第19話 一緒にお風呂
風呂はいいな、1日の疲れを吹っ飛ばしてくれるようだ。それにこの屋敷に風呂は俺の家より大きめだ。銭湯くらいの大きさがあるので広々としていて快適だ。もしここで女の子が居たら最高だっただろうに。狭い風呂に女子いっぱいってシュチュエーションも最高だけどね!
「ふぅーめっちゃ気持ちえぇーなー」
湯船に浸かるとまるで爺さんのようなだらしない声を上げてしまう。
それにしても早苗お嬢はつれない人だなぁ、恥ずかしがる必要はないのに…まったく。今度は早月お嬢を誘ってみよう。楓さんもね。
「…で、何であなた達が入ってくるんですか?」
俺が目線を向けた先には見慣れた俺の先輩である鬼船さんと笠神さんが腰にタオルを巻いて風呂場に入ってくる。二人共逞しい体付きだ。
「何でって言われてもなー…いいじゃないか僕達が入っても」
「そうだぞ双馬、風呂は皆のものだ」
やめてくれよ俺そういう趣味はないんだよ…。俺は2人を避けようと浴槽の端に寄る。するとそれを追いかけるかのように2人は俺の傍に寄り付いてきた。や、やめろやああああ!! よるなぁぁ!
「何でこっち来るんですか!? やめてくださいよホント!!」
「良いではないか男同士であるだろうに」
「男同士だから嫌なんですよ!! 何すかこのホモホモしい感じは!!」
嫌よ! 俺はあくまでノーマルなの! 男にはまったくもって興味はないのよ!
「ホモ…? 何だそれは? ホモ・サピエンスのことか? ホモホモしいとは「お前何だかホモ・サピエンスみたいだな」見たいな悪口なのか?」
「解釈の仕方がおかしいですよ!!」
困った。一刻も早く風呂から脱出しなければ…! このままだと誰も得しないホモ回みたいな扱いにされて一生の黒歴史となってしまう!!
こうと決まれば早速風呂から出るしかない。俺は早速浴槽から出ようと立ち上がった。
「じゃあ俺そろそろ出るんで」
「え? 時雨君早くない? まだ入ってなよ」
「いやいや、俺もうのぼせそうなんで…」
「…まったくそのように見えないけど?」
「……じゃあもう少しだけ…」
俺は一旦風呂から出ることを諦めてもう一度湯船に肩まで浸かる。男と風呂になんて入りたくなんてないんだってばよ。修学旅行のときもすぐに風呂から出たしね。
何かものっすごいムサ苦しいんですけども…こんな男3人並んで風呂に入ってる図を想像してくれ。モノごっつムサイでしょ?
「ねぇ、笠神さん……この場で言うのも何なんですけど…ホモなんすか?」
「えぇ!? 何そのサプライズな質問!?」
「いや…だって………ねぇ?」
「いやいや僕は全然そっちの気はないよ!」
ふむ、笠神さんの言い分はまったくもって信用できない。今まで十分疑いがあったが……。このままだとこの小説は濃厚ホモコメディになりかねないぜ。いや、割とガチで。
「タダでさえ男同士が少し絡んだだけで「ウホッ」やら「アッー」やら「ホモォ」やら言われる御時世ですよ! そんな世にガチホモ勢がいたら大変なことになるでしょ!! 大炎上ですよ!!」
「…ひどいよ時雨君、僕は決してそっち系じゃないよ、ただ興味があるだけで」
「興味がある時点でアウトじゃないですか! つーかほんとにその気があったんですね!!」
「違うんだ! 僕にも言い分けさせてよ!」
何かいい訳があるみたいなので仕方ないから訊くことにしよう。
「あれは時雨君が屋敷に来る前の冬のことだった……」
笠神さんが語り始めた。おそらくこれは回想フラグなので黙って聞いておくことにしよう。
「僕がいつも通り仕事がひと段落したから使用人室で休憩を取ろうとしたんだけど、その時中央のテーブルにある1冊の漫画があったんだ…」
「そ、その漫画って言うのは…」
「純情ロマ○チカ」
「ワォ」
「……それで僕は息抜きにその漫画を読んだんだよ。最初は男同士の恋愛漫画だったからビックリしながら読んでたんだけど予想以上に面白くてはまっちゃったんだよね。それで大人買いしちゃったんだよね」
「えぇぇー!? それが理由ですか!?」
「きっかけは些細なことからって言うよね」
「それでホモっぽい性質が付いたのはまだ分かりますよ! でも何でその部屋に純○ロマンチカがあったのかということが私気になります!!」
「その件については僕にも良く分からないんだよ…」
どういうことだ? 使用人室にあったBL漫画…。
「鬼船さんのではないですよね」
「俺はそういったものに興味はない」
鬼船さんではない。ギャルゲーばっかりやってる人が男に興味を持つわけがない。もちろん俺でもないのだ……そうなると早月お嬢か早苗お嬢、もしくは楓さんだ。よく考えてみるとお嬢達が犯人という線は無いだろう。俺は毎日といって良いほどお嬢達の部屋を探索をしまくっているので今までBL漫画が見つかったということはなかったため犯人ではないだろう。
こうなると犯人はもしかして………いや、まさかな……。