さすれば少年は目を覚ます …1
過去話はいったん終わりです。
――――――――――――――――――Re:Re:HIBIKI side
――――痛い。
頭が痛い。
どうしようもなく身体じゅうも痛い。
……痛みを感じている、ということは、俺はまだ生きているのか。
目を開ける。
視界に入ってくるのは、街の上空を覆っている赤黒い雲。
……ああ、そうか。
次第に記憶が戻ってくる。
……たしか俺は、戌海を逃がして、偽物から逃げるために橋から飛び降りたんだった。
ゆっくりと身体を起こす。
背中にこびりついている砂がさらさらと落ちていく。
……どうやら俺は海に落ちて流されたにも関わらず、街から出ることも無く、街の中の浜辺に打ち上げられているらしい。意外にしぶといな、俺。
『……む、起きたか』
ハーテッドの声がする。
そういえばこいつ防水性だったな。すっかり忘れていた。
『ちょっと待て。それでは貴様、我が壊れるの前提で動いていたのか?』
ああ、ザッツライト。
『…………』
……冗談だ。
『やめてくれ、一瞬画面が真っ暗になった』
洒落にならないからやめろ。
周りを見渡す。
やはりどこかの海岸だ。この街で浜辺があるといったら確か……。
『南区だな。遊泳可能な区間は確か南区の浜辺だけだ』
やはりコンピューターは役に立つ。現代人とは切っても切れない関係にあるといっても過言じゃないだろう。
……で、だ。
あまりにも非常識というか、風景にそぐわないから必死になって無視していたのだが、どうしてこの閉ざされて現在進行形で化け物増殖中の街の浜辺で魚を焼いている人間がいるんだ?