しかし前も後ろも塞がれて …2
「響輝君は何か見たの……?」
……言えるか。偽物のお前に騙くらかされて、フラグ立ちを腰の端末が予言してたなんて言えるか。
「まあ、ちょっとな」
「そう……なんだ」
後いくら不安定だからって腕を回すな締め付けるな痛いだろうが。
予想はしていたことだが、ウェストブリッジの四車線には、車が一台も走っていなかった。
……走っていなかっただけで、ひっくり返っているのが一台あったが。
夕日が沈みかけている。橋の上に伸びている電灯が次々と点いていく。
……逢魔が時といったか。そろそろ奴らが動き出すころだ。
橋の中間に差し掛かった時だった。
「響輝君……」
戌海が後ろを指さす。
振り向くと、橋の街側から濃い霧が迫ってくるのに気が付いた。
やばいな。さっさと前に行かなければ。
「スピード上げるぞ」
ペダルに力を込める。
しばらく早めに走っていたが、また、気が付いた。
……前からも、つまりは街の外側からも、白く濃い霧が迫ってきていた。
「……くっ」
こいつは予想外だ。一本取られたな。
霧の中に良く目を凝らすと、いくつかの黒い影が見えた。
……あの霧の中に何体もの怪物がいるなんて、……想像もしたくないな。




