だからこそ、少女は進む …4
恐い。これは、恐怖なんてものではない。
全身から堕ちた悪意を波動のように放つ、黒ローブの男。
まるで、最悪の体現のようだ、と言うべきか。
「くっ……」
浅滅が顔をゆがませる。
「ふん、“魔弾”よ。限界の近いお前など私の敵ではないということが解らないのか? わざわざ“鍵”を連れてきたことには感謝するべきなのだろうが、な」
「ハッ……。うるせえよ、俺は決着を着けるまでは死ねない。絶対にな」
「ふ、ははは、ははははははは……」
男のやむことのない嗤い声が再び響く。
「お前は何も解っていない、解ってない。所詮人間如きに我々を根絶させることなど出来ないのだ。“我々”と貴様たちは捕食者と被食者の関係にある。それは覆すことの出来ない、世界の法則だ」
「ふははは、笑いが止まらないぞ“魔弾”よ。今の貴様に何ができる? 罠に飛び込むような真似をして、生きて帰れるとでも思っているのか」
「五月蠅いっつってんだろうが! “支配者”、手前には関係ない」
「ふはは、だろうな。貴様との決着も今回で着きそうだ。だが……」
“支配者”と呼ばれた男が右手を空中に上げた。
「貴様とはここでお別れだ。せいぜい他の綻びを捜して彷徨うがいい。だが……、貴様のことだ。“街”に入ってくるのも時間の問題だな」
その手の先から、金属の小さな十字架の様なものが出現した。
その十字架は虚空に浮かび、ひゅんひゅんと回転を始めた。
「ふふははは、貴様ら人間だけが進化しているわけではない。“我々”だって、進んでいく」
高速回転をする十字架がしだいに白い光を帯び始める。
光はすぐに、目をそらしたくなるような閃光に変わった。
「……ッ」
断続的に続く光に、思わず目を瞑ってしまう。