

「明日着るのが面倒臭いからパジャマの下に明日着る服を着ておいた」


 うわああああああああああああああああああ!

 俺の欲求が弄ばれたあああああああああああああああああ!!

 ていうかこんなんことに気づかなかった俺もバカだったあぁぁぁぁぁぁ!!


「どうしたの時雨、そんな絶望した顔をして」

「……俺にとって最高の事態になる予定だったんです……」


 俺の答えに、早苗お譲は顔にハテナを浮かばせていた。

 …こんなことで落ち込んでどうする双馬時雨! 今まで女の子と一緒にいること自体殆どなかったじゃないか。昔の状況と比べると何十倍も良いだろ。美少女姉妹と言っても疑いようがない早月お譲と早苗お譲…それにここには全国の男の憧れと言っても過言ではないメイドさんも存在するというのだ! むしろ贅沢と言ってもいいこの状況…俺はそこに存在するだけで満足するべきなのだ。これ以上は贅沢過ぎる。

 俺は、もう一度自分の心に言い聞かせて、その場から立ち上がった。


「じゃあ早苗お譲、昼食の準備ができるので一緒に行きましょう」






   

                             ★






「おかえりなさい早月さつきお譲! おかえりなさいのチューしましょう! チュー!」

「しないわよ変態!」


 俺は早月お譲の身体にダイビングしようとしたら、顔面に右手に持っていたバッグを思い切り当てられる。痛すぎて眼から涙が出てくるが、無理矢理誤魔化し、震える体でこう言う。


「…は、恥ずかしがらなくてもいいんですよ早月お譲!」

「う、うっさいわね! 付き合ってもないのにキスなんてしたくないのよ!」


 恥ずかしいのは否定しないんだ。顔を少し紅潮させる早月お譲。なんて可愛い生物何だ。


「じゃあお譲、俺と付き合ってください! 否、結婚してください!!」

「あんた馬鹿!? 何で時雨と私が結婚しなくちゃいけないのよ! ふざけないでよ!」

「俺は本気です! 俺の早月お譲への愛は正真正銘本物なんです! この目を見て、俺が嘘を言ってると思いますか!」


 俺のセリフを聞いて早月お譲は俺と目を合わせた。そのお譲の眼はネコのように可愛らしい目だ。あぁ、可愛い、本当に結婚したい。あ、その前にエロエロなことがしたい。ペロペロしたいでござる!ござる!


「今何かよこしまな感じをした目になったわよ」

「な、何故わかった!? エスパーか!」


 しまった…少し感情を取り乱してしまったか…。

 俺は疑いの眼差しで俺をジッと見ているお譲から視線を動かした。俺の後ろでずっと苦笑いで俺らのやり取りを聞いていた笠神さんが口を挟んできた。


「時雨君、早月お譲様を口説き終わったなら早くお皿運んでくれない?」

「口説かれてないわよ!」


 必死で笠神さんの言葉を否定する早月お譲。可愛いな畜生め!


「で、早月お譲、結婚の日時ですが…」

「勝手に話を進めるな!! バカー!」


 怒鳴られてしまった。




主人公はオープンな変態ですが、俺は全然変態ではないです。

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