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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
四章 Losing games~そして負け試合は始まる~
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だから少年は冷たく歪む …3

 狂人はまず、姉さんの口を塞いでいたガムテープを剥がした。

 

 げほ、げほ、と姉さんが咳き込む。

 続いて、男は俺を柱に縛りつけていた縄をほどいた。

 俺は逃げようとするが、すぐに狂人にはがいじめにされる。


 そして、狂人は懐から大振りの中華包丁を取り出し、こう言った。

「 殺せ 」

 と。



 殺せ……。言葉にするだけなら簡単な二文字表記だが、その一言に込められていたのは、紛れもない狂気だった。

 

「厭だ!」

 と叫んだつもりだったが、俺の口はガムテープに塞がれたままだったため、ろくに声も出せなかった。


 狂人が後ろから左腕で俺の首に回し、右手で俺の手を覆うようにし、それと同時に俺の手に包丁を握らせた。


 さすがに何をしようとしているのか予想はついた。

 俺は半泣きになりながら、狂人の腕に噛みついたり、足を蹴りつけたりしたが、何をしても男はうわの空で、

「ころせころせころせころせころせころせころせころせ……」

 と呟くばかり。

 足が一歩、また一歩進んでいく。


 そこで俺はここ数日で初めて姉さんの顔を真正面から見た。

「――――――!」

 姉さんは泣いてなどいなかった。

 口を引き結び、強い表情でこちらを見つめていた。

 姉さんは人一倍心の強い人だった。それは弟である俺が一番知っていた。

 

 あんな状況でも絶望に打ちひしがれたりせず、自我を保っていた。

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