but 少女は善と悪に乱れ …7
続いて、がしゃっという音……リロードの音だ……がし、再び同じ銃声が身耳を貫く。
「――――ッ!」
痛い。耳が壊れそう……。
「我慢しろ! 死にたくなければな」
浅滅が銃の側面に付いているレバーを引く。
先ほどと同じがしゃっ、という音とともに、空になった薬莢が飛び出す。
……そして、それは乾いた音を立ててアスファルトの上に落ちた。
「うう……」
痛む耳を押さえながら、ようやく立ち上がり、タクシーを見ると
……タクシーの側面は穴だらけになっていた。
冗談や酔狂ではない。文字通り、穴だらけだった。
「え……」
先ほど狂声を上げながら私たちに襲いかかろうとしていた“蕾”は、粉々になったガラスの向こうで、これまた粉々になって車内の座席に飛び散っていた。
向こう側の窓ガラスには、おそらく“蕾”の体液であろう緑色の毒々しい液体が飛び散っていた。
「あ、あの……」
浅滅の方を向こうとすると、
「ハッ……」
彼は再び銃を構え、弾を詰めている。
そして、また銃声。
「きゃあッ!」
銃声。
また銃声。
……静寂。
「うっ……うっ……」
「泣くなおい、しっかりしろ!」
気がつくと、浅滅が私の肩を揺さぶっていた。
頭が痛い。
まるで後頭部に重りを付けられたかのような、じわじわと染みてくる鈍痛。
「頭が……痛いです……」
そう言うと、浅滅は少し顔をしかめた。
「……最初はそんなもんだ。慣れろ」
「慣れろって……」
「すぐにこれを何度も聞く事になる。覚悟を決めろ。理不尽だとは思うが……な」
そう言うと、浅滅は立ち上がった。
私も立ち上がる。
すぐに、きつい油のような臭いが鼻をついた。
「……?」
「急ぐぞ。走れ!」
そう言うと、浅滅は私の手を掴み、走り出した。
……あれ? なんだろう……。
また何か、既視感が……。
そう思いながら後ろを振り向くと
「―――――!」
タクシーは、後部座席のすぐ後ろ――すなわち、エンジンの辺りから黒煙を上げていた。
これはさすがに自他共に認める機械音痴の私でも分かる。
このままでは、このタクシーは爆発する……!