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第11話 知らない方が幸せってこともあるよね

「で、ここを掃除する手伝いをしろっていうわけ?」


 面倒くさそうに言う早月お嬢に俺はいつもの調子でテンションをあげようとする。


「そうです! 昔お嬢達の使っていた玩具とかアルバムとかがしまってあるということなので整理を手伝ってほしいんです!」


 まぁ、これはそういう建前だ。笠神さんの言う呪いの部屋、後で聞いた話お嬢達の昔使っていた人形だとかいった玩具、アルバム、服がしまってあるそうだ。

 倉庫として活用しているこの部屋を少し片付けようという嘘の下に早月お嬢を連れ出し、中へ入るということらしい。


「でも今更この部屋を片付けるといったってね…笠神がやればいい話じゃないの?」

「忙しいんですよあの人は、ちなみに俺が1人でやることになったら昔の写真を見放題、お持ち帰り放題といったことになります。あと昔の下着」

「うん、私が手伝う。いや、手伝わせてください」


 何故か敬語で話しかけられた。正直なところこの部屋は個人的な理由で入りたい。いや、ふしだらな気持ち以外存在しないぞ。素直って大事。


「でも、なんでこの事を日が落ちてきた時に言うのよ…」


 早月お嬢は廊下に存在する窓の外を見て、もう一度面倒くさそうに目を細めた。


「まぁまぁ、細かいことを気にしないで」

「ちょ、ちょっと!?」


 俺は無理やり早月お嬢の背中を両手で押して部屋の中にいれた。

 ここで俺の任務は終了のお知らせだ。すぐさまこの部屋を抜け出すのだ。俺は体をUターンし、早月お嬢を一人残して部屋から出ようとした。

 が、しかし何故か部屋のドアが閉まった。そして鍵が閉まる音が聞こえる。


「「え」」


 早月お嬢と俺は息ピッタリ声があった。ここで俺は落ち着いて推測することにする。

 俺は早月お嬢を部屋を片付ける手伝いをしてほしいという建前で来てもらい、俺はこの呪いの部屋に早月お嬢を一人残して去るって話になっていたはずだ。

 こうして考え直してみるとすっごく酷い話だ。早月お嬢を暗い部屋に一人ぼっちで閉じ込めるなんて…。でも実際笠神さんがそこまでするほど鬼畜な人だとは思えない。

 つまり…。


「は…ハメられた…!?」

「え!? どういうこと!?」

「お嬢をあっちの意味でハメたわけじゃないです。いや、したいですけど」

「セクハラよ!! っていうかそんな勘違いしてないわよ!」


 お嬢に怒鳴られたので少し落ち着き。辺りを見回す。


「……」


 正直なところ暗くてあまり見えない。まだ外は明るい方なのだが、この部屋は光が当たりが悪い位置にある部屋なためほとんど光が差し込んでこない。電気を付けようとしたが電気はつかない。

 念のためドアを内側から開けようとドアノブに手を伸ばそうとしたが、そのドアノブらしきものが見当たらない。


「なるほど、内側からは絶対開けられないようにされてある…」


 完全にドアノブが外されてある。あぁクソ、まさか早月お嬢と俺をハメる作戦だったとは思いもよらなかった。

 どうしたものか。と俺は難しい顔をして考え込んでいると早月お嬢が俺の袖をそっと掴んで引っ張る。


「ねぇ時雨? さっきから何黙ってるの?怖いんだけど…」

「いや、これはお譲と暗闇でイチャイチャするチャンスなのではないかと思ってまして」

「あんたは何でそんなことしか考えられないのよ!?」

「エロスに一途なんです」

「意味がわからないわよ!!」

「…まぁ冗談はともかく」


 俺はわざとらしく咳払いを一つして緊張した空気を作り出し口を開いた。


「めっさ怖いんすけど」

「いい顔していわないでよ!!」


 平生へいぜいを保っていたつもりだったけどもう限界よ!

足がガクガク震えているのが分かるもん!! 冷や汗もいっぱい出てるし、どうしようこの状況! まさか自分もハメられるなんて思ってなかったから油断してた。


「助けて鬼○郎おおおおおおおおおおおお!!」

「妖怪は出てないわよ!?」

「ちなみに二期が一番好きです」

「聞いてないわよ! それにアンタいくつよ!?」


 俺の悲鳴も虚しく終わり、言い争いに疲れた俺と早月お嬢は二人床に座った。若干の沈黙が続いて、先に早月お嬢が口を開いた。


「ど、どうするの? 本当に出れないんでしょ?」


 不安そうに聞いてくる早月お嬢。何だかんだで俺のテンションに付き合ってもらったもののやっぱりお嬢も怖いのだ。

 俺は何か気が利いたセリフがないかと頭の中を探り続けるがエロいセリフしか思い浮かばない。どういうことだってばよ。まぁ正常な機能しているって印だけどね! 


