さすれば少年は目を覚ます …4
少女は続ける。
「恐鬼の存在は古くから様々な方法で人から人へ伝えられてきました。神話に登場する怪物や、昔話。日本の有名どころを言うなら、『羅生門の鬼』に登場する“酒吞童子”や、各地に語り継がれている妖怪や幽霊、そのすべてが恐鬼の一種です」
……昔から語られている化け物の全部が奴らだと言うのか?
「はい。……考えても見てください。怪物や妖怪、幽霊、UMA、どうしてこんなにも見た目や特徴でこれらの存在が区分されているのか」
正体がわからないからだろう? 分かりやすく区分するにはそうやって呼び名を変えるしかないだろうが。
「その通りです。奴らに共通しているのは、正体がつかめないこと。我々生物は細胞や原子などの源と言えるものがあります。奴らにとっては実体が無く、いずれも怪談や怪異譚を聞いた人間の恐怖心を喰っている、ということが存在としての前提なのです」
……なるほどな。
「勿論、恐鬼のような存在を知る人間も昔から存在しました。“感情”というものは不安定です。ですから、それと対となる存在である“恐鬼”もとても不安定なのです。だから、奴らの中にもターゲットとした人間に応じて、時折イレギュラーな存在が現れます」
一瞬偽魔女の狂った笑い声が脳内にリフレインする。
「この街ではどいつもこいつも堂々と襲ってきているが、どういうことなんだ?」
「それはこの閉ざされた街が奴らの狩り場だからです。……普段から積極的に感情を喰おうと人に接近してくる恐鬼も存在します。本来は姿を現さずに影に潜んで感情をちまちま喰うだけの存在だったと言われていますが、その世の中のバランスを崩したのが、俗に言う“鍵”の存在なのです」
……どういうことだ?