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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
五章 Incident of~そして奴と遭遇する~
82/261

but 少女は善と悪に乱れ …7

 続いて、がしゃっという音……リロードの音だ……がし、再び同じ銃声が身耳を貫く。

 

「――――ッ!」

 痛い。耳が壊れそう……。


「我慢しろ! 死にたくなければな」

 浅滅が銃の側面に付いているレバーを引く。

 先ほどと同じがしゃっ、という音とともに、空になった薬莢が飛び出す。

 ……そして、それは乾いた音を立ててアスファルトの上に落ちた。


「うう……」

 痛む耳を押さえながら、ようやく立ち上がり、タクシーを見ると


 ……タクシーの側面は穴だらけになっていた。

 冗談や酔狂ではない。文字通り、穴だらけ(・・・・)だった。


「え……」

 先ほど狂声を上げながら私たちに襲いかかろうとしていた“蕾”は、粉々になったガラスの向こうで、これまた粉々になって車内の座席に飛び散っていた。


 向こう側の窓ガラスには、おそらく“蕾”の体液であろう緑色の毒々しい液体が飛び散っていた。


「あ、あの……」

 浅滅の方を向こうとすると、

「ハッ……」

 彼は再び銃を構え、弾を詰めている。

 そして、また銃声。


「きゃあッ!」

 銃声。

 

 また銃声。


 ……静寂。



「うっ……うっ……」

「泣くなおい、しっかりしろ!」

 気がつくと、浅滅が私の肩を揺さぶっていた。

 頭が痛い。

 まるで後頭部に重りを付けられたかのような、じわじわと染みてくる鈍痛。


「頭が……痛いです……」

 そう言うと、浅滅は少し顔をしかめた。

「……最初はそんなもんだ。慣れろ」

「慣れろって……」

「すぐにこれを何度も聞く事になる。覚悟を決めろ。理不尽だとは思うが……な」

 そう言うと、浅滅は立ち上がった。

 私も立ち上がる。


 すぐに、きつい油のような臭いが鼻をついた。

「……?」

「急ぐぞ。走れ!」

 そう言うと、浅滅は私の手を掴み、走り出した。


 ……あれ? なんだろう……。

 また何か、既視感が……。


 そう思いながら後ろを振り向くと

「―――――!」

 

 タクシーは、後部座席のすぐ後ろ――すなわち、エンジンの辺りから黒煙を上げていた。


 これはさすがに自他共に認める機械音痴の私でも分かる。

 このままでは、このタクシーは爆発する……!

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