「しばらく待ってれば開くと思いますよ…気長に待ちましょう」

「き、気長にって言われても…怖いよ…」


 早月お嬢は目尻に涙を浮かべ上目遣いで俺を見上げてくる。なんて可愛いんだ。こんなに弱った早月お嬢は見たこともないのですごく可愛く思える。長期間俺に理性が保てるか不安になってきたよママ。

 笠神さんは俺をハメたつもりなのだろうか? もしそういうつもりなら残念だったな! これは俺にとってご褒美と言っても過言でもないね! 早月お譲と二人きりでいられる上にいつもとは違ったお嬢の姿を見れるのはご褒美以外の何者でもない!!


「お嬢、安心してください。どんなことがあっても俺は早月お嬢の傍にいますよ」

「し…時雨…」

「だからエロエロなことをして怖さを…」

「余計なこと言わなければ少しは好感度が上がってたわよ!」


 俺の言葉を遮りお嬢が声を上げた。なるほど失言しなければこれから好感度上がる可能性があるのか。メモメモ。でも仕方ないんだ。俺はエロいことにしか目がないんだから。


「とにかくずっとこのままなんて嫌よ! 1秒でも早くここから出たいの!」

「そんなこと言われたってどうやって出るんですか?」

「それを今から考えるんでしょ!」

「えー」


 また面倒くさいことなことを言うなお嬢は…。

 怖いのは確かだけど逃げようがないじゃないか。ここは2階だから窓からも抜け出せない。ドアから出ようにしてもドアノブがないから開かないしどうしようもない。


「諦めるしかないじゃないですか。どう考えたって」

「うぅ…」


 しかし、このままだと早月お嬢が可哀想というのが俺の本心だ。ずっとこの怯えている姿を見ているのも実に興奮するが、この状況に耐えろという俺の理性のほうがむしろ可哀想だ。

 何か策はないかと俺はもう一度思索してみる。笠神さん達は恐らくこの状況を楽しんでいるに違いない。俺たちをハメるにしたってこの場合の加害者側は相手の反応を見てないと退屈だろうからな。

 だからあの人たちはどこかで見ている。もしくは聞いている可能性が高い。もしそうならこの空間から抜け出せる方法が一つあるかもしれない。あの人たちが簡単に騙されるような人であればの話なのだが…。

 俺は耳を傾けないと聞こえないほどの小さな声で早苗お嬢に声をかけた。


(お嬢、少し案があるんですが…)

「何よそれ?」

(静かにしてください、聞かれたら困るんで)

(ど、どういうこと?)

(今から言うことに従ってくれますか?)

(え…わかったわよ)

(えっとですね…)

「お嬢、俺もう耐えられません!」

「え!? どうしたの時雨!?(棒)」

「俺の理性が限界なんです! もうお嬢を襲わせていただきま!!」

「な、何考えてるのよ時雨! アンタおかしくなったんじゃ…(棒)」

「グヘヘヘヘッ! 優しくしてあげますから大人しくしてください!」

「い、いやああああああああ!! 誰か助けてええええええ!(棒)」






「「………………………………………………………………………………」」






 何とも言えない沈黙が続く。


「失敗しちゃいましたね、テヘペロ☆」

「結局何がしたかったのよ!!」

「いや~、お嬢が襲われる危機が迫ったら流石に笠神さんたちはこのドアを開けて俺を止めに来るかなと思ったんですけど」

「助けに来ないんじゃ意味ないじゃない!!」


 いやー、おかしいな。これは完璧だと思ったんだが相手にはこの策が通じてないようだ。もしかしてこのまま一日中このままとか無いよね? もう1時間くらい経っちゃってるけど…。


「本格的にどうすればいいか分からなくなってきたぞ~う~ん」

「もう、諦めて待ってるしかないのかな…」


 どんよりした空気を二人で醸し出していると暗闇の中で鍵が開く音が聞こえ、ドアが開いた。約1時間ぶりの明かりが俺たちを灯す。

 その光の先に見覚えのある二人の影があった。


「二人共お疲れ様」

「さ、早苗お嬢!」


 やっと外に出れると思ったら安心して力が抜けてしまった。

 ああ、1時間くらいの出来事だったのに何十時間も経ったかと思うほど長かった時間だった。


「早苗あんた…よくもやってくれたわね…」


 早月お嬢は拳をプルプル震わして殴るのを耐えていた。早苗お嬢の後ろにいた笠神さんが相変わらずの笑顔でこう言う。


「時雨くん。まさか自分もやられるとは思わなかったかい?」


 楽しそうに言う笠神さんを見て若干の苛立ちが湧いたのだが早月お嬢と二人きりで居れたので心の内に閉まっておくことにする。


「ホント、勘弁して欲しいですよ…でも案外早く開けてくれたんですね」

「うん、何か2人閉じ込めたはずなんだけど、カメラに何故か3人写っててさぁ」


 ………………………はい?


「か、笠神さん? 今なんて?」



「だから、早月お嬢様と時雨くんだけしかいない部屋に何故かもう1人女の人がいてさ」

「ま…まさか」


 カメラが使われていたのかということはひとまず置いておく。だがそのカメラに俺ら以外のもう1人いた!?

 俺も驚いているのと同様に早月お嬢も驚きの…いや、恐怖の顔を浮かべていた。


「笠神さん…」

「何だい?」




「今日一緒に寝てもらっていいですか?」



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