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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
二章 Encounter with~そして終わりは訪れる~
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それでも少年は冷酷で …10

 何回もそれを繰り返していると、さすがに身体が疲れてくる。


 “戌海琴音”の方は息切れさえしていない。畜生め。


「――――でもね。ここで“私”をたおしても、もう遅いんだよ」


「……何だと?」

 話しかけてくるとは意外だった。


 一歩退き、体を休ませる。


「もうすぐこの街は外界から遮断される。この街で生き残っている人は、じっくり、じっくり、浸食されていく」


 ……この街が閉鎖状態になるとでも言うのか。


「そうだよ。閉ざしてしまえば、もう“私たち”を止めるものは無くなる。街は化け物だらけになるわ」


 袋のネズミ……というわけか。

「よくわかっているね。その通りだよ」

 そう言うと、“戌海琴音”はけらけらと笑う。


「お前は……何なんだ……」

「私? 私は“私”。“私”はあなたの一部。あなたの恐怖が生み出した、幻影」


 俺の一部……。


 さっきこいつは、俺が最も恐怖しているのは、、身近な人に真実を知られることだと言った。

 

 ……つまり、何だ。つまりこいつは、妄言で俺を惑わし、この教室で意識をじわじわと奪っていき、 その言葉で俺を絶望に堕とそうとしていたのか。


 いや、そんなことよりも、俺の『身近な人』、それが母でも親父でもなく、戌海琴音だったことに驚きだ。

 俺はアホか。そんなに戌海に思い入れがあったのか。


 ……まあ、そんなことはどうだっていい。


 

 身体の疲労と相まって、自分の殺意が倦怠な感覚に浸食されていく。

 

 気を抜けば、これに動きを止められるのか。

 ……くそっ。八方とはいかないが、四方くらいは塞がれた気分だ。


 あはははは――――とまた“戌海琴音”が虚空に向かって狂笑を放つ。

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