だからこそ、少女は進む …1
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「……着いたぞ」
「着いたぞ、って……言われても……」
車はいくつか山を越え、山道を走り、海辺の舗装されたアスファルトの上を走り続けた。
そして、そろそろ半日経ったかなーと思いだしたところで、浅滅は車を停めたのである。
窓から辺りを見回すが、右は山。というか緑。
左は海。遠くには海岸線。
「あの……」
「何だ」
「一つ良いですか」
「何だ」
「……ここ、何処ですか?」
浅滅はしばらく黙ると、
「……ここは五日前まで龍ヶ峰市だった場所だ」
と言った。
……“だった”。
過去形なところがしっくりこない。
……あれ? 過去形なところが……って、どこかで感じたような。
またデジャヴだ。
抜け落ちた記憶。
既視感。違和感。
なんなんだろうか。なんなんだろう。
「今、街は存在していない」
「どういうこと……」
浅滅はまたしばらく黙る。
「そのままの意味だ。奴らは狩り場を決めると、まず時間をかけて街を浸食し、その後に街を自分たちのフィールドに映すのだ。結論から言うと、今、街は異空間にある」
異空間……。
異なる空間。つまり、この世界には、空間には存在していないということか。