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第10話 強がりはいけないよな、うん

やっと夜になり、僅かではあるが涼しくなってきた。

俺たち使用人は11時以降は自由時間となっているので、とりあえず風呂を済ましてダラシがない半袖短パンの格好で肩にタオルを垂らし廊下をボーッと歩いていた。明日も早いので俺は自由時間と言えどすぐ寝ることにしている。しかしながら暑い中風呂に入ると異常に喉が渇くので厨房へ行ってとりあえず何か飲んでから寝ようと思っていた。


「ふぅ、俺の部屋と厨房離れすぎだっつーの」


薄暗い廊下を俺は独り言を言いながら寂しく歩く。流石にこの屋敷も電気を落とすと何か薄着味悪い…。

俺の部屋は小公○セーラの様に屋根裏部屋なのだ。そして厨房は一階なのでなかなかの距離を歩くことになる。

男たるものこんなことでビビっていたら女の子にモテないではないか。そんなことを思いつつ恐る恐る歩いてやっと厨房に着いた。俺は大きい冷蔵庫を開け、その中にある牛乳を取り出した。


「ふぅ、寝る前は牛乳だな」


 俺はコップに注いだ牛乳を一気に飲み干した。そのままコップを水で洗い。自分の部屋に戻ろうとした瞬間、後ろから足音がした。

 その音を聞いて俺は体が少し硬直した。やばいよこれ、怖いよマミー助けて! 心の中で虚しい悲鳴を上げる。俺こんな年になって幽霊だ何だに怖がっていられるか! 畜生!

 恐怖で怯えている俺の心を無理やり押し込み、勇気を出して後ろを振り返った。


「何だ、誰かと思ったら時雨だったんだ」

「早苗お嬢だった!!」


 俺は安心と何か残念な気持ちもあり大声を上げてしまった。よかったよかった。可愛い女の子で。


「こんな遅い時間になんで厨房なんかにいるんですか早苗お嬢!?」

「なんでって、お腹がすいたからかな?」

「なんで疑問形!? っていうか夕食すっげぇ大量に食ってましたよね!? その小さい体のどこにでかい胃袋があるんですか!? 体を触らせてください!」

「さり気なくセクハラしないで」


 さっきまでの恐怖が嘘のように消えてしまった。嗚呼、女の子は素晴らしい。


「時雨はさっきまで何やってたの?」


 早苗お嬢はそう言い放ち、小首を可愛らしく傾ける。


「俺は風呂上がりに何か飲もうと思ってきただけですけど」

「ふーん、何か凄く怯えて見えたんだけど」

「え? いや、全然そんなんじゃないですけど!!」


 俺は図星なことを言われて俺は焦った。そんな恥ずかしい場面を俺は見られてしまったとは男として恥ずかしい!


「そっか、じゃあ私はもう部屋に戻るね」

「そ、そうっすか…おやすみなさい!」

「おやすみー」


 そうお互いに言い合い早苗お嬢は部屋に戻っていった。という訳でまた俺は独りになった。


「俺も、部屋に戻るか…」


 なんというか正直、怖いので部屋に戻ることにする。っていうか早く部屋に帰りたい。再び俺は薄暗い廊下を歩いて行く、そのまま2階へ通じる階段を上った。2階はお嬢たちの部屋があるので時々潜入したりする。みんなには内緒だよ。

 屋根裏部屋の階段は2階の別のところにあるので俺は2階の廊下を歩き始める。すると俺は一番奥にある部屋に目が行った。

 笠神さんが言うには呪いの部屋という何とも恐ろしい響きの部屋である。笠神さんは幽霊が出ると嘘を言ったが実際のところどのような理由で呪いの部屋と名付けられたか不明である。そもそも本当に呪いの部屋という名前自体が嘘なのかもしれない。でももし、もしも幽霊とかがいたらと考えるとやばいんじゃないか?

 ってこんなこと考えてるとまた怖くなるじゃないか!もうこれ以上変なことを考えるのはやめよう! 俺は心の中でそう突っ込んでいると後ろから何者かに急に抱きつかれた。


「きゃああああああああああああああ!」


 俺は何とも女々しい、何ともだらしない声を上げてしまった。誠に恥ずかしい。しかしそんなことは言ってられない。急に何者かに抱きつかれたのだ…まさか…まさか…


「やっぱり怖がってるじゃん時雨」

「早苗お嬢だった!!」


 俺はもう一度同じような反応をしてしまった。またもやこの女の子に驚かされてしまったのである。


「さ、早苗お嬢! やめてくださいよ! 心臓が止まるかと思ったじゃないですか!!」

「いや、まさかこんなにびっくりするとは思わなかったんだもん」


 そう言い、早苗お嬢は俺に抱きついていた腕を離した。幽霊とかじゃないと分かっていれば凄く抱きつかれたことは凄く嬉しかったのに…。俺は心臓の鼓動が弱まってきたので、一回息を吐いて口を開けた。


「もしかして俺のこと待ち伏せてました?」

「うん」


 やっぱりか! クソ…すっげぇ恥ずかしいんですけど! 俺は恐らく赤くなっているであろう俺の顔を隠すように体を縮める。


「俺すっげぇ恥ずかしい思いしたんで早苗お嬢の裸見せてください」

「え? なんでそういう流れになるの?」

「お互い恥ずかしい思いをするということで」

「よくわかんないよそれ」

「はい、俺もよくわかりません」


 とりあえず部屋に帰りたい。

 明日は早いのだ。それに明日には例のことを実行するらしいのでその準備をしなくてはならない。


数時間前


「お嬢たちに面白いことですか?」


 俺の質問に笠神さんはコクリと頷く。


「正確には早月お嬢様にだけどね、早苗お嬢様がこの計画を立てて僕たちと協力してやろうって話になったの」

「それで何をするんですか?」

「さっきも言ったけど、夏にはホラーなことしたいなって思ってさ早月お嬢様を少し驚かそうって」

「へぇ~、それは面白そうですけど早月お嬢は幽霊とかそういう類はどうなんですか?」


 笠神さんは面白いものを見るような顔で


「すっごく苦手」


 やっぱりそうだったか…苦手そうだもんねあの子。しかしながら女の子一人をこうやって驚かすのは少し可哀想なのでは…


「懐かしいな~、一年前冗談で驚かしたら僕に飛びついてきたんだもん」

「是非やりましょう!!」




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