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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
四章 Losing games~そして負け試合は始まる~
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だから少年は冷たく歪む …1

ここからしばらく響輝君の過去話、すなわちは彼が歪んだ理由の話になります。

――――――――――――――――――――――Re:HIBIKI side


 ――――夢を見ていた。ああ確か、あの日の朝も俺は良い夢を見て、気分良く起きたんだったな。


 小学三年生の冬。俺はその日その時まで、近所でも評判になる程、活発で元気で無邪気な子供だった。……と記憶している。


 そう、あの日までは。


 前述したとおり、俺には姉がいた。名前は巽野茜たつみやあかね

 俺が小三の時に十七歳だったから、もし今生きているなら、二十三歳くらいになっていたことだろう。


 その頃、親父は新技術を生み出し、努めている会社の上層部に一気に昇進した。若手なだけに、期待も大きかったのだろう。


 だが、中にはそれを妬ましく思っていた奴もいたのだ。

 そして、そいつは嫉妬と嫌悪のあまり、やってはいけないことをした。


 それが、“巽野家の長女、『巽野茜』の誘拐”。

 しかも、のちに分かったことだが、それを裏社会のコネで、他人に依頼してやらせていたのだから、性質タチが悪い。

 ……いや、本人がやればいい、という話でもないが。


 まあ、人に頼んでやらせたのだから、いろいろと不具合が生じたのは至極当然のことと言えるが、依頼した相手、こいつもまた性質の悪い狂人だったのだ。


 その生じた不具合の中に最大の誤算があったとするならば、それは、“弟である『巽野響輝』に間近で姉の誘拐現場を見られてしまった”ということに他ならないだろう。


 当時の俺は十歳にも満たない子供である。車に押し込められようとしていた姉を見て、

「茜姉ちゃん!」

 と叫んでしまったことも責めようのない事ではあるが、結果的にはそれがまずかった。


 姉さんも一生懸命抵抗していたが、誘拐を依頼されていた狂人は男だったため、力で勝てるはずもない。たちまち俺は姉さんもろとも車に押し込められ、中で身体を縛られた。


 叫ぼうにも、運悪く人通りの無い道路だったし、すぐに口もガムテープでふさがれた。


 そして、俺と姉さんの地獄のような二日間が幕を開けたのだ。

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