だからこそ、少女は進む …5
光球と化した十字架がひゅんひゅと音を立てている。
「くッ……手前ぇ……」
「ふはは……光球からは逃れられない。貴様らには所詮最初から勝ち目などないのだ」
“支配者”がにやり、と顔を歪ませる。こちらは笑っている。
「……“鍵”よ」
「……ッ!」
数秒してから自分が呼ばれたのだと気付き、身を竦ませる。
「お前は解ってない。自分が如何ほどに重要な存在なのか、どれだけの力を秘めているのかをな」
「力……? そんなもの、無い」
自分は無力で非力な高校生でしかない、はずだ。
「違うな。やはりお前は解っていない」
「でも……」
「止めろ、戌海。こいつと問答しても仕方ない、無意味だ!」
浅滅がなおも言おうとする私を制する。
「ふふ、こちらとて、つまらない押し問答などをしている場合ではないのだ。試合の駒は揃った。まずは、“鍵”を頂いて行く」
そう“支配者”が言った次の瞬間、光球がひときわ強い光を放った。
「なッ!? 待て!」
浅滅が叫ぶ声が遠のいていく。
光で視界が真っ白になり、一瞬で意識を持って行かれた。
「……クソっ!!」
「ふふ、先手は取った。せいぜい貴様らはあがき続ければいい。そうでなければ、ゲームは面白くないからな」
そう言う“支配者”の低く、響く嗤い声が耳に残り、
私の意識は、闇に堕ちた。
ようやく次から、響輝君のターンです。