しかし前も後ろも塞がれて …4
「ちっ……」
前と後ろが塞がれた。
響輝君が自転車を止める。
どうするつもりなのだろう。このままでは挟まれて、あの霧の中に居る『何か』と闘わなければならない。
『さあ、どうする響輝。……といっても、貴様にとっては一つしか選択の余地はないんだったな』
ハーテッドが言う。
「……前を突っ切るぞ」
「うん」
……何か、ハーテッドの一言が気にかかった。
響輝君には選択の余地がない……?
自転車が速度を増す。
前方の霧に突入するまで10メートルもない。
――――次の瞬間、視界が真っ白になった。
右も左も濃く、白い。
「目を瞑ってろ」
響輝君が呟く。
「うん……」
自転車が右に、左にと蛇行しながら進んでいく。何かが蠢く音が聞こえる。
響輝君は何を見ているのだろう……。
2分くらい経っただろうか。自転車がブレーキをかけられ、止まった。
「もういい。目を開けろ」
目を開けると、周りの霧が薄く、白にぼやけていた。
前方にあった霧を通り抜けかけているらしい。
はあ……はあ……、と響輝君が肩で息をしながらこちらの方を振り返る。
『及第点……といったところか。まあ、後は無いがな』
「上出来さ」
響輝君が自転車を降り、私も一緒に降りる。
後ろを振り向くと、少し離れた所から奇妙なものがこちらに向かって動いてきていた。
地面から煙というか、靄のようなものが生えているような、人型の物体。
頭部に黄色く光る小さな丸いものが付いていた。……目のようなものだろうか。