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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
五章 Incident of~そして奴と遭遇する~
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それでも少女は求め続ける …7

 長い悲鳴が続いた。


 首を絞めつけられた警官たちのその声がしだいに小さくなって、かすれ声のようになっていく。

 ……吸われているのだ。感情を。


 首を締め付けることによって、死への恐怖を誘発させているのだと分かった。


「恐怖……恐怖、恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖、恐怖!!」

 “昆虫”の頭部が()じ切れそうに上や横を向く。


「最高だ……。ふぶぶふぶふ……」

 既に二人の警官はぐったりしており、その顔に生気は無かった。


「次は、お前の番」

 急にその緑色の複眼をこちらに向け、“昆虫”が流暢なしゃがれ声で云った。


「うう、く……」

 目の前で人がいたぶられている。それも、怪物に。

 冗談じゃない、精神的には十分すぎるくらい香辛料だ。


「っく、い、嫌……」

 こちらを見続ける複眼から目が逸らせない。だんだんとその眼が近づいてくるかのような錯覚を覚える。

 一歩、また一歩、怪物がこちらに近づいてくる。


 今思い出した、若干カマキリに似たその頭部のアゴから粘液が地面に滴る。

 どれもこれも、この化け物を構成する“全て”が、人間の恐怖を呼び起こすためのものでしかない。

 奴らは姿形をターゲットの恐怖するものに変化させる、と浅滅は言っていた。


 つまり、“恐鬼”にとっては、それらの取りうるありとあらゆる姿は仮初のものでしかなく、本当は、そもそも実体が無いのである。

 かちかち、とアゴがぶつかりあい、目の前の餌――私のことだ――を襲うのが今か今かと待っている風だった。


 恐怖を抱いてはいけない、と思いつつも、心の中に溢れてくる負の感情を止めることは出来なかった。

「そうだ、恐怖だ。もっと……もっと!!」

 “昆虫”の頭がアゴをかちかちとぶつかりあわせながら、叫ぶ。


「嫌ああああああああ!!」

 それにつられて絶叫が口から出てしまった。

 それに呼応するように、恐怖がさらに高まっていく。

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