そして少年は到着する …5
なぜ……、こんな真夜中に人が…いや人骨が……。
なぜ、“あれ”は身じろぎせずに隣家を見つめているのか……。
なぜ……
何故……
ナゼ………。
「なぜ……」という自分の声が脳内でエンドレスリピートを始める。
次第に前の街での記憶の一部がフラッシュバックを始める。
俺の手に握られた中華包丁。血の滴る俺の狂気な凶器。
目の前には血みどろの既にモノと化した……
「……馬鹿げてる」
『何が』
意味もなくつぶやけば、少しずつ心臓の鼓動が穏やかになっていった。
ゆっくりと立ち上がると、カーテンの端を握る。
少し迷い、思い切って開いた。
暗い道を見下ろす。
が、そこにはもう何も立っておらず、舗装された道路が淡い光に照らされてあるだけだった。
隣家のほうは相変わらず静まり返っている。
……当たり前か。こんな時間に起きているはずもない。
さて、冷静キャラが戻ってきたところで沈着に考えてみよう。
よく考えるとあれの髪の毛はただ頭部にへばりついているだけだった。
なんせ骨だからな。
全く、何の冗談だ。畜生め。
独りでぶつぶつ呟いている俺に、ハーテッドは何も云わない。
俺はやはり、あの二日間のせいでちょっとおかしくなってしまっているらしい。
あんな異常な事態を見ても、数分で平静を取り戻している。
……考えるのはやめよう。もうそろそろ狂いそうだ。
カーテンを閉め、再三、ベッドへ倒れこむ。
ハーテッドが『何なのだ、お前は……』と呟いた気がしたが、今は眠りたかった。