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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
三章 Getaway run~そして始まる逃避行~
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そして始まる逃避行 …5

 ……ただ問題なのは逃げ場がないことだ。ここで相手をするしかないな。

 ポーチからバタフライナイフを取り出し、刃を開く。


「来い。相手してやる、蜘蛛野ろ……おぉっ!?」

 格好いいこと言おうとしていたら、いきなり部屋のドアが開き、中に引き込まれた。


 思わず床に尻もちをついてしまう。

「……何しやがる」

 見上げると、戌海琴音が泣きそうな表情で立っていた。


「駄目だよ、響輝君。あんなのと闘ったりしたら……怪我しちゃうよ」

 もうしてるっつーの。


 戌海がはっとしたような様子で箪笥をさぐり始めた。

 そして、中の箱から包帯と消毒剤を取り出す。


「傷、見せて」

 しぶしぶ腕を差し出す。


 消毒剤をつけ、肘のあたりにある傷に包帯を巻きつけられる。血は止まりかけていた。というか、痛い。


 どん、と部屋のドアに何かがぶつかる音がした。

 どうやらドアを破ろうとしているらしい。


 立ちあがって近くにあった本棚をずるずると押し、ドアの前に置く。これでしばらくは大丈夫だろう。


「ちょっとどけ」


 戌海の部屋の窓を開け、下を見る。

 すぐ下に、一階の窓のための雨よけが付いていた。その先に、高めの塀。

 ……なんとか脱出はできそうだな。


 改めて戌海琴音に向き直る。

 休んでいる間はほとんど寝ていたらしく、水色っぽいパジャマを着ていた。


「はっ……」

 戌海が慌てたように自らの風貌を確認する。


「ひ、響輝君。ちょっと後ろを向いててもらえるかな」

 戌海が引きつったような笑顔でこちらを見た。心なしか顔が赤いのは俺の気のせいだと信じたい。


 というか、何でだ。

「……いいから、後ろ向いてて!」

 ……へいへい。


 部屋の隅っこに行き、角の方を向いて体操座りをする。一度やってみたかったのだ。


『おい、響輝』

 この期に及んで何の用だ、このポンコツ。

『……さあ、今すぐ後ろを向くのだ。さあ』

 お前は変態か。さすがの俺でも衣擦れ音で着替えてるって気付くわ。

『……チッ……』

 チッ……て何だ、チッて。ついにお前は変態ロボにまで成り下がったのか。さすがにフォローしきれないぞ。


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