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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
五章 Incident of~そして奴と遭遇する~
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だからこそ、少女は進む …3

 しばらく延々と続く草原を歩き続けていたが、ふと。


「……?」

 目の前の景色が揺らいだ気がした。


「見つけたぞ」

 浅滅はそう言うと、先ほどよりも速度を上げて歩き始めた。


 私はあわててそれに着いて行く。

「『見つけた』って、何をですか?」

「次元の綻び(・・)だ。……いいか?」


 浅滅は立ち止まると、前を見据えたまま話し出した。

「今、龍ヶ峰という街はここに存在している。日が立てば“移動”するが、まだこの場所に留まっているのだ。別の空間に存在しているが、な」


「……ここにあるが、ここに無い」


「そうだ。今この空間は矛盾に溢れている。存在自体がなかったことにされた街、無かったことにされた記憶、人間。歴史修正(タイムパラドックス)は今も行われている。だが、その世界の作業中に隙が出来ることがあるのだ。それを、“綻び”と呼ぶ」


 “綻び”……。そこに突け入れば、“街”に入ることができるのだろうか。

「その通りだ」

 そう言うと、浅滅は再び歩き出した。



 風景が陽炎のように揺れていく。

 そうしていると、揺らいでいく視界の先に見えたものがあった。


 草原の中の小高い丘。その上にぽつんと建っている、一軒の、

「教会……?」

 である。


 それを視認した瞬間、景色の揺らぎがぴたりと止まった。

 目の前には丘。教会。


「罠……か」

 見ると、浅滅は状況を楽しむかのような顔をしていた。

「ふざけやがって……!!」

 違った。怒っていた。


「……行くぞ」

「え、でも……」

 罠なのではないのか。


「“街”を囲われた時点で俺達側は不利な状況に立っているんだ。罠と分かっていても、行くしか道はない」



――――――――――――――。


 その教会は、本当に小さなものだった。

 ただ入口の扉は豪勢な彫りがなされており、侵入者を阻むような、そんな印象を受けた。


 その扉を浅滅が蹴り開ける。

 

 中には誰もいない。

 静寂。


「おい、クソ野郎。いるんだろうが、出てきやがれ!」

 浅滅が教壇の方を向いて叫んだ。


 しばし静寂。


 そして、それを破る、嗤い声。


「ふふ、ははははは……」

 地の底から響いてくるような低い声がしばらく鳴り響き、

「その姿は“魔弾”か。まだくたばっていなかったとはな、正直驚きだ」

 と言いながら、前方に、男が姿を現した。


 黒いローブに身を包んだ、西洋系の血の入っている男……。

「うぅっ……」

「どうした!?」


「あ、頭が……」

 痛い。頭痛がする。


 既視感……いや、そんなものではない。

 私は、この男が、恐い(・・)……!!


 

